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5.【教師の姿】


「ったく…遅刻してきたんだからせめてそれらしく殊勝な雰囲気を醸し出しとけばいいものを…」



小声に弾かれたように顔を上げれば、その風貌に動揺が隠せない。


……こ、こいつ教師だよな?


20代半ばの教師は、ウィッグと呼ぶにはあまりに酷いズラをしていた。


どう見てもサイズのあってない黒髪のズラは毛量に負けて浮いているし、それを無理やり七三にしてあちこちピンで留めているが金茶の髪が数本後ろから覗いている。


そしてその変なズラよりも、遥かに目を引くのが甘く華やかな顔立ちだ。


おかっぱ男よりも上背のある堂々たる長身に均整の取れた長い手足。


一目で分かる上等なスーツを見に纏い、ピカピカに磨かれた革靴まで、何もかもが洗練されている。


男の俺から見ても本当に整っているなと思うが、一歩間違えればさながらホストだぞ。


ズラと顔と見た目、全てのギャップに脳が追いつかず言葉が出ない。



「君達纏めて退場ね」



俺はそのまま制服の襟を掴まれ引っ張られた。



雅臣「…離してください」



襟と一緒に髪まで引っ張られ少しの痛みに顔を歪めると、お、悪いとだけ言って手を離し、すぐに側の扉を開けた。


見た目のインパクトは今日出会った奴らの中の誰よりも勝る教師は、今度は夕太とおかっぱ男の首根っこを掴む。



夕太「えぇ!!そんな離してよ!!」


「もういいよ飽きたし、このまま帰ろう」


夕太「でんちゃんのバカ、デブ」



何とか踏ん張る夕太の抵抗も、自分で歩けると体を捩るおかっぱ男の抵抗も全く意味をなさなかった。


教師は両手で2人を引き摺りながら俺を肩で押し出す。



「ほら行けって。退場退場」



そのまま三人とも外へ追い出されてしまった。


……たかが教師だろ。


2人引っ掴んで俺まで押して、夕太はまだしも俺らは割とデカいし体格も悪くは無いぞ。


随分馬鹿力だなと間近で見上げると、一瞬見えた笑顔の奥に潜む眼光の鋭さに少しの緊張が走る。


口元は笑っているのに合う目が笑ってないような……。


思わず教師からは目を逸らし、両側の2人をそれぞれ睨みつける。


そもそも、こいつらのせいで自分まで退場させられるのはおかしくないか?


教師は何を見てたんだと納得がいかない。



夕太「…うーん…いや…まぁ、うーん…?」


「夕太くん、顔がブサイクになってるよ」


夕太 「うるさいなぁ。どーせ音痴なでんちゃんにはわからないよーだ」



閉められた扉の奥から再び聞こえるソロの歌声がどこか腑に落ちないのか、夕太は首根っこを掴まれている事も、俺が睨んでいる事も、おかっぱ頭の失礼な発言も気にもとめず小首を傾げていた。


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