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蓮池楓という男3



昼飯を食って5.6限と授業を受けながら、今日は色々考えていて授業中1度も寝ていなかったことに気がついた。


朝から夕太くんが見舞いに行けとか意味分かんないこと言うからだ。


それにここで俺が見舞いなんか行ったら自分が悪いって認めたみたいじゃないか?


…ったく、時間は有限だというのに何で俺の大切な時間をあの陰キャの為に使わないといけないんだ。


そんなん昨日だけで十分だろと硬い椅子の背もたれに身を預けた。


……後1時間もすれば授業が終わる。


夕太くんがいないから今日はサークルも勿論行かないつもりだ。


机の下からスマホを覗き見れば、めげない夕太くんからチャットに〝見舞い〟の3文字が未だに連投されている。



____うるさいな。



この調子だと学校の終わるタイミングでもう1度夕太くんから電話が入る気がする。


どうしてこんなことになっちゃったんだろう。


自分の世界は夕太くんと華道だけだったのに、今日はあいつのことばかり何故考えてしまうのか。


事の発端は…とノートに人間らしき絵を描いて、夕太くん、俺、陰キャとそれぞれ名前を書いてみる。




〝俺(話す)夕太くん(話す)陰キャ〟




この図の通り、俺と陰キャはずっとそれぞれ勝手に夕太くんと会話してるだけだったよな?


俺らの間は会話ゼロでも今まで何の問題もなく上手く回っていたのに、あの野郎急にどうした?


ノートを閉じて、ボキボキと両手を合わせて指を鳴らした。



……大体だな。



お前がいくら夕太くんと友達になりたいからって俺を巻き込むなよ。


元々互いに嫌いだろうが。


俺と夕太くんがどこでもワンセットなの知ってて夕太くんと仲良くなりたいんだろ?


それなら俺に無視されても小言言われても我慢しろよ。


俺が嫌いでもボッチが耐えられないから寄ってきたんだろ?


嫌ならどこか別の所へ行けばいいのに、そうしないお前が悪い。


しかもどこにも行くとこがないからって〝弁当ご一緒させてください〟って情けなくお伺いしてお願いしたくせにさ。


昨日だってあいつがさっさと要件だけ伝えて、後は互いにいつも通り無視しときゃ起こらなかったことなんだよ。


最近色々擦り寄ってんなとは思ってたけど、夕太くんだけにしといてくれりゃこっちまで被害被ることなかったのに。



……アホだわぁ。



それにサークルだって嫌なら来なきゃいいだけの話なんだよ。


誰になんて言われようが名前を貸してるだけなのでって言い切ったらいいのに毎日被害者ヅラして来続けて。


例えサークルのメンバーが何か文句言ったところで、傍から見て誰がお前を悪いって言うんだよ。


やらなきゃいい、来なきゃいいことを自分の意思でわざわざやってんだろ?



…………アホだわぁ。



更に言わせてもらえば、コスプレも陰キャもボッチもコミュ障も全部当たってんだよな。


あいつが自分の代わりにSSCに入ってくれないかとクラスの奴に頼んでいたのを見たけど、全滅だったのを思い出した。


他人から自分が好かれてるかどうかなんて何となく分かんなかったのかね。


ようやく自覚したのか、密かに改善しようとしていたのが何よりの証拠だった。


アホすぎると日本史の教科書をパラパラと捲れば幕末志士の総髪の挿絵が載っていて、必然的に入学式の時のあいつのロン毛が連想され強く閉じる。



そもそも、最初から気に入らなかったんだよ。



腰までロン毛ってだけでもキモいのに上から下まで俺と夕太くんのことジロジロ見やがって、ただでさえ気分が良くなかったのに最悪だった。


そのロン毛も無造作に結んでいる割にはどこも汚くなく感じなくって、どこのトリートメント使ってんだとムカついた。


こんなの床屋じゃなくて絶対美容院でやってもらってるだろと、パッと見で多様性と夕太くんに言われても仕方がない見た目だった。


極めつけはあいつが肩に掛けていた黒の革の鞄。


ベネツィアレザーにカリグラフィーの書体が印象的な鞄はクソジジイが愛用しているブランドのものと同じで、一目で親のおさがりだと分かった。


きちんと手入れがされていてエイジングが絶妙なそれは元の値段が軽く50万は超える。


高校の入学式如きでそんなものをナチュラルに持ってくるあたりこいつが金に全く困ってない証拠だった。


成金感がどこにもない上にロン毛だなんて、胡散臭ぇの一言に尽きる。


通学鞄に毎日それを持ってきて、たまのリュックサックの日は元はブルーだった革がほぼブラックに見えるくらい丁寧に使い込んであるもの。


夕太くんと話すついでに覗き見たペンケースや財布も革で統一してあって全てが洗練されていた。


本人は全く無頓着そうなので親のセンスがよっぽどいいんだろうとしか思えなかった。


……俺の持ってるルイピトンのペンケースが成金丸出しみたいに感じるな。


机の上に置いてある自分のペンケースを手に持ちながらチラと横の席の奴を見ると、ムジで普通に売ってるヤツを使っていて安心感が半端ない。


持ち物だけ見るとかなり育ちは良さそうなのに、あの陰キャの失礼な目つきを見る度その礼儀はどこで習ったんだよと苛立った。


俺が見てんじゃねーよと言う度に慌てて目を逸らして見てないと反論し、不満げにこっちを睨みつける。


それは癖みたいなものかもしれないけど、失礼なことをしているという自覚がないことが本当に理解できなかった。


まぁ家庭事情を聞けばあれが出来上がるのも無理ないと思ったけど、気に入らないもんは気に入らない。


ふと黒板の横に掛けられた時計を見ると20分も経過していてため息をつく。



___大体、夕太くんもずるいよ。



あいつが一緒に飯食っていいか聞いてきた時、選択を俺に預けたのだって俺がどう答えるかわかってたんだろ?


俺があの陰キャに直接断れば、じゃあでんちゃんが1人で食べなよと夕太くんは2人で食べるつもりだったんだ。


結局3人で食べることになったけど、あの時の俺に選択肢はなかったよな。





……だって俺は夕太くんと一緒にいたいんだから。






読んでいただきありがとうございます。

ブクマや評価していだだけて本当に嬉しいです!

いただけると書き続ける励みになるので、ぜひよろしくお願いいたします♪♪


本日も小話!

楓くん視点で少し続きます♪♪

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