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動揺は治まる事を知らない

 「あれ?壊れたかな?」


 綾乃は首をかしげて再び試す。10月になって後期が初まり、虫の鳴き声が涼しさをかもしだしている秋の夜長に事件は起こった。


 何度やっても、綾乃の足元には47という数字が浮かび上がってくる。


 

 …


 ……


 ………


 


 タ、タイヘンダァァァァ!!?!!!!!!!!?


 「嫌ああああああああああああああああ」


 思わず叫んでしまった後、部屋の戸越しに奏矢の声がした。


 「どうかされましたか?」


 心配そうに声をかけられたが、お風呂の間は絶対にこっちに来るなと教育しているおかげで戸を開けられる事は無かった。


 「な、なんでもないから気にしないでっ」


 明らかに声が上ずっている。マズイ、マズイぞ。大ピンチだ。


 「エマージェンシー、緊急事態発生」


 頭の中で赤いランプがクルクル回りながらサイレンがけたたましく鳴り響く。


 動揺は治まる事を知らない。どうしてこうなった……


 落ち着け、落ち着くんだ綾乃! 自分と向き合い原因究明に乗り出す。


 

 夏休みに入って以降サークルが無かったせいで、これといった運動をしていなかった。


 それに加え誕生日を筆頭に最近よく食べている気がする。サンマに茸類、茄子に葡萄や梨といったフルーツ類、さらに買い物に行くと色とりどりのスイーツが否応無く綾乃の心に揺さぶりをかけてきていた。


 「ねぇ綾乃、僕を食べてよぉ」


 囁きかけてくるみんなの声を無視する事など綾乃には到底無理だった。


 


 3kgも増えていた原因はこれか……


 綾乃は普段より30分長く湯船に浸かって汗が出る事を祈り続けた。




 「今日はゆっくりとされていましたね」


 奏矢はそういってデザートの準備をしようと立ち上がる。


 「うん、ほら最近寒くなってきたからね」


 らしい言い訳をした後、今日はデザートいいやと付け加えた。


 そうですか……と言って奏矢は部屋に戻った。

 


 

 暇よねぇと言いつつ、腹筋するから足を押さえるように注文した。はい、とだけ言って奏矢は綾乃の両足を押さえる。


 いーち、にーい、と綾乃が自分で数を数えながら腹筋運動をするそばで、奏矢がポツリと漏らした。


 「いつもよりも長めの入浴……」


 じゅーう、じゅーいち。


 「デザートの拒否……」


 じゅうーはち、じゅうーきゅう。


 「腹筋運動……」


 にーじゅさん、にーじゅし。



 30回の腹筋を終えて1休みした時、聞きたくない声が聞こえた。


 「綾乃さん、少しふっくらされましたか?」


 


 ぎゃあああああああああっ!!!!!!


 やっぱり?ねぇやっぱり?どの辺?顔?お腹?全部?ねぇ、ねぇ?


 畳み掛けるように質問する綾乃の、長湯と腹筋で赤く染まっていた頬が青みを帯びてきた。




 そんな綾乃に向かって奏矢は優しく告げる。


 「今くらいでも全然いいと思いますよ」


 そんな慰めはいらないのだよ。


 「それに……」


 「少し胸も大きくなられたのでは」


 ハッとして自分の胸に両手を当てて見た。余りよくわからなかったが少し大きくなったのかもしれない。


 一瞬喜びに包まれたものの、雑念を取り払う。これじゃダメだ。頑張れ私、負けるな私。



 「じゃあ次、背筋よろしく」


 そういって綾乃はうつ伏せになった。


大概の女性は気にしすぎですよねぇ。そんなお話でした。

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