31.【派手な方が悪い】
〝何見てんだよブサイク〟
〝俺の顔に何かついているのか?〟
〝で、何見てたんだよてめぇは〟
…そんなに言うほど俺は人の顔を見ているか?
今日まで散々指摘され、さすがに不安になってきた。
東京にいた頃はそんな風に言われたことなんて一度も無かったぞ。
名古屋人が自意識過剰なんじゃないのかと思いたいが、ついには蓮池だけでなくクラスメイトにまで言われて非常にショックを受ける。
……でも、
……でもだぞ?
言わせてもらえば態度もふてぶてしく口も悪い、あんな目立つ奴は見られてもしょうがないんじゃないか?
蓮池の変なおかっぱ頭を思い浮かべながら何とか自分を肯定してみる。
それに梓蘭世は芸能人じゃないか。
あの人こそ見られてもしょうがないだろ。
見られるのが仕事なんだからそこは諦めろよ。
そうやって無理やり理由をつけたとしても、じゃあ三木先輩は?クラスメイトは?とどんどん自信がなくなっていく。
誰にこんなこと相談すればいいのか分からないし、そもそも悩む事なのだろうかとも思う。
そんなことしていない、気にするな、お前は悪くないと言って欲しいが、俺にそれを言ってくれる相応しい相手が誰も思いつかない。
そんなことを考えていると、ポケットで振動を感じる。
スマホを取り出し画面を見ると太った鳥のスタンプがパタパタと羽ばたき、
『今日のサークルは3年1組の教室で行います』
柊からグループチャットに連絡が入っていて、どこも空いていないのかまた三木先輩のクラスだった。
毎回場所が確定していないのは面倒くさいなと、階段を降りて指定の場所へ向かう。
柊は図太いくせに意外とマメなところもあり、毎日あちこち色々な場所に空いてるか聞き生徒会から使用許可を取ってくるが正直大変だよな。
こんなに不便ならどこか1つに場所を決めておきたいだろうと降格を賭けて皆が勧誘に必死になるのも分かる。
桂樹先輩の既読がついてOKと返すのを見ると、彼が来るなら今日も休めないなとため息をつく。
足早に階段を降りる途中、下から上がってきた人達を見てギョッとした。
「やぁんなっちゃう…クッキーないんだってぇ…」
「帰りにコンビニで__」
「ちっがーう!!購買の100円クッキーが良かったのよ!!」
「調理部休部してんだから無理だろ」
___た、たたた、
………多様性!!!!!
それが入学式で遠目に見た生徒会長だと直ぐに気づいた。
俺が髪を伸ばしていた時よりも遥かに長く、その髪の毛をサイドで三つ編みにした大男は内股で階段を上がってくる。
間近で見るととんでもないインパクトで思わず凝視してしまった。
しかもその隣は何故か片目に眼帯をし、更にその上からカラーグラスをかけていて……
一体何者なんだ!?
……。
………。
この2人を見て俺は確信した。
この学園には派手な人が多すぎる。
だから俺がつい見てしまうのだ。
周囲を見渡せば俺だけが彼ら見ているわけではなく、階段付近のほとんどの生徒が物珍しそうに眺めている。
ほら、俺だけが見ているわけではない。
少しほっとするも、すれ違いざま生徒会長と目が合うと、俺にウインクしたかと思えば優雅に片手を振ってきた。
「知り合いか?」
「んーん、全然」
チラ、とこちらを見たカラーグラスの男は柊より少し大きいくらいの身長だが、近くで見ると謎に迫力があり、心臓が縮み上がる気がする。
「そんなに見てどうした1年生。何か用でもあるのか?」
雅臣「い、いや別に。失礼します。」
下から凄まれ、すぐにこの場を離れたくて一礼してから一目散に階段を駆け下りた。
心臓がバクバク鳴っている。
学校だというのに何故あんなにイカれた格好をしているのか。
あんなの完全に校則違反じゃないか。
続いて後ろから上がってくる教師を見て、あいつらを今すぐ取り締まれよと喉まで出かけている。
…………ん?
ちょっと待て。
じゃあ桂樹先輩の金髪も違反じゃないのか?
校則違反からあの華やかな先輩を思い出し、立ち止まって考え耽ける。
梓蘭世は芸能人だから申請とかして許可を得てるのかもしれないが、桂樹先輩って大丈夫なのか?
そういえば柊だって明るいヘーゼル色をしている。
勝手に地毛だと思っていたが、まさかあれも実は地毛じゃなくて染めてんのか?
もう訳が分からない。
頼むから皆もっと学生らしい格好をして欲しい。
俺は見ているつもりはないが、見られてると思うならその派手な風貌を控えるべきだ。
そっちも努力するべきだろうと1人静かに頷く。
後で生徒手帳をで改めて校則を確認しようと歩き出し、3年1組の扉を開いた。
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