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82.【突然の来訪者】




雅臣「はい、明日は行きます。ありがとうございます」



そう担任に告げて、スマホの切ボタンを押してから一息ついた。


昨日と違って体がびっくりするくらい軽い。


久しぶりに何も考えず熟睡したからなのか、今朝測ったら熱は平熱に下がっていた。


名古屋に来てから自分が思うよりずっと気持ちが張り詰めていたらしい。


そしてトドメの昨日の騒ぎ。


余程疲れていたのかあれからずっと寝てい、起きた時には既に次の日の朝で、時計を見たらまさかの8時半だった。


遅刻で学校に行けなくもないが、今日こそ休んでも誰にも咎められないだろうと俺は生まれて初めて学校をサボってしまった。


きっと学校では昨日の騒ぎと俺の家の事情が噂になっていることだろう。



……まあ、それもいいか。



自分の鬱屈した思いがすっきりしたことの喜びが勝ちどれも大したことではなくなってしまった。


初めてのサボり、せっかくならと2度寝をしてみようにも全く眠くない。


簡単に部屋を片付けてから昨日制服が洗えることを初めて知ったので試しに表示通りに洗いにかけてみた。


特に問題もなく綺麗になり、シワ防止のため緩めの脱水にしたのも正解だった。


……教えて貰えて良かった。


クリーニングに出せる環境にあっても、知っててそれをするかしないのかでは大きく違うと思う。


これから毎日家で洗おうと決めて、伸ばして風呂場の乾燥にかけてから残りの洗濯物も纏めて回しておく。


一通り終えると特にやることもないのでテレビをつけてニュースを流してみるが特段面白味を感じない。



……今頃1限の途中だろうな。



ぼんやりと考えながらテレビを眺めるが、初めてのサボりは特に楽しいものではなく実に静かで恐ろしく暇だった。


こんなことなら学校に行けば良かったと思う自分に可笑しくなって笑ってしまう。


あんな騒ぎになってもまだ行きたいと思えるなんて、蓮池の言う通り俺は本当に図々しいのかもしれない。


でも言いたいことが言えなかった東京の暮らしより今の刺激的な日々の方が断然楽しいと思えるんだ。



_____そうだ。



気分転換にマシンでアイスラテを作って、それを飲みながら柊に勧めてもらったベーリング海のカニ漁の続きを見よう。


早速テレビと連携したMETUBEを選択して、履歴からディスカバリーチャンネルに飛ばすと画面に荒れ狂う大海原が現れた。


この番組は以前昼休みの時にそれはもう興奮した顔の柊がヤバいのを見つけたと話してくれたものだ。


そんなに面白いならと早速家に帰って試しに見たら、荒れ狂う海で男達がカニを取りまくり荒稼ぎする姿に目が離せなくなってしまった。


臨場感が凄すぎて一気にシーズン3まで見たことを明日柊に教えなければ。



……それから蓮池にも、面白いから見てみろよと勧めてみよう。



喧嘩みたいな騒動の後で蓮池と上手くやっていけるかどうかなんて正直分からないが、ぎこちなくてもいいから俺から話しかけてみよう。


弁当のおかずもいつもより多めに作って明日こそは蓮池にも分けてあげたい、そう決めてシーズン4を流しながらソファに身を沈めた。


1時間ほど船長と船員の慌ただしい様子を真剣に見るが、まだ昨日の疲れが残っていたのかだんだんと眠くなってきて、少しだけと目を閉じた。





_________


__________________




雅臣「ん…?」



うるさいくらいのスマホのバイブ音で目が覚めた。


少しだけのつもりがまた爆睡してしまいソファで寝落ちしたせいか体が軋む。


首を鳴らしてから画面を見ると何件もの不在着信が入っていてその名前に思わず目を見張る。




雅臣「は、!?」




___は、蓮池からの着信!?



間違い電話じゃないかと疑うが、画面の文字はあいつの名前しか示していない。


もしかして柊の体調不良が悪化したのか!?


こんなに何度も俺に着信があるなんて柊関連でしかないと焦った瞬間、また蓮池から電話がかかってきて大慌てで電話に出た。



雅臣「は、蓮池!?どうしたんだよ!!」



電話の相手はやっぱり蓮池で、用件は何なんだと動揺が隠せない。



楓『 ……部屋番』


雅臣「部屋番?」



何の話だと再度聞くと、蓮池は不機嫌な声でてめぇの部屋番を言えと急かした。



雅臣「な、何かあったのか!?もしかして柊に何かあったとか!?どうして俺の部屋番なんか___」


楓『 早く言え!!』


雅臣「1405!」



ぶち、と電話が切られて展開についていけないが、直ぐにインターホンが鳴ったのでまさか蓮池が来たのかとエントランスのロックを解除した。


あの蓮池があんなに急いで俺に電話してくるなんて、昨日の今日でさすがに誰かに何かあったとしか思えない。



「おい!!!!開けろ!!!!」



少ししてから怒号と雑にドアを何度もノックする音が聞こえてきて、小走りで玄関に向かいドアを開けると、



楓「……確認もしないで簡単に開けやがって。不用心だな、いつか刺されるぞ」


雅臣「……………は?」



ふてぶてしい態度で答える蓮池に、お前は一体何をしに来たのかとつい眉根を寄せた。


それにこいつはどうやって俺の家を知った?


昨日の今日で、何か言い足りないとか………。


ま、まさか昨日の続きをここでする気か!?


1人焦りながら蓮池を見つめれば、



楓「……夕太くんにお前が休みだって言ったら、ポカリだのアイスだの持ってけってうるさいから」



ぬっと差し出されるビニール袋の中に、明らかに病人向けのものばかりが沢山入っていて瞠目する。


どうやら蓮池は学校終わりに制服のまま買い物に行ってここまで来たようだ。


その姿をに先程までの焦りは吹き飛び、どうしても自分に都合の良い考えが浮かんでしまう。



もしかして、蓮池は俺の見舞いに来てくれたのか?



そんなに都合良く受け取っていいんだろうか?


でもそうとしか……。



楓「心配なんかしてないからな。夕太くんがあんまり行けってうるさいから来ただけ、じゃあな」



俺の表情から心を読み取ったのか、玄関先に袋を置いてバツが悪そうに踵を返す蓮池の肩を思わず掴んでしまった。



楓「……何だよ」



振り返る蓮池の顔にどうしようもない決まりの悪さが浮かんで見える。


これは本当にもしかして……。



雅臣「あ、上がってく…か?」



蓮池は俺の為にわざわざ見舞いに来てくれたんだと確信して声を掛けた。



読んでいただきありがとうございます。

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