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機密事項を話すんじゃない

作者: 井上さん
掲載日:2026/05/15

名前を借りました

「お前とは婚約破棄する!」


 ある夜会で、婚約者イオが言った。


「理由をお聞きしても?」


 私、エウロパは、一応理由を聞いてみた。


「お前とは、我が伯爵家とお前の男爵家との取引があったから婚約した」


「そうですね」


「だが!ユピテル公爵家と取引をする事になった!ショボいお前の家とは大違いだ!もうお前の家と取引しなくても問題ない!お前は用済みだ!」


 イオはドヤ顔した。

そんな事言っちゃって良いのかなぁ…


「そうですか」


 私は呆れた顔をした。


「ははは…!残念だったな」


 全く残念じゃないけど。


「婚約破棄は承りました」


「強がりやがって」


 イオは、まだ笑っている。


「ところで、ユピテル家との取引は中止になりました」


 残念なお知らせです。


「は!?」


 イオが目を丸くした。


「情報公開前に発表するなど非常識だ。契約違反だ。契約は取り消しだ」


 ユピテル公爵家の嫡男カリスト様が割り込んできた。


「え?!」


 イオは、突然現れたカリスト様を見て驚いていた。


「契約書に書いてあっただろう。情報公開前に、部外者に知られたら、契約は取り消すと」


 カリスト様は冷静に言った。


「そんな…!?」


 契約時に話したし、契約書にも書いてあるのに。

一緒に説明を聞いたよね?


「当たり前だ。情報は武器だ。取引前に情報が漏れて台無しにされたら困るからな」


「待ってください!」


 イオは慌てた。


「情報漏洩は罪だ。しかも、こんな大勢の前で」


 カリスト様は冷酷に言った。


「知らなかったんです!」


 そんな言い訳が通用するか。 


「契約時に説明した。契約書にも書いてある。知らなかったでは済まない」


「そんなつもりは無かったんです!」


「そんなつもり無かったら、罪にならないと思うなよ。取引中止だ」


「待ってください!」


「お前とは2度と取引はせん!」


「待ってください!」


「次に声を掛けたら無礼討ちするぞ」


「ひぃ!」


 カリスト様にキッパリ言われて、イオは腰を抜かした。



しばらくして。

イオは立ち上がり、何事もなかったかのように私に話し掛けてきた。


「な…なぁ…やっぱり婚約破棄はやめよう…」


「どうしてです?」


 私は首を傾げた。


「お前が大事だと分かったんだ」


「まさか…ユピテル家との取引が無くなったから、ご自分が困るからでしょ?」


「うっ…」


 図星だ。


「残念でしたね。我が家はユピテル家の縁戚。ユピテル家が取引しないなら、我が家も取引しません」


 私は冷たい目で言った。


「何だと!?」


「我が家と取引があるから信用されて、ユピテル家との取引ができたんですよ。まさか、実力で取引できたとでも思ってたんですか?」


 思ってたんだろうなぁ…周り見えてないし。


「そんな…まさか…」


「没落まっしぐらの貴方の家と、取引したい家はありませんよ。今まで声が掛からなかったでしょう」


 だからイオの父が、私にイオと婚約してくれと、土下座でお願いしてきた。

根負けした父が了承してしまったのだ。

嫌だったのに。


「それは…」


 没落まっしぐらで、誰も相手をしてくれていなかった事を覚えて無いのかな?


「私と婚約したから、お情けで取引してもらってたんですよ」


「え?」


 そんな事も分からなかったんですね。


「それを、ご自分の実力だと勘違いするなんて」


「バカにするな!」


「では、婚約破棄して確かめてみたらいかがですか?ご自分の実力を」


 ま、実力なんて無いけれど、自信家だからね。

あと、早く婚約破棄したい。


「後悔するなよ!お前がいなくてもやれる!」


「どうぞどうぞ」


「やっぱり婚約破棄だ!」


 やった!もうバカの尻拭いしなくて済む!




 その後、案の定、誰も取引してくれなくて、私への慰謝料と、公爵家への損害賠償金で借金塗れになり、イオの家は没落した。


後悔したのはイオだった。




 私は、カリスト様から仕事を認められ、婚約を申し込まれた。


男爵家の私とは身分が釣り合わなかったから、縁戚の伯爵家に養子に入り、しばらくしてから、縁戚の侯爵家の養子に入り…して、カリスト様と婚約した。


今では、楽しく仕事をしつつ、カリスト様と仲良く過ごしているのだった。


読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
身分違いの貴族の結婚でキチンと養子縁組で爵位のバランスを取る表現をしているのは初めてみた。日本でも、江戸時代とかは結構行なわれてたんだけど。
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