表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

土曜日

 「お待たせしました」


 待ち合わせ時間よりも早く着いた綾乃が言った。


 「まだ16時になってないよ」


 郁杜はそういって時計を綾乃に見せる。そう、綾乃は時間にはルーズじゃない。今日も15:50には駅に着いているのだ。一体いつからここにいるのだろう。隣の紳士を見ながら考える。


 待ち合わせの駅は普段綾乃が使わない駅だった。郁杜に誘導されつつ映画館へと足を運んだ。



 土曜日という事もあり人はとても多く見受けられた。知らない街なのもあり、迷子にならないようについていく。


 映画はいわゆるちょっと切ないハッピーエンドのラブストーリーで、終わった後も鼻をスンと鳴らす音が聞こえていた。綾乃もそのうちの1人だった。


 時計は19時を回っていて帰ろうかとも思っていたのだが、家に帰って1人でコンビニのお弁当を食べるのは……と郁杜に言われ食事をする事となった。


 着いたのは綾乃が普段あんまり縁のないとってもオシャレな和食レストランで、郁杜のセンスの良さも伺えた。よくこういうお店に来るんですか?と尋ねると友達に教えてもらったのだという。その真偽は定かではない。


 食事がくるまで映画の話をした。まさかあそこでああくるとはねぇ。郁杜も楽しめたのだろう、満足そうだった。


 メニューは郁杜にまかせてあった。海鮮類が好きだというと、郁杜は旬の魚やら海老やらと適当に数品頼んでくれたいた。友達に聞いたなどというさっきの言葉はきっと嘘だろう。どちらかと言えば教えている方だなと綾乃は思った。


 出てきた料理はどれも美味しかった。さすがモテモテ好青年が自信を持って連れてきただけの事はある。


 食事も終わり一段落してからお店を後にした。半分出しますと言ったのだが自分が無理やり誘ったんだといって郁杜は聞かなかった。ではご馳走になりますと言って駅へ向かった。駅につくと郁杜は真剣な顔で質問をしてきた。


 「那由多は付き合ってる人いるの?」


 いないですよと答える。しかも今まで付き合ったのなんて高校生の時に一瞬付き合ってすぐ別れてしまった1人だけです、などと説明もした。私モテナイですから、そういって苦笑いをする。


 「そんな事ないよ」


 郁杜は真剣な顔で続ける。


 「僕は、那由多の事が好きだよ」


 ストレートに言われた。突然の告白に頭の回転が追いつかない。


 またそんな事言って~、などと茶化す雰囲気では無かった。返答に困っている綾乃にさらに質問が襲いかかる。


 「好きな人でもいるの?」


 そう言われた瞬間自分の鼓動が早くなったのを綾乃は認識した。


 好きな人。


 果たして好きな人がいるのだろうか。その単語で頭の中を張り巡らせる。


 1人の姿が脳内に映し出された。好きなのか。そう聞かれるとまた返答に困った。自分でもよくわからない。


 しばらく考えこんだ綾乃は、真っ直ぐに郁杜を見つめ返して静かに口を開いた。




 「気になっている人造人間ヒトはいます。」

気のせいかも知れませんが、今までの中で一番<小説らしい文章>が書けた気がします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ