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59.【買い出しは1年生】



夕太「さて、テストも終わった事ですし!まぁでんちゃんは追試あるけど…たこパの詳細についてです!」



改めて今日の本題を柊が黒板に書いて、具材の文字に桂樹先輩が身を乗り出した。



桂樹「俺らいない時に具とかは決めたんだって?」


夕太「そうです!買い出しとか担当も決めたいんだけどSSCのサークル費がどんくらいか分かんなくって」



確かにどこも部費やサークル費は貰えるだろうが、そもそもこんなぽっと出のサークルに大した予算なんて出るのか?



三木「新設サークルは一律で3万円だからうちも3万だな」



さすが色々と詳しい三木先輩が指を3本立てて見せた。



蘭世「へー…え、でも3万なんてピザ代でもう全部ないんじゃね?あれいくら使ったんだよ」



3万円と聞いて意外とあるなと思った矢先、梓蘭世の質問を聞いて柊大丈夫なのかと少し慌てる。


……まさかあのピザパーティーで全部使っちゃったとか言わないだろうな。


あの量のピザにジュースだと軽く2万は超えているだろうし、全員が同じことを危惧したのか柊に視線が集中した。



夕太「そこはご心配なく。ピザパーティーの時は小夜先生が自腹切ってくれてます!なので、とりあえず3万円はまるっと残ってるわけですね!」


梅生「あ、あれ自腹だったんだ…」



ぽろりと驚愕の声を漏らした一条先輩と一言一句同じことを俺も心で思ってしまった。


一体いくら使ったんだと思うも、あのふざけた担任がやりたくてやったんだからどうでもいいかと片付けた。



桂樹「まあまだ色々使うだろうし、タコパするにしても結構抑え気味でいかないとだな」



至極真っ当なことを言う桂樹先輩に、



楓「タコがないたこ焼きとかならやる意味ないんで中止しましょうよ」



蓮池がはい解散、と伸びをして帰る準備の素振りを見せた。


お、お前のカラッポの頭には0か100しかないのか!!


桂樹先輩の抑え気味って言葉をちゃんと理解しろ!


タコパは桂樹先輩の歓迎会も意味してるのに、次にアホなことを言ったらそのまんま言ってやるからなと待ち構える。



夕太「ブタのでんちゃんは放っといて、予算のこともあるのでここは具だけ皆持ち寄りにするのはどうでしょうか?」



持ち寄り…、そういえば柊この前もそう提案してたな。


1人何個か選ぶとしても事前にちゃんと決めておかないと被りそうだな、と前回皆で提案した具材を柊が黒板に羅列するのを頬杖をつきながら眺めた。



夕太「絶対必要なたこ焼き粉とかそういうのはサークル費から出して、他のアレンジしたい具やソースは1人3つまで買ってくるのはどうかなって!」


楓「自腹なの?だるすぎ」


夕太「前もそう言ったじゃん。それにどうせでんちゃんはブタみたいに食べるんだから自分でたくさん買ってよ」


楓「何で一々豚みたいとか言うかな、…まぁいいや。俺は食べたいの買うから他の人は財布と相談して買ってくださいよ」



……お前と言う奴は本当に一々嫌味な野郎だな。


どうせお前が1番食うんだからタコだろうがなんだろうが山盛り買って持ってこいよ。


腹立たしく思い、こいつとは一生そりが合わないとしみじみ思った。



三木「いいんじゃないか?1人3つまで、蓮池はまあ好きなだけ買え。敢えて何を持ってくるか言わないのもゲーム感覚で楽しいじゃないか」


夕太「それいい!黒板に書いてあるやつから選んでも、新しく自分で入れたい具材買ってもOKです!」



賛成ー!と皆が拍手で賛同の意を唱えるが、俺1人当惑していた。


いやいや、えぇ…………。


それならこの間の具材を決める時間はなんの為だったのか。


そんな事なら俺はあの日サークルを休めたし、今日だってこの事をグループチャットで教えてもらうだけで良かったじゃないか。


黒板消しで具材の種類を消してロシアンルーレットと新たに書き込む柊を睨んだ。


いつだって自由で羨ましいとため息が出そうになるが、ふとさっきから自分が頭で考えてばかりで全く発言していない事に気がついた。


せっかく弁当チャレンジでコミュ障が少し改善してきたのに、これではいつもと何も変わらない。


他愛もない事くらいなら、俺も言ったって構わないんじゃないだろうか。


上手く言えなくても、今日みたいに桂樹先輩がいる日なら多少蓮池に突っ込まれたところで怖くない。


大須で気がついた自分の言葉で気持ちを伝える事で何かが変わる可能性を思い出し、急いで文句ばかりの頭を切り替えた。



桂樹「で、日程は?」


雅臣「こ、今週の金曜日…とか?」



タイミングよく桂樹先輩の持ちかけに、世に華金という言葉があるくらいだから金曜日ならいいんじゃないかと早速提案してみるも、3年2人の顔つきは微妙でもしやこれはイマイチだったかと身じろいだ。



梅生「蓮池、数学とかの追試はいつ?」


楓「来週?のどっかだった気がします」



追試の日程を考慮する一条先輩を見て、蓮池の追試のことなんて頭になかった自分の至らなさに気がついた。


それに今の言い方だと……、お、俺が蓮池をハブろうとしてたみたいじゃないか!?



楓「陰キャがでしゃばんなよ」



性格悪く思われたらどうしよう、なんて考えは一瞬で蓮池が打ち消した。


俺がどれだけ会話でミスっても、嫌味な口調と小馬鹿にした顔つきのこいつより性格が悪く思われることはない。



夕太「追試は来週の水曜日だから、やるなら1週後にして来週の金曜日とかどうですか?」


三木「そうだな、さすがに今週は厳しいし来週の金曜にしようか、藤城もいいよな」



わざわざ蓮池の追試の日程まで覚えてやって、柊は本当に気が回るよな。


柊の提案にやんわり三木先輩が俺のを却下したが、



雅臣「はい」



努めて平静な声を落とした。



夕太「なら、水曜日でんちゃんの追試が終わったら俺とでんちゃんでたこ焼き粉とか卵とか買ってきます!俺ら覚王山だし!」


楓「俺ら、って夕太くんまた泊まってく気?」



はいはいと手を挙げ無駄に元気な柊に呆れ顔の蓮池だが、俺は今度こそと挙手して名乗りを上げた。



雅臣「お、俺も行く」


楓「は?何しに来るんだよ」


雅臣「俺も覚王山だ、」



怪訝そうな顔の蓮池は良いとして、珍しいと言わんばかりに大きな目を瞬かせ不思議そうな顔をする柊に見つめられると言葉に詰まる。


最初から俺も覚王山って分かってるだろうにと不満が出そうになるも、ここで引いたらダメだと心を強く持つ。


俺はこいつらみたいな関係性でないし、お呼びじゃなくても仕方ない存在だとぐっと堪えて返事を待った。



桂樹「1年で行ってくれんの?いいじゃん」


蘭世「そーそ、そういうのは1年がやりゃいいんだよ」



………お、おぉ!!


桂樹先輩と梓蘭世の援護射撃を皮切りに、いい感じに空気が変わるのが分かった。


本当は3人で買い出しに行くのは乗り気でなかったが、先輩2人の言い分を聞いて名乗りを上げなかったら気の利かない奴と思われるところだったと胸を撫で下ろす。


ピザパーティーの時はこんな風に誰かと関わろうなんて思いもしなかったのに、大須に行ったあの日から全てが変わってしまった。


……もしかしたら、俺はずっと気の利かない奴だと思われていたんだろうか?


さっきも一条先輩や柊が蓮池の追試をきちんと念頭に置いていたのに、俺は何も考えてなかった。


サークルを抜けるなら代わりを探してこいと言われた時だって、何で俺がそんなことをと納得がいかなかった。


……でももし、あの時自分が探してきますと積極性を見せていたら、何か違ったんだろうか。


誰も見つからなくても許して貰える可能性があったかもしれないし、今ここにいないかもしれない。


こんな時、俺は本当に考えてるフリをして何も考えてこなかったんだと痛感する。


蓮池は何度も俺に対して図々しいと言ってくるが、あながち当たっているのかもしれないと目の前のおかっぱ頭をぼんやりと眺めた。



桂樹「あ、そーだ1年買い出し行くなら上変えてけよ」


雅臣「えっ…ど、どうしてですか?」


桂樹「今年ライン朱色だろ?山王1年って即バレ」



桂樹先輩の言い方にあれこれ散漫だった意識が戻ったが、わざわざ着替えろと言うって事は……。


それってもしかして、と一抹の不安が過ぎる。


こんな事聞いたらまた陰キャだと蓮池に笑われそうだが、話の流れ的にはおかしくないと意を決して口を出した。



雅臣「制服でどこか行くのって……」


三木「一応は校則違反だな。まあでもバレなければ何も問題はない」



眼鏡のブリッジを指であげ答える三木先輩に、やっぱり校則違反なんじゃないか!と声を上げそうになるも、そうとは知らずに制服で闊歩した大須を思い出す。



雅臣「あの、俺らこの前制服で…大須行って…」


桂樹「おお、チャレンジャーだな」



今更焦っても仕方がないが、あそこは先生徘徊してっぞと笑う桂樹先輩を見てふと思い出す。



雅臣「……え、あの時梓ら…梓先輩も一条先輩も上着脱いだのって…」



衣替え前だったから学ランだったが、よく考えたらあんな変な学ランは夏服よりも目立つに決まっている。


上目遣いに尋ねる俺に梓蘭世は大笑いした。



蘭世「制服で大丈夫なんですかーなんて聞かれてねーし」



なあ、梅ちゃんと一条先輩の肩を組むが、当人はものすごくバツの悪そうな顔をしている。


そ、それならあの時、素直に俺が聞いていたら上は脱いだ方がいいって教えてくれたのか!?


制服のままでいいのかとは思ったが、そんなことわざわざ聞いたら陰キャっぽいかと過ぎり辞めた俺が馬鹿だった。


先生に捕まって親に連絡がいく可能性もあったと知って瞠目する。


改めて心で思ってるだけじゃなく、口にするべきだと自分のダメさ加減を知った。



梅生「知ってるのかと思ってた……ごめん」



隣で俺をすまなそうに覗き込んだ一条先輩は、



蘭世「誰も梅ちゃんみたいに校則丸暗記してねーよ」


梅生「蘭世やめて、余計なこと言うなよ」



親友の足を踏みつけ、梓蘭世が飛び退いた。



夕太「じゃあ3人でシャツは変えて買い出し行こ!!卵とかは前日まででんちゃんの家の冷蔵庫に入れておいて、当日は…クーラーボックス?」


三木「そうだな、登校時はクーラーボックスに入れて持ってきてくれ。俺が前日に調理室を申請しておくから朝イチで冷蔵庫に入れてしまえばいいんじゃないか?」



1年3人で買い出しに行くことが確定し、その後校則違反を全然気にしてない様子の柊が三木先輩ととんとん拍子で話を進めていった。



読んでいただきありがとうございます。

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