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突撃インタビュー『華月の部屋』

 家に着いた私は、華月の部屋へと一直線に向かった。二階にある華月の部屋のドアを開けると、

 

 「バカァァァア!!――」

 

 私を待っていたのは『バカ』って言葉と、私の左頬に極った右ストレート。

 

 「――ブヘラァッ!」

 

 殴られた私は、一回転半して床へダイヴ。そのまま、床と抱擁を交わす。

 あたい。こんなマニアックな性癖、持っていない筈なのに‥‥何、この気持ち。

 そのまま床にへばり付いていては、何かに目覚めると思った私は、急いで立ち上がる。

 

 それにしても、華月が人を殴る技術を持っていた事には驚かされた。それに、この威力かなりのものだ‥‥グラつく右の奥歯が、ちょっと心配なので、明日は歯医者に行こう。うん、そうしよう!

 頬の上から、グラつく奥歯を擦っていた私は、勝手に一人で決心する。

 

 「――ちょっと、何日も連絡もしないで心配したじゃない!」

 「あぁ、それはごめんなさい?」

 

 面と向かって謝ろうと私が振り向いたら、見た事の無い女が居た。誰だコイツ?

 華月の部屋に居る以上は、何かの知り合い何だろうけど‥‥思い出せない。本当に誰だろ?

 まぁ〜、とりあえず解った事だけでいうと、華月と同じぐらいの身長――私より頭ひとつ背が低く、鋭い目付きをしている。目付きの悪さは、見るだけで子供を泣かす私と、いい勝負をしている。

 

 「――えっと、すみませんけど‥‥どなた?」

 

 思い出そうと頑張ってはみたけど、面倒くさくなり訊いた。

 この人、年下っぽいけど知って要る相手なら失礼な事なので、一応は下手に出ておいたけど‥‥左頬を殴られた返事は、ジャーマンスープレックスで返す。殴る時は、殴られる覚悟が必要だけど‥‥みんなが殴り返すとか思わないでね。

 

 「――あれ? 解らないかな‥‥何年もたってるし、仕方ないのかなぁ?」

 

 この人。なんだか勝手に一人で納得しちゃったけど、私が解らないと意味が無いんだよね‥‥。

 てか、私の事を無視ですか? 人の顔を殴っておいて、一人で納得しちゃうんですか。コンチキショー!

 

 「んでッ! 貴女は結局、どこのどなたですか?」

 「――ん。なにか言った?」

 

 彼女は、なかなかナイスな返事を私に返してくれた。

 そうくるなら私は、左頬に貰った一発の返事、今すぐに返してやる!!

 

 ――右足を半歩後ろに下げた私は、上半身を右前方斜め下に、円を描くように下ろしていく。

 同時に、上半身と直線で動くイメージを右足に持ち。左足を軸に、右足の踵を左前方斜め上に向うように体全体を、右前方斜め下へと回す。

 後は、相手の頸動脈に当てるように踵を放つ――。(危険です。マネ、しないでね)

 

 「――ドォラッ!」

 

 私の放った回し蹴りは、見事に極った。声を上げる事もなく、泡を吹いて面白い形――【出】みたいな感じになって倒れている。

 ‥‥こんな倒れかたする奴、他にも居たような?

 『そんなの思い出す事が必要か』と訊かれたら、『微妙です』と答えそうな事を頑張って思い出そうとしていたら、

 

 「――帰ってたんだ」

 

 とても聞きたかった華月の優しい声が、後ろから聞こえてきた‥‥‥‥けど。華月の優しい声が、とても冷たく感じる。

 

 「ねえ。舞がやったの?」

 

 だんだんと近付いてくる華月の声。その声に恐れる私の背から、だらだらと流れる冷や汗。

 何時もなら直ぐに振り向き、私からも華月に近付いて行くけど、今回は逃げたい。

 

 ――長い付き合いをしていると、声だけで解る事がある。今回がそう‥‥かなり怒ってる。

 そして、華月に何度も怒られている私だからこそ‥‥今の私、すげぇ暗い顔してるんだろな。

 華月が怒った時は、精神的に追い詰めてくる。お陰で私の人生には、華月を怒らせた分だけトラウマが存在します――。

 

 もうすぐ怒られると思うと、憂鬱となる私には、眩しくても西日を見ていたい気分だった。

 だが、部屋の窓から見えてくる西日が、だんだんと光明のように見えてきた私は、窓から跳んで逃げらるかもと思案する‥‥下手したら骨折するかな?

 

 このまま華月に怒られてトラウマを増やすか、部屋の窓から跳んぶのを失敗して骨折するかの二択。

 さぁ、君ならどっち?

 

 「ねえ、教えてよ。舞がやったの?」

 

 なんて事を考えていたら、右腕を掴まれちった‥‥逃げときゃよかったなぁ。

 もう逃げられないと観念した私は、華月の方へと振り向く。

 

 「お願いだから、避雷針に結ぶのは止めてね――」

 

 華月にされたお仕置きの一つで、雨の日に一日中、中学校の避雷針に結び付けられた事がある。それ以来、雷が鳴ると、自分が生きているかを確認してしまう。

 本当に怖かったなぁ、避雷針に私を結んでいる時の、華月の冷たい笑顔。

 

 「――また避雷針に結ばれたりしたら私‥‥狂っちゃうから」

 「そんなの関係ないよ。あの服、私のお気に入りのパーカーなのに、舞が朧兄さんに貸したんでしょ?」

 「え? 朧の奴、帰ってるの?」

 「‥‥?」

 

 首を傾げる私達。

 あれ? 会話が噛み合ってないぞ。

 それに、なんでおぼろだなんて、懐かしい名前を華月は言ったんだろ? 朧なら、大学に入学してからは、学生寮で生活しているのに‥‥なんで?

 

 朧の事を考えている私は、【出】の形で倒れるもう一人の人物を思い出した。ってか、朧の奴だ‥‥。

 だんだんと女性が着ている服が気になり目を向けると、華月のお気に入りのパーカーを着ている‥‥。

 

 ‥‥‥‥。

 

 「朧って、男だよね?」

 「うん。そこで倒れているのは、舞も知ってる朧兄さん――」

 

 解ってはいるけど、こんな感じの不毛な会話を、朧が起きるまで続けた‥‥だって、認めたくないもん!



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