機密事項を話すんじゃない
名前を借りました
「お前とは婚約破棄する!」
ある夜会で、婚約者イオが言った。
「理由をお聞きしても?」
私、エウロパは、一応理由を聞いてみた。
「お前とは、我が伯爵家とお前の男爵家との取引があったから婚約した」
「そうですね」
「だが!ユピテル公爵家と取引をする事になった!ショボいお前の家とは大違いだ!もうお前の家と取引しなくても問題ない!お前は用済みだ!」
イオはドヤ顔した。
そんな事言っちゃって良いのかなぁ…
「そうですか」
私は呆れた顔をした。
「ははは…!残念だったな」
全く残念じゃないけど。
「婚約破棄は承りました」
「強がりやがって」
イオは、まだ笑っている。
「ところで、ユピテル家との取引は中止になりました」
残念なお知らせです。
「は!?」
イオが目を丸くした。
「情報公開前に発表するなど非常識だ。契約違反だ。契約は取り消しだ」
ユピテル公爵家の嫡男カリスト様が割り込んできた。
「え?!」
イオは、突然現れたカリスト様を見て驚いていた。
「契約書に書いてあっただろう。情報公開前に、部外者に知られたら、契約は取り消すと」
カリスト様は冷静に言った。
「そんな…!?」
契約時に話したし、契約書にも書いてあるのに。
一緒に説明を聞いたよね?
「当たり前だ。情報は武器だ。取引前に情報が漏れて台無しにされたら困るからな」
「待ってください!」
イオは慌てた。
「情報漏洩は罪だ。しかも、こんな大勢の前で」
カリスト様は冷酷に言った。
「知らなかったんです!」
そんな言い訳が通用するか。
「契約時に説明した。契約書にも書いてある。知らなかったでは済まない」
「そんなつもりは無かったんです!」
「そんなつもり無かったら、罪にならないと思うなよ。取引中止だ」
「待ってください!」
「お前とは2度と取引はせん!」
「待ってください!」
「次に声を掛けたら無礼討ちするぞ」
「ひぃ!」
カリスト様にキッパリ言われて、イオは腰を抜かした。
しばらくして。
イオは立ち上がり、何事もなかったかのように私に話し掛けてきた。
「な…なぁ…やっぱり婚約破棄はやめよう…」
「どうしてです?」
私は首を傾げた。
「お前が大事だと分かったんだ」
「まさか…ユピテル家との取引が無くなったから、ご自分が困るからでしょ?」
「うっ…」
図星だ。
「残念でしたね。我が家はユピテル家の縁戚。ユピテル家が取引しないなら、我が家も取引しません」
私は冷たい目で言った。
「何だと!?」
「我が家と取引があるから信用されて、ユピテル家との取引ができたんですよ。まさか、実力で取引できたとでも思ってたんですか?」
思ってたんだろうなぁ…周り見えてないし。
「そんな…まさか…」
「没落まっしぐらの貴方の家と、取引したい家はありませんよ。今まで声が掛からなかったでしょう」
だからイオの父が、私にイオと婚約してくれと、土下座でお願いしてきた。
根負けした父が了承してしまったのだ。
嫌だったのに。
「それは…」
没落まっしぐらで、誰も相手をしてくれていなかった事を覚えて無いのかな?
「私と婚約したから、お情けで取引してもらってたんですよ」
「え?」
そんな事も分からなかったんですね。
「それを、ご自分の実力だと勘違いするなんて」
「バカにするな!」
「では、婚約破棄して確かめてみたらいかがですか?ご自分の実力を」
ま、実力なんて無いけれど、自信家だからね。
あと、早く婚約破棄したい。
「後悔するなよ!お前がいなくてもやれる!」
「どうぞどうぞ」
「やっぱり婚約破棄だ!」
やった!もうバカの尻拭いしなくて済む!
その後、案の定、誰も取引してくれなくて、私への慰謝料と、公爵家への損害賠償金で借金塗れになり、イオの家は没落した。
後悔したのはイオだった。
私は、カリスト様から仕事を認められ、婚約を申し込まれた。
男爵家の私とは身分が釣り合わなかったから、縁戚の伯爵家に養子に入り、しばらくしてから、縁戚の侯爵家の養子に入り…して、カリスト様と婚約した。
今では、楽しく仕事をしつつ、カリスト様と仲良く過ごしているのだった。
読んでいただきありがとうございます




