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67.【生徒会登場!?】



桂樹「げ!!!!」


三木「…まずいな」


「なぁにがまずいのかしら?三木ちゃん」



多様性生徒会長は3年2人の肩をとっ捕まえて調理室の状況を確認するよう首を回して眺める。



「換気で誤魔化そうとしたんでしょうけど…廊下中がたこ焼きの匂いだってブラバンからリークされたわよ」



多様性生徒会長の口角は上がっているのに、その目は全く笑っていない。


扉の隙間から匂いが漏れていたのか…。


たこ焼き器を5台も使えばそれはそうだよな。


しかし、調理室の使用許可を貰ってもたこ焼きパーティーをするのはダメだったのか?


もしかして、さっき桂樹先輩が窓を開けるなと言った事と関係してるんだろうか?


どうも怒っているように思える生徒会2人の様子を静かに窺う。



「……今日の活動はなんだ?」


夕太「えーっと、」



眼帯カラーグラスの質問に柊が答えようとするが、すかさず梓蘭世が蹴りを入れた。


……余計なこと言うなって事か。


これはどうやらまずいかもしれないも黙ったままでいると、



「おーい、入るぞー!」



深刻な雰囲気の中、うちの担任兼顧問が学年主任と教頭を引き連れて扉を開けた。



小夜「活動内容と相違があるって生徒会に言われてさ。……お、美味そうだな」



担任が残っていたたこ焼きを指で1つ摘み口に放るが、よりにもよってデンジャラスたこ焼きに当たってしまったようだ。


何だこれ!と担任は置いてあったペットボトルのジュースをそのまま飲み干すが、その態度に顔を顰めた学年主任が耳を引っ張って連れ戻した。



「で?説明してちょうだい?」


桂樹「説明も何も……なぁ?」


三木「別に相違なんてないぞ」



3年は互いを見て首を振り何が悪いと言わんばかりの態度だが、顧問に他の先生まで呼ばれる程、結構大事なのではと焦り始める。



「顧問の先生はこのことを知っていて?」


小夜「ただのタコパだろ?三木、説明しろよ」


三木「歓迎会をしていただけです。特に問題はないと思いますが」



理由は分からないが何故か俺らが不利のように感じる状況で、三木先輩は周りの威圧感をものともせずに堂々と受け答えをする。


いつも泰然と構えて揺らぐことのない三木先輩が問題ないと言えば、本当にそう思えるから不思議だ。


圧倒的な存在の三木先輩に続くよう、桂樹先輩も加勢する。



桂樹「そうそう、歓迎会はどこの部活もやってるぜ」



もういいよな?と追い出そうとするも、眼帯カラーグラスの方が良しとしない。



「確かに調理室の申請は通した…が、火の使用は聞いていないぞ」


蘭世「使ってねーよ。ほら、コンセント」



梓蘭世が電源を指差して見せる。


ガスの元栓は開けていないし、電気なら特に危なくないと思うが生徒会側はそうはいかないらしい。



「衛生面も心配よねぇ?」



両腕を前で組む生徒会長の言葉に、それを言われたら厳しいと身体が強ばった。


この蒸し暑い6月の名古屋、食中毒も想定して行動しろということだろう。


今更ながら生徒会に学年主任まで出てくるなんて、ただの歓迎会のつもりだったが相当ヤバいのではと血の気が引く。



「小夜、お前何で確認しなかったんだ」


小夜「えー…知らなかった、知らなかったですはい」



担任は学年主任に問われるがら顧問なのにシラを切るつもりなのか首を傾げている。


あんたがたこ焼き器もジュースも買ってきたんだ、知らないは無理があると不満を抱いていると、



夕太「ずるいよ小夜先生、ジュース買ってきてくれたくせに」



柊が俺の気持ちを代弁するように不貞腐れた声を出した。


どこまで許可が必要だったのかは分からないが、この感じだと多分ピザパーティーもダメだったんだろう。


ひたすら口を閉じる中、今まで怒られたことが無かった俺が高校に入ってからもう2回も怒られていることに気がついた。


前の俺だったら巻き込まないでくれと憤慨していたに違いないが、今はこの体験さえ新鮮に感じる自分がいて、良くない事だと分かっているのに高揚する気持ちが抑えられない。



「SSCは合唱部とは違い、作詞作曲をするからと設立許可を出した。何も活動をしていないとなると__」


「廃部にするしかないわよねぇ」



雅臣「はっ……!」




_______は、廃部!?!?



思わず声が漏れてしまい慌てて口を手で押さえる。


......悠長な事を考えている場合ではない。


叱られるくらいで済むかと思っていたが、そんなにダメな事だったのか!?


確かに作詞作曲歌っちゃおう……なんて活動は1度もしたことがなく、皆で毎日集まって各々が好き勝手しているだけだ。


何も活動しなくていいのかと呆れていた頃が懐かしく思えるくらい、最近はそんな事もすっかり忘れて楽しんでいたことにようやく気づく。



桂樹「いやいやこんなんで廃部はねーよ」


「どうしてそう言い切れるのかしら?」



口調は明るいのに、多様性生徒会長の目は終始笑っていない。


言葉遣いとは裏腹に物凄い圧だが、桂樹先輩は同学年だからかそれに動じる事なく、絶好の切り札を出した。



桂樹「水泳部の歓迎会はプールの水で冷しゃぶしてたぜ?」


「……何だと?」



眼帯カラーグラスの掠れ気味の声は凍えそうに冷たくて恐ろしいが、それを上回る驚愕の事実にその場が凍りついた。



……れ、冷しゃぶをプールの水で?


それは………。



夕太「……汚くね?」


楓「衛生面とか言うならこっちの方がマシだよね」



俺が思った事をそのまま柊と蓮池が口にする。


使用済のプールの水に比べれば、俺達のよく火を通したたこ焼きの方が余程衛生的だよな。



三木「………柔道部の歓迎会は焼肉だったな」



今度は三木先輩がまるで今思い出したように、突然他の部活のリークをし始める。



三木「いつだったか火災報知器が鳴っただろ?あれは火を使ったからじゃないのか?それに生肉はどう管理していたんだろうな」


夕太「あー!1回鳴った!火災報知器!」


楓「えー、あれ原因は柔道部だったんですねー。知らなかったなぁ……」



絶妙なタイミングでのリークに調子づいた柊と蓮池がわざとらしくヤイヤイと合いの手を入れる。


生徒会も学年主任も教頭も、全員が顔を見合わせた。



「……そんな話は聞いていないぞ?」


三木「それを取り締まるのがお前らの仕事だろ?俺らの歓迎会なんて可愛いもんじゃないか」



眼帯カラーグラスの顔つきがどんどん険しくなるが、明らかにあちらの分が悪い。


やってる事は同じとはいえ、冷しゃぶと焼肉の方が遥かに食中毒の危険性は高い。


顔を伺えば廃部をチラつかせた生徒会2人も、俺らを叱ろうとした学年主任もどちらも迷いが生じ始めている。


それを察知した桂樹先輩がここぞとばかりに畳みかけた。



桂樹「俺の歓迎会レベルで廃部ならまずそっち把握してからだろ?新設サークルだからってわかりやすく目の敵にしてんなよ」



規定通りの活動をしてない俺達がそれを言うには少し無理があるが、生徒会、先生相手に絶対譲らず1歩も引かない3年2人が異様に頼もしく見える。



三木「…まぁ、次回から気をつける。すまなかった。先生、申し訳ありませんでした」



そして勢いよく頭を下げた三木先輩に教頭も学年主任も、そして生徒会も誰も何も言えなくなってしまった。



「……まあ、次はきちんと申請してからやりなさい。後片付けはしっかり頼むよ」



そう教頭が話を締めた横で、おーおーやるなぁ、とニヤけていた担任の頭を学年主任がぶん殴り3人ともその場を立ち去った。


三木先輩の潔い謝罪に、多様性生徒会長も肩を竦める。



「今回は仕方ないわね。三木ちゃん、次回からはちゃんと活動するように」


「………次はない」



2人とも調理室を出て行く姿を見て、どうやら見逃してくれたようだと胸を撫で下ろす。



蘭世「見たかよあの顔!!はー、おもしれぇ!!」


梅生「たこ焼きより良くないもんなぁ…」



先生達と生徒会が出ていくのを確認するやいなや梓蘭世は大笑いしている。


生徒会より桂樹さんと三木さんの方がタチわりいと大ウケだが、俺は真面目そうな一条先輩が動じずに一緒になって笑ってるのが意外だった。


極度の甘党だったり梓蘭世を踏みつけたり怒られても動じなかったりと、一条先輩は柊より侮れないかとしれないと見る目が大きく変わった。


教頭に言われた通りそろそろ空いた皿だけでも片づけるかと手を動かすと、三木先輩が桂樹先輩の肩に手を置いた。



三木「リオ、水泳部の話は本当か?」


桂樹「知らね、しゃぶしゃぶはしてただろ」



つい素直にリークを信じてしまったが、あれは嘘なのか?と桂樹先輩の爆弾発言に集めた紙皿を落としそうになる。



蘭世「うわデマカセかよ!水泳部の奴らにバレたら殺されるぜ桂樹さん」


桂樹「言われる方が悪い。そんな事言ったら火災報知器の件は柔道部じゃねぇだろ」



騒ぐ梓蘭世をものともしない桂樹先輩に対して三木先輩もさぁなと肩をすくめるだけで真偽が全く分からない。


2人の顔色からは何も窺えないが、3年生のいつだって余裕な態度は嘘か本当かがわからない。


俺が3年生になったら、今みたいに一々悩まずあんな風に堂々と立ち振る舞えるのだろうか。


たった2個学年が上なだけなのに、俺にはとても遠く感じた。



三木「まぁどちらにせよ、今後は少し真面目に活動しないとな。さ、片付けるぞ」



至極ご最もな三木先輩の言葉とともに、楽しかった歓迎会は終わりを迎えた。




読んでいただきありがとうございます。

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