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88.【大掃除】



企画書から発声練習、そして現在大掃除と当初の目的からどんどんとズレているが、ここさえ片付けることが出来たら全て解決だ。



三木「最初に外に全部出してから掃除した方が早い」



三木先輩に言われた通りにまず全員で一旦中の物を全部外に運び出すと、今度はそれを判別して貰う為に片っ端から細かく写真を撮って纏めて先生に見せることになった。


確かに1個ずつ先生に確認を取っていたら日が暮れてしまうと、柊がそれぞれの役割をジャンケンで決めようと言い出したのでせーので手を出した。



梅生「……」


蘭世「いやーありがとな、梅ちゃん」



ジト目の一条先輩の背中を梓蘭世がポンポン叩く。


ジャンケンの結果、全負けした一条先輩が皆で手分けして撮った写真のデータを走って職員室まで見せに行くことになった。


判別に時間がかかると思いきや、一条先輩が言われたのは資料と教材だけ残して判断に悩むものはとりあえず本棚に入れておいて欲しいとのことだった。



「元々防災の関係で危ないのもあってね、ここを夏休みに片付けるつもりだったから非常に助かる」



戻ってきた一条先輩と一緒に教頭も現場を覗きに来たが、その他大型のものは業者が処分するから自分達で使うもの以外は体育館横の廊下に並べておけばいい、と場所を指示してすぐに帰っていった。



三木「よし、やるぞ」



時間もないと三木先輩が指定されたものを手早く空いた箱にぶち込む間に、残りのメンバーで明らかに使わない大物を指定された場所まで移動させる。


一緒に壊れたソファを運ぶ梓蘭世の細腕が折れないか心配で、俺は必要以上に力を出してしまった。


あらかた粗大ゴミを運び出した後は空になった部屋の大掃除だ。


三木先輩と梓蘭世は資料などを本棚に戻す係、俺と柊は床を掃き、一条先輩と蓮池が拭き掃除と最初のジャンケンで担当が決まっていたのですぐに全員が取り掛かった。



梅生「蓮池拭き掃除上手いね」


楓「拭き掃除に上手いも何もないですよ」



一条先輩の褒め言葉に蓮池はあっさり返すが見ていて本当に手際がいい。



夕太「でんちゃんは家でよく掃除させられてるから」



内緒話のように柊が教えてくれるがあのデカい日本家屋をルンバが何台も活躍しているとは思えなくて、多分きちんと雑巾で磨いているんだろう。


柊はさっきから楽しそうにくるくると回転しながらハタキで遊び半分に掃除しているが、どう見ても埃を払うと言うより巻き散らしているだけだった。



雅臣「柊、そっちに払うと拭いてる2人にかかるだろ?あっちを先にやってくれ」


夕太「あ、ほんとだ」



言えば素直に言うことを聞いて椅子に登って棚の上をハタキはじめたが、



蘭世「おい夕太てめぇ!!!」



埃の山が真下にいた梓蘭世の頭に落ちて盛大にキレられていた。


どうやら梓蘭世の1年の呼び方がとっと、でん、夕太に確定したみたいで、前より気さくな感じがして少し嬉しい。



梅生「あ、藤城、ここも掃いて欲しい」


雅臣「分かりました」



何日もかかると思っていたのに6人で手分けすれば意外と片付くもので、窓も綺麗に拭いたからかとても気持ちがいい。


北向きでも微かな光が差し込み先ほどの黴臭さもどこかへ行ってしまった。


エアコンも掃除すると変な音はするが一応動いて無事動作も確認完了、ある程度綺麗になってようやく出した荷物をしまう作業に移れる。


広々とした部屋を見て、ここを部室にできるなんて中々良くないか?と悦に浸っていると、うわ!と蓮池の声が響いた。



楓「きったな……ちょっと梓先輩ここの分厚い本の山早く棚に入れちゃってくださいよ、埃被ってるし」


蘭世「こっちやってんのが見えねーのかよ!三木さんやれよ!」



さすが梓蘭世、三木さんを顎で使うのか。


仕方なさそうに三木先輩は本を手に取り付いた埃をティッシュで払う。



三木「……卒業アルバム?」



埃の下から現れた表紙を見てそう呟く先輩に視線が集まった。



梅生「えっ、それですか?」


蘭世「まじ?いつの?見してよ」



三木先輩が梓蘭世に何冊かを渡して2年2人が一緒に開こうとした瞬間、



夕太「小夜先生いるかな!?」



柊が2人の間に下からぬっと割り込んだ。


そういやうちの担任はこの山王学園の卒業生で、授業中生徒の集中力が切れ始めたタイミングで昔からいる教師陣のネタ話をしてくれる。


俺も気になるが、担任が何年の卒業生なのかが分からないと見つけようがなくないか?



雅臣「担任って何歳なんだろうな」


楓「若いだろあれ、でもどの教師もうちの担任の話になると苦虫潰したみたいな顔するよね」



蓮池は左口角を上げてニヤニヤと笑う。


どの教師も口を揃えて小夜は……と目を瞑り非常に渋い顔をするが、あの人は高校時代何かしでかしたのだろうか。


それこそ最初はホストのような見た目と軽い口調で教師らしくないと思っていたが、俺にアドバイスをくれた時は真面目な顔でとても先生らしかったのに。


学生時代は一体どんなだったのか気になって、休憩がてら探してみることになった。


卒アルが10冊くらいかあったので1人1冊ずつ分けてページを捲ると、



夕太「ラインが山吹じゃなくてよかったね」


楓「朱色も似たようなもんだよ」



それを見ながら蓮池と柊の2人が制服のラインについて何色が1番マシかを話し出す。


俺が開いたアルバムの制服のラインは黒色、正直黒が無難で1番いいよな。


山王の制服のラインは中等部から学年毎に分かれていて、若草、群青、俺らの朱色に黒、山吹、臙脂の6色だ。


高3が卒業するとそのカラーか次の新中1に移っていく仕組みだが、山吹と朱色が生徒の間で1番ダサいと言われている。


これに当たった俺達高1は不名誉極まりなかった。



蘭世「まぁ黒が無難じゃね?全部黒か全部群青かにしちまえばいいのにな」


梅生「まぁでも黒ラインの代は…」



ページを捲りながら梓蘭世と話す一条先輩の口ぶりが気になる。



雅臣「黒のラインだと何かあるんですか?」


三木「歴代必ず問題が起きる」



三木先輩曰くラインの色で学年毎に特色が分かれるようで、それがまた結構当たるらしい。


黒のラインの学年は不思議と問題児が集まるそうなのだ。


もしかして俺が見ているこのアルバムの代にもそんな奴がいたのかと眺めると、



雅臣「あ、」



目に止まった写真に思わず声が出てしまった。



〝小夜幸成〟と名前が記されているが、これは…。



夕太「___えぇ!?ヤンキーじゃん!」



俺の声に柊が傍まで寄ってきて、見た瞬間に驚きの声を上げた。


柊は俺からアルバムを取り上げ皆に見せて回るが、その言葉の通り若かりし頃の担任は見事な金髪だった。



蘭世「うわ、ガチじゃん!今とあんま変わんねぇけど…ド金髪」


梅生「小夜先生と…この人の2人だけだね。染めてるの」



何だ何だと皆で1冊を床に置いて囲んで見るが、他のどの学生を見ても黒髪しかいない。


今の成績上位者に許される校則はこの時代には存在しなかったのか?


担任と、担任の上に載っている生徒の2人の金髪が異常な程浮いて見え、明らかにこの2人は問題児だったことが一目で分かる。



楓「___まぁこの感じなら納得いくね」


雅臣「何がだ?」


楓「たこ焼きもピザもやけに積極的な感じとか、ギリギリ切り抜ける方法を知ってる感じとか」



やれやれと肩を竦める蓮池に、全員があー…と呟き思い当たる節がありすぎて笑ってしまった。



三木「先生方が顧問を見ると苦い顔をするワケだ。さて、掃除の続きだ」



三木先輩はアルバムを回収して本棚に戻す。


束の間の休憩が思いの外盛り上がって、時間も余りないと俺らは再び荷物を運び込んだ。




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