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30.【その神経を疑う】


結局、俺のSSC入部が確定してしまった。


桂樹先輩が俺を思って入部してくれたのに、俺だけ辞めるなんてできるわけがない。


こんな事になるなんてと己の無力さを痛感した。


願わくばあのイケメンで優しく気遣いまで出来る無敵の先輩が、これ以上要らぬ苦労を背負わないで欲しい。


前の席の柊は人の気も知らず、呑気にジュリオン先輩の入部祝いをやらないと、と理由を無理やりこじつけてまた何か目論んでいるようだ。


授業中だというのに熱心にサークルの企画を考えているのが分かる。


言っておくが俺は決して覗き見している訳じゃないぞ。


柊は考えていることをそのまま口に出しながら物事をまとめるのが癖らしく、その概要がボソボソと前から丸聞こえなのだ。



小夜「あ、忘れてたわ。この間の小テスト返すぞ」



現代文の授業の終わり際、ど忘れしてたと担任がギリギリで小テストを返却し始めた。


静かだった教室が席順に名前を呼ばれ受け取った順に少しずつ騒がしくなっていく。



小夜「バカは小テストで稼げって先に言っといたろーが。こんなんで点数半分無かったやつ、まじで中間ヤバいから勉強しろよ」



最初から成績に加算すると担任が宣言していたので、事前に皆勉強してきていたのか概ね笑顔だった。


敢えて担任が簡単な漢字とかボーナスで出してくれたであろうに、半分も点が取れてない奴なんているのか?


当てはまりそうな蓮池を見てみれば、1番前の席だと言うのに相変わらず舟を漕いでいる。


……おい、大丈夫かよ。


寝てる場合じゃないだろ?


お前こそ小テストで稼いでおかないとヤバい奴No.1だろうが。


おかっぱ頭がぐらんぐらんと揺れながら、しまいには机に突っ伏してピクリとも動かなくなる。



夕太「でんちゃん、でんちゃん」



柊が後ろからいい加減起きろとガンガン椅子を蹴る始末だ。


それでも起きない蓮池の頭を担任がバコンと教科書で引っぱたいた。



楓「………今の時代体罰とか言われますよ」



ムクリと起き上がり低い声で悪態をつく蓮池に、



小夜「アホが。この点数で授業中爆睡こいてるのを見逃す訳にはいかねーんだよ」



担任が蓮池にテストを手渡す一瞬、廊下側の窓から差し込む光に透けて凄まじい大量の赤い×印が見えてしまった。


しかし蓮池みたいな男に担任の言葉が響く訳もなく、大きな欠伸をして座ったまま受け取ると再び机に突っ伏してしまった。



夕太「あれ?80点だ」



蓮池に続いてテストを受け取った柊がどこ間違えたんだと首を傾げる横を通りすぎる。


予想通りの満点を確認して席に戻った途端、前の席に座る柊がぐるんと振り向き、



夕太「ね、ここの答え何?」


雅臣「…さあ」


夕太「どうせ100点なんでしょ見せて」



パッと俺の手から小テストを取り上げ、柊が赤ペンで自分の間違えたところを直す。



小夜「ここから同じの何問かお情けで出してやるから復習しとけよ。高校からは普通に留年あるからな」



授業の終わりを告げる鐘がなり、担任が挨拶をして教室を出ていくと蓮池の席に数人クラスメイトが集まってきた。


そいつらが寝ている蓮池を揺さぶり起こすという恐ろしい光景を見て、やめておけ殺されるぞと先行きを案ずる。



「楓起きろって!」


「蓮池まぁた寝てただろ」


楓「あ?」



案の定、蓮池は酷い目付きで眠りを妨げるクラスメイトを睨みつけた。



「あ?じゃねぇよ!ほらこれノート」


「小テストも答え写していいぜ?こっから中間出るらしいしさ」



……随分優しい奴らだな。


蓮池のできの悪さを心配してやってるのか?

あんまり調子に乗ると痛い目にあうぞ。



楓「んー、ありがと…そういえば花どうだった?」



ほら、と俺の想像通りの展開にはならず、あの蓮池が普通に返答しているのを見て開いた口が塞がらない。



「だからそれのお礼も兼ねてさ!ノート貸すって言ってんだよ!彼女めっちゃ喜んでてさ__」



どうやら彼女がいる奴に頼まれて蓮池が花を用意したらしいが、頼んだ奴の神経を疑う。


……あの蓮池だぞ?


性格も根性も態度も言葉も全てが最悪なこの男に注文しただなんて、頭おかしいんじゃないのか?


こいつも蓮池と同類、同レベルなのかと疑っていると、



「藤城どした?なんか用?」



そいつが振り向き急に話しかてきたのでドキッとした。


何も用なんてないし、お前達の会話に加わる気もない。無駄な気を回して一々話しかけてこなくてもいいのにと黙っていると今度は蓮池まで振り向き、



楓「何見てんだよきめぇな」



俺にいつもと変わらない暴言を吐く。



雅臣「……見てねぇ」


「蓮池に何か用あんじゃねーの?なぁ?」



苛立ち否定するも、くだらないクラスメイトの憶測にこいつに用なんてあるわけないだろ!と怒鳴り散らしたくなるのを何とか堪える。



雅臣「ねぇよ」



一応返事だけしてやり、イラついたまま教室を飛び出した。



読んでいただきありがとうございます。

読んでくださってる事がわかるととても嬉しいです!

ブクマや感想もいただけると書き続ける励みになるので、よろしくお願いいたします♪♪


そして明日は2話更新です♪♪

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