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87.【部室確保!?】




楓「物置棟?ってのはどこにあるんですか」



山王はデカい敷地に校舎を3つ並べて建てていて、それぞれ中等部、高等部の棟が完全に別れている。


その真ん中に職員室や資料室、生徒会室など別棟を挟んで全て3階の連絡通路で繋がっているが、特に物置棟と呼ばれる校舎なんかないぞと首を傾げる。



梅生「第1体育館の裏側にあるんだ。物置棟って言ってるけどただの古い2階建ての資料室だよ」


蘭世「まぁ行けばわかる、中途半端なとこにあんの」



説明してくれる先輩達に連なって俺らは全員で1階まで降りてから第1体育館の方へと向かう。


第1体育館は主に式典で利用することが多く、隣を歩く蓮池を見ながら入学式の酷い出会いを思い出すがもうこいつに対してそこまで嫌な気持ちもなかった。


……それにしても、裏手にそんな場所あったか?


どれだけ思い出しても記憶にない。


三木先輩を筆頭に高校の校舎を出て駐輪場を越して第1体育館を通過するが、裏側まで来ると全体が蔦で覆われた古い建物が現れた。



三木「……ここだ」



そこはちょうど体育館の影に隠れて薄暗く、北側で日が当たらないせいか夏だというのに少し涼しいくらいだった。


第5資料室、関係者以外立ち入り禁止と雑に書かれた木札は傾いていて、ドアについている小窓から中を見ようとしても埃で曇っていて見えない。


……こ、これはまた。


棟でも何でもないじゃないか!!


多分語呂がいいからその呼び名で定着したんだろう。


ここだけ鉄骨造だと思うが資料室ではなく学園の物置として使用してるようで、蔦の絡まる緑の外観から少しだけ垣間見える壁はかなり古い。


柊はこの寂れた雰囲気を見てから部室にしたいと言うべきだった。


外壁を覆う蔦がとにかく鬱陶しいし、この辺りだけあまり手入れされていないせいか虫も多そうで、よく見ればどの窓も真っ黒に汚れたままだ。


明らかに現在使用していないのに、梓蘭世が勝手にドアを開けようとしているが大丈夫なのか?


入口の鍵は元々かかっていないようで、ガタガタと強く引き戸を引っ張っても立て付けが悪くなってしまったのか全然開かない。


その様子を見兼ねた三木先輩が梓蘭世にどけと言うが早いかドアを蹴飛ばした。



楓 「やるじゃん」



蓮池は軽く口笛を吹くがやるも何も壊れたんじゃないかと俺だけが青ざめる。


三木先輩が横に強く扉を引くと蹴った時にちょうど上手く何かがハマったのか軋んだ音を鳴らしながらも何とか開けることに成功した。


いざ部屋の中へ入ると、



楓「……汚ったね」


雅臣「埃…とかよりも、だよな」



蓮池の言葉に頷き、部屋全体を眺めるがとにかく物が多くて1階から2階まで秩序なく乱立していた。


部屋に無造作に置かれた何個かの机は今俺達が教室で使ってるものと違う型で高さが低く、その上に教材や大量に積み重ねた資料に地図、本やアルバムまであって何故か欠けた石膏像まで置いてある。


2階にはどこから持ってきたのかスプリングのイカれた2人がけのソファがあってダニがいそうで恐ろしい。


それにどうしてこんな所に跳び箱の枠だけがあるんだ?


階段にも古い暗幕や垂れ幕、積み重ねた椅子、 何が入ってるか分からない箱や小物が置いてある。


壁に立てかけたホワイトボードのペンを置く所にも灰色の埃が山のように積もっていて俺はそっと目を逸らした。


肝心のピアノは最近運んだのか元が高価なこともあって埃が被らないようにきちんとカバーがしてある。


唯一の救いはよく見ればそこまで古くなさそうなエアコンくらいで、物で埋め尽くされていても空調さえ効けばここを部室に出来てちょうど良いはずだ。



ちょうど良いはずなんだが…………。



蘭世「まじでこれ部室にすんの?」


梅生「許可降りるのかな」



2年2人が顔を見合せて眉をしかめるのを見ながら、俺は部屋に漂う埃と黴臭さをどうにかしようと窓を開けるが劣化してるせいか全然開かない。


何とかこじ開けたそのタイミングで、体育館横からバタバタと走る足音が聞こえてきた。



夕太「お待たせしましたー!正気か?って聞かれたけど、良い……って……」



許可を取った柊がほくほく顔で部屋の中に入ろうとして足を止めた。


ようやく柊も生徒会に〝正気か〟と言われた意味が理解出来たのだろう。



夕太「但し中にある物を全部要るか要らないか先生に確認してから綺麗に片付けろって……」


三木「どうやら体のいい片付け要員にされたな」



ため息をつく三木先輩の言葉に室内がシラケた雰囲気に包まれた。


ここを掃除をするのはかなり大変だろうし正直めんどくさい。


しかも先生に逐一確認を取りながらとなると数日はかかるんじゃないか?



……でも、これだけ人目につかない場所なんて他にないよな。



どれだけ騒いでも良さそうなここさえ使えれば、歌の練習もひっそりとできて更には生徒会に毎回出向く手間も省けて便利と言えば便利だ。


皆が諦めのムードになる中で、俺はどうにかここを使う方向に持っていけないか頭を回転させる。


せっかくサークルに行くのが楽しみになってきたというのに大変だからといって部室に出来るチャンスを逃したくなかった。


となると、ここを使いたくなるような提案を皆にすれば掃除にやる気が出るんじゃないか?



雅臣「……あの」



俺以外の全員がしれっと帰る素振りを見せかけたので慌てて止めようと挙手をした。



雅臣「ここは普段先生どころか滅多に他の生徒も来ませんよね?」


三木「まぁ…実質ただの物置だしな。用もないのにわざわざ足を運んでまでは来ないだろうな」



同感、と2年も頷く。



雅臣「バレなかったら…何してもいいんですよね?」



またここで再びパーティーを開催できるかもしれないという俺の一言に全員が目を見開き、そうかと口角が上がった。


禁止された緩いパーティーを俺は今度こそ純粋に楽しみたかった。


その気持ちは皆同じだったのかもしれない。



雅臣「掃除しましょう!!」



柊が1番に目を輝かせて飛び上がって喜んだ。



夕太「掃除用具取ってくる!でんちゃん行くぞ!」


楓「……正気かよ」



走り出す柊に蓮池は渋々着いて行く。



蘭世「でん!!ついでにバケツ!!」



後ろから大きな声で持ってこいと言う梓蘭世だが、その呼び方が気になってつい見つめてしまう。


俺はとっと、蓮池はでん。


そうなると柊は何なんだろうかと考える間もなく柊の叫び声が遠くから聞こえた。



夕太「雅臣!ぼーっとしてんなよ!お前も早く来いよ!!」



発声練習から大幅にズレたが、ここを乗り越えれば自分達の荷物も置けるしパーティだってできる。



雅臣「あぁ!今行く!!」



夢が広がる俺は柊の後を着いて行った。




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