柊夕太の帰り道1
夕太「ふん…ふふ……♪♪」
蘭世「ここの転調好き」
夕太「わかる、蘭世先輩この曲好きならアルバムに
入ってるさ__」
蘭世「Infinity?」
夕太「そう!!」
合宿も無事終了して、俺と蘭世先輩は栄方面行きの東山線に揺られている。
イヤホンを半分こして、俺のスマホに入ってるスマシスのゲームBGMを手掛けるバンドの最新アルバムを聴き
ながら帰宅途中。
お稽古があるでんちゃんは覚王山の家へ直行して、名城線を利用する梅ちゃん先輩は駅から俺たちと反対方面の本山行きに乗って帰っていった。
蘭世「てか夕太どこで降りんだよ」
夕太「栄!」
蘭世「あー、瀬戸だっけ?遠くね?」
夕太「遠いよ。蘭世先輩は?」
蘭世「名駅」
聞けば蘭世先輩の家は名駅付近のタワマンらしい。
まあ私服もハイブラ!ハイブラ!ハイブラ!でハイブラのオンパレードだからそれもそうかと納得した。
やっぱり芸能人ってそういうThe!なところに住む
もんなのかな。
蘭世先輩がまた芸能界に復帰したら、いつかこの
イヤホン半分こしたって自慢しちゃおうかな……。
俺の顔の緩み具合に気づいた蘭世先輩は怪訝そうに目を細めた。
蘭世「何ニヤニヤしとんだよ」
夕太「べっつにー!じゃね、蘭世先輩オススメの曲
送っといてよ」
蘭世「んー、了解」
栄に到着して閉まる扉越しに手を振れば、蘭世先輩も
適当に振り返してくれた。
丸くなったよなー……ていうか、蘭世先輩と何だかんだ趣味が合うし、話してて1番楽しいかも。
あっという間に栄に着いたけどまだ昼にもなってない。
合宿も無事終わって、せっかく楽しかったのにこのまま家に帰るのもなとリュックからキャップを取り出して
無理やり被る。
昨日髪乾かさないで寝たから結構ヤバい感じになってて、キャップが浮きそうだけど気にせず東改札口から
オアシス21に向かうことにした。
まあ、別にオアシスに何があるってわけでもないんだけどさ。
栄イコールオアシスみたいなもんだから。
だけどそこに何がと聞かれたらちょこちょこ飲食店とか雑貨屋とか店が入ってる施設としか言いようがない。
要するにアスナル金山とほぼ同じなんだよね。
一応『水の宇宙船』っていうガラスの大屋根が特徴で
空中散歩とか言って歩けるけど…。
だからといって名古屋人には特に感動もないから、
ウロウロするのにちょうどいい所としかいいようがないんだよね。
夕太「何にもない名古屋が無理やりそれはもう東京並に栄えてますよ!ってね」
でんちゃんだったら絶対こんな風に表現しそうと呟きながら笑った。
夕太「にしても暑っぢぃ……」
目的もなくウロウロするには名古屋の夏は無謀な暑さで、どこか店に入ろうとするけどどこも満席だった。
ステバにゴンティー、信中閣……。
信中閣の中華ってなんか癖になるんだよなぁ……。
本当に普通のラーメンと本当に普通のチャーハン、
可もなく不可もなく普通の中華なんだけどね。
でも何だかんだ言って俺とでんちゃんは半年に1回くらいは食べにきてるんだよなとショーウィンドウに飾られたレプリカの餃子を見て、ふと思いついた。
___餃子パーティーだな。
部室にホットプレート持ってきてさ、SSCの皆で包んで焼いたら楽しくない?
だって9月からのSSCのスケジュールまだ考えてないし、合宿だって全然遊べなかったしさ?
でもきっとでんちゃんは焼売も包もうって言い出すだろうしやっぱり中華パーティーにしようかな……。
よし、俺が生徒会に調理室使用申請しちゃおっと!!
9月の予定を考えているだけで何だか気分が上がって
きて、中華屋を通り越して歩いて行くと1番奥の店はなんとフォーティーワンアイスだった。
ラッキー!ここで涼んでけばいいじゃん!!
さっそく店に入って、ショーケースに入った宝箱のようにカラフルなアイスを選ぶ。
何アイスにしよっかな。
……。
…………。
へへへ。
なんかこんなにどうでもいいことを、こんな風に当たり前に考えられるなんて嬉しいな。
もっと前は……。
毎日があんまり楽しくなかったもん。
やっぱりちゃんとちょっとずつだけど俺も変わってきてるんだよね、と変化を実感していると、
「店内ですか?」
店員さんに声をかけられた。
夕太「はい!えっと……抹茶ホワイトクランチと、
バニラレーズンとスーパーベリーベリー!カップで
レギュラーサイズで!」
可愛いお姉さんに注文すると、さっそくスクーパーで
アイスをすくって綺麗に盛り付けてくれる。
そういえばフォーティーワンってアイスをシェイクに
できるってでんちゃんが言ってたけどほんとかな?
トリプルにしちゃったから全部シェイクにしたらどんな味になるんだろ。
絶対でんちゃんはやめなよってすぐに言うよね。
でも雅臣なら不思議な味がするだろうなとか言うくせに、顔にはやめとけって書いてあって……
「レジにどうぞ」
夕太「はーい」
2人のことを考えながらレジで会計を済ませてアイスを
受け取って席に座る。
久しぶりに訪れた1人の時間に、心がふっと軽くなるような気がした。
でんちゃん以外の人と丸2日ずっと一緒にいるなんて滅多になかったから、俺も意外と気張ってたのかも。
夕太「それにしてもでんちゃんが合宿にちゃんと来るとは……」
俺はとりあえずパクッと抹茶アイスを1口食べて、この夏でまた背が伸びた幼馴染みを思い返した。
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本日は夕太視点の小話!
続きます!




