どうせなら
次の日の朝、綾乃は携帯の着信音で目が覚めた。昨日はお風呂の後泣き疲れて眠ってしまったのだ。
いつもどおりの寝起きの悪さはメール欄の名前を見て跡形もなく消えていった。奏矢からだった。
「昨日は電話に出られなくて申し訳ありません。携帯を置き忘れて周防さんと話をしておりました。お昼にはそちらに戻ります」
そう書かれてあった。周防さんに呼ばれた事は本当なのだろうか?怒っている訳ではないのだろうか?いろいろ考えては見たものの答えなどでるはずもない。奏矢を待つ事に決めた。
時間通りに奏矢は戻ってきた。
「突然出掛けてすみません」
そういって普段通りに会話を始めた奏矢はいつもと同じに見えた。奏矢は昼食の準備のため冷蔵庫を開けると、用意したプリンが手つかずなのに気づきこう言った。
「お腹いっぱいだったようですね」
その言葉を聞くと綾乃は決心して昨日の事を語りだした。
一昨日サークルの帰りに映画に誘われた事。1人で食事をするのを君島が嫌がっていたので一緒に食事をした事。うっかり連絡するのを忘れてしまった事。君島に告白されたが断った事。
気になるヒトがいると言った事を除いて全て話した。
奏矢は、そうですかと言って昼食の準備に戻った。他には何も言わなかった。もちろん綾乃が望む言葉も。
でもそれでも良かった。いつも通りなだけだ。昼食を食べながら綾乃は思った。周防さんの用事ってなんだったのだろう。それは気になっていたので聞いてみた。
「調査とカウンセリングのような物でしょうか」
そう言って奏矢は食事に戻る。調査?カウンセリング?さらに綾乃は尋ねた。
4ヶ月前階段から奏矢が転落した事故当時、奏矢がコネクト社に行っていた事は綾乃も知っていた。でもそれは一ヶ月くらいの間だけだと思っていた。奏矢はその後もいつもとかわらずいたからだ。
でも実際には月に2回くらいの割合でコネクト社に通っていたのだという。全部簡単な検査だったと付け加えられた。
それに気がつかなかった自分も間抜けではあるがまあよしとしよう。でも昨日はあんな遅くになぜ?と綾乃は尋ねた。
奏矢は笑ってこう言った。
「周防さんが有給を取ったり出張があったりしたせいで今月は時間が取れなかったのですよ。それで昨日呼び出されたのです」
いい迷惑ですよね。そういって奏矢ははにかんだ。なあんだといい綾乃も食事に戻った。
どうせなら別の日にすればいいのに。綾乃がそういうと全くですと奏矢が合わせた。でもまた忙しくなるみたいで大変そうですよ。そう言って奏矢は箸を置いた。
「どこか問題あったりしたの?」
不安になり尋ねる。
「いえ全く。何を調べてるんですかねぇ?」
いつもと変わらない。きっと嘘じゃない。安心して違う会話をした。
その日の夜、綾乃はAIデータのセーブを忘れてしまった。それとも意図的に忘れたのだろうか。奏矢がこの2日間の出来事の記憶をいつ忘れるのかはわからない。遠く先かもしれない。それでももし……
奏矢怒ってなくて良かったねっ♪
あと3~4話ですかね。頑張ります。




