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44.【緻密なタコパ計画】



梅生「たこ焼きだから、タコは必要だよね?」


夕太「梅ちゃん先輩さすがです!タコ、と」



当たり前の事を言う一条先輩を過剰に褒める柊は黒板に具材を書き始める。



蘭世「あと葱とか?まあ基本的な具材以外に変わり種も欲しくね?チーズにウィンナー…」



梓蘭世って本当に顔に見合わずジャンクな物が好きなんだな。


たこ焼きが世界一似合わない芸能人は窓際前から2列目に座っている。


その後ろに一条先輩が座ってるので出席番号順の自分達の席なんだろう。


可哀想に…飢えてるのかもしれない。


梓蘭世の学ランから覗く手首を見てしみじみと思う。


骨と皮しかなくて折れそうに細いスマホを弄る指を見ると、普段三木先輩に節制されているその反動だろうと容易に想像がつく。


たこ焼きなら小さいからいつもよりこっそり多く食べれるよなと思うが、三木先輩のことだ。


その数も逐一数える気がしてゾッとした。


それにしても……


たこ焼きなんて店で買うイメージだった俺は、もちろん自分で焼いたことはない。


一条先輩も同じなのか、それは楽しそうにたこ焼きの具材について梓蘭世に話しかけている。


俺なんてそもそも食べた記憶もほとんどないのでノーマルな普通のたこ焼きしかイメージできないのだが、



楓「エビ餅ベーコン明太子、ソース以外にも明石焼き風にしたいから出汁と照り焼きソースでてりたまにしてポン酢とネギで__」



恐ろしいほどに饒舌な蓮池が口にする具材を聞いて、よくもまあそんなに思いつくと目を瞠った。


しかも変わり種しかなくて余計に驚く。


エビ、餅、……な、何だって?


たこ焼きにベーコンなんて聞いたことないぞ。



夕太「でんちゃんストップ!!早い!!書けない!!……ほんとでんちゃんって味のバリエーション豊富だよな」


楓「はいはいどうせデブは味にうるさいですよ」



卑下した返しに誰もそんなこと言ってないだろうと呆れるが、それにしてもたこ焼きにそんなに多くの食べ方があるとは知らなかった。



梅生「俺普通のたこ焼きしか知らなかった…!!でも全部美味しそう!!楽しみ!!」



……一緒ですね、分かりますよ一条先輩。


珍しくテンションの高い先輩を見て1人頷く。



蘭世「まじで結構何でも入れて良くね?…て、予算は?」


夕太「粉とか油とかはサークル費で、具材だけ持ち寄りにしようと思ってて…!でんちゃんがバカほど食べるから」



計算しないと……と少し心配そうな柊を見て、この間のピザの食いっぷりを思い出し確かにと頷いた。



楓「なんだよ俺が豚みたいに」


夕太「ブタブタうるさいなぁ、どうせでんちゃんは100個食べても足りないんだから途中からたこ焼きの皮だけ食べてろよ、味がたこ焼きならいいんだろ」


梅生「……たこ焼きの皮…」



キレた柊のワードがツボだったのか、一条先輩が口を押さえてくっくと肩を揺らしながら静かに笑っている。


大人しい上に笑い方まで品が良いのを見て、前に柊が言ったお内裏様って本当に合ってるなと思う。



蘭世「まあいいか、とりあえず候補だけだして後は3年いる時に詳しく聞くか」


夕太「はい!それとあと追加で__」



柊が勢いよく黒板に書き足したのは、デザート系のチョコレートやマシュマロだ。



雅臣「…………チョコレート?たこ焼きにか?」



絶対に合わないだろうとつい口を出してしまった。


タコにチョコレートだなんて気持ち悪い。


どんな味覚してんだよ。


想像しただけで不味そうで眉を顰めると、



楓「馬鹿かよ。普通のたこ焼きにじゃなくてホットケーキミックスでベビーカステラとか作るんだろ。想像力ねーな」



一切俺の方を見ず口だけ素早く動かす蓮池の嫌味な物言いに、カチンときて腹が立った。



雅臣「なっ…!!ホットケーキの話なんてひと言もしてなかっただろ!!」


蘭世「うるせーな、一々喧嘩すんなよ」




______お、お、お前が言うな!!



梓蘭世は呆れているが、お前だって一条先輩の反応が思い通りにならないと不機嫌丸出しで周りに当たり散らかすだろ!!


少なくとも俺は至極真っ当な理由で怒っているというのに……!!


わなわな震えながら、しかし一応先輩である梓蘭世にそんな事言えるはずもなく、大人しく黙ることしかできない。



梅生「ほ、ホットケーキ…チョコレート…!」



悔しさに打ち震えていると突然一条先輩が興奮した声を上げて立ち上がる。


たこ焼きとは無縁の食べ物が出たのでびっくりしたんだろうか。


……一緒ですね、分かりますよ一条先輩。


俺達みたいに育ちの良い者には変わり種なんて理解出来ないですよねと頷く。



楓「ホットケーキミックス使って中にウィンナーを入れればアメリカンドッグ、何も入れないとベビーカステラ、そこにチョコやホイップクリームをつけたら甘くて美味しいですよ」



何もたこ焼きだけ焼かなくてもいいって訳です、と一条先輩には懇切丁寧に説明する蓮池がチラりとこちらを見るので、怒鳴りたくなるが無理矢理グッと堪えた。


俺にも初めからそうやって説明すればいいだろ!?



梅生「タコパだからたこ焼きだけかと思ったけど、そういう楽しみ方もできるんだ!」



一条先輩がすごい!俺マシュマロとか買ってくるよ!と途端に生き生きして目を輝かせる。


あまりに楽しそうなので場を壊す訳にもいかず、今日のところは一条先輩に免じて許してやると再び口を噤み耐える。



蘭世「あー…柊、」



既にたこ焼きではないバリエーションで盛り上がる蓮池と一条先輩を横目に、梓蘭世が立ち上がって柊に来いと手招き呼び寄せる。



夕太「ん?」



小声でシッと人差し指を柊の唇に当て、そのまま一緒に2人俺の座る席の前までやってきた。



蘭世「お前らホイップクリームは用意するなよ」



梓蘭世が俺と柊を交互に見て絶対持ってくんなと念を押す。


生クリームにアレルギーでもあるのだろうか?


それとも実は更に過酷なカロリー制限をしているとか……


恐ろしい考えも過ぎるが、その疑問は柊が素直に聞いてくれた。



夕太「何でです?梅ちゃん先輩甘いの好きなのに?」



一条先輩の言う事は何でも聞きそうな梓蘭世が珍しく渋い顔をしていて俺も気になる。



雅臣 「…あ、あのアレルギーとかなら無理せず…」



とりあえずありきたりな方の理由をあげるも、梓蘭世は首を振る。



蘭世「全然ちげぇよ。甘い物ダメなのは3年含めていねぇけど…こう、な?わんちゃん余るだろ?」



スッキリしない答え方に柊が小首を傾げる。



夕太「あー、確かに…?でも人数いるし余るくらいがちょうどいい___」


蘭世「そうじゃねぇ!!……余ったら梅ちゃん、全部飲んじまうから…」


夕太・雅臣「「ぜ、全部飲む!?」」



そんなに甘党だとは信じられず、つい復唱してしまった俺の脛をうるせぇと梓蘭世が蹴飛ばし、柊の頭も小突いた。



雅臣 「……っ、てぇ」



痛くて涙が出そうだが、その姿を想像しげんなりする梓蘭世の表情を見てそれが嘘では無いことが分かる。


の、飲むって、まさかあの一条先輩が?


チラリと本人に疑いの目を向ければ、こちらに目もくれず蓮池と甘い物の話で盛り上がっていた。


それと同時に、梓蘭世が俺のもう片方の脛を再び蹴飛ばし痛みで現実に引き戻される。



蘭世「…梅ちゃんの健康のためにも」



柊は苦しそうに目を伏せ切に訴える梓蘭世の腕にしがみつき何度も大きく頷いている。



夕太「蘭世先輩も大変なんだね、親近感。でんちゃんの話してるのかと思った」



苦労を互いに分かち合う姿を横目に、蓮池がうどん6玉食う衝撃より遥かに大きい衝撃が俺を襲う。


あの一条先輩からは想像もつかない事実を聞いて、もう一度まじまじと一条先輩を見る事しかできなかった。



読んでいただきありがとうございます。

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