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74.【究極の選択】



雅臣「大嫌い、か…」


そこまで言われるといっそ清々しいなとつい笑ってしまう。


こんなにも全部見抜かれていたなんて、元々蓮池の感がいいのかそれとも華道で色んな人と関わってきた経験がそうさせるのか。


どちらにせよこいつは俺の考えなさが気に入らなくて、初めて会った時から既に直感が働いていたんだろう。



『何見てんだよ、ブサイク』



……さすがにブサイクは悪口だが、あの言葉は俺が蓮池と柊を不躾にじろじろと見ていたからだと分かる。


入学式に遅刻しているのに呑気に木を蹴っ飛ばしていたら見られても仕方ないところはあるが、多分自分が思うより2人を見すぎなくらい見ていたんだろう。


そして俺がどこかで2人を馬鹿にしていたのも感じ取っていたんだ。


こいつらと出会うまで何も深く考えてこなかったのは事実だからそう言われても仕方ないよな。



雅臣「……俺もお前が大嫌いだ」


楓「で?」



蓮池はだから何なのと嘲笑い結論を促した。


ついに俺を嫌う理由が分かった今、こいつと関わるのはもうやめたいがそういう訳にはいかない。


俺が柊と友達になるためには蓮池ともある程度関わらざるを得ないと観念したんだ。


俺は緩く息を吐き、腹に力を込めた。



雅臣「……それでもお前を無視できない」


楓「勝手にしろよ。大体さ、お前が夕太くんと友達になりたいからって俺は関係ないじゃん?」


雅臣「そうだよ、その通りだよ。……でもお前柊の為に大嫌いな俺と飯食ってくれてるんだよな」



ずっと見ていたからこそ分かるが、いつだって蓮池は柊の我儘を許し柊の気持ちを最優先する。


俺が弁当の席に入れてくれと頼んだ時もこいつの性格なら絶対に嫌だと言えたはずなのに、そうせずに仕方なく相席を許してくれたのは全部柊のことを思ってだろう。


話の展開が下手なのは自分でもよく分かっているが、今ここで俺の気持ちを伝えないと二度蓮池に直接言うチャンスはない気がして全部言おうと心に決める。



雅臣「……俺は柊と仲良くなりたい」


楓「だから?」


雅臣「お前だって柊のために俺を完全に無視することなんてできてないじゃないか」



蓮池は真顔で俺を見つめ、いつの間にか野次は収まりうるさい雑音はなくなっていた。



雅臣「お前はいつだって柊優先で俺が傍にいるのを仕方なく許すくらい大事にしてる。俺達はどうしたって関わらざるを得ないんだ___」



瞬間、ガシャン!!という音が響いて自分に何かが当たった気がした。


気づけば俺のA定食は無惨にも散らばっていてトレイ毎ひっくり返っている。



楓「手が滑ったわ」



座っていたはずの蓮池が立ったままそう言うのを呆然と眺めた。



雅臣「な、なっ……何すんだよ!!」



床にはプラスチックの器が転がり、俺のポロシャツはデミグラスソースとジェラートが混じって大変なことになっている。


蓮池が俺に目掛けてトレーごとぶん投げたのだとようやく理解した。



雅臣「物に当たるなよ!」


楓「……友達でもないのに偉そうに」



そう答えた蓮池の目は完全に俺を拒絶していて息を飲むが、俺がまた何か余計なことを言ったんだと気がつく。


目の前で激昂する姿を見てふと買い出しの時を思い出した。


あの時も蓮池は不自然な怒り方をしていて、俺を嫌いな感情以外でこんなに怒るのは何か理由があるのかと見つめる。




___もしかして、柊か……?




荷物を纏めて帰ろうとする蓮池に柊が関係しているのかと疑い、背後から腕を掴んだ。



雅臣「待てよ、まだ話は終わっていない」


楓「はぁ?これ以上何話すんだよ」


雅臣「逃げるのかよ。これじゃあ何の解決にもならない」



俺の言葉に蓮池はくだらないと言わんばかりの顔で鼻で笑った。



楓「じゃあ何?俺とお前が夕太くんのために仲良しこよしするってこと?表面上でも?」



互いに見つめ合いながら、俺は静かに息を吸い込んで、



雅臣「……お前がいいなら」



と、3人のためにもそれでいいと承諾した。



楓「……さすが東京から16歳で一人暮らしさせるような家で育つと考えが違うね。親の顔が見てみてぇわ」



しかし蓮池は納得いかないのか、俺の手を払い除けると辛辣な言葉を投げそのまま行こうとする。


俺は慌てて蓮池の肩を掴んでもう1度引き止めた。



雅臣「今はそんな話じゃないだろ!」


楓「そんな話だよ。俺と友達みたいなフリしたいんだろ?」


雅臣「それは……そうだけど、」


楓「それならお前何で東京から名古屋まで来たの?俺と仲良しこよししたいなら教えてくれよ」



突然いやらしく笑う蓮池に、こいつが本当は俺と仲良くする気なんてさらさら無いことが分かる。



楓「教えてくれたら本当に仲良くなれるかもしれないよ?」



分かり合おうぜと途端に嘘くさいことを言い出した。



雅臣「それは……」


楓「遠慮すんなって。それにずるいよ、俺はお前ん家のこと何も知らないのにお前だけ俺の家族を知ってるなんて」



首を振っても、蓮池は早く言えとそれを許さない。


どっと心拍数が上がるのが分かって俯いた。



ここで言わないといけないのか……?


それに何でこんな事になっているんだ……!?



俺は蓮池のストレスを心配しただけだったはずなのに、あまりの怒涛の展開に聞かれたことを答えるだけで精一杯だ。


どうする……、どうしようか。


気を抜いたら即仕留められると俺はひたすらに困惑することしかできなかった。




読んでいただきありがとうございます。

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