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228.【いざ!肝試し!】



月明かりが薄く校庭を照らす中、噴水前の広場はまるで祭りのように賑わっていて参加者はかなりいるみたいだ。


部活ごとに集まったグループは思い思いに盛り上がり

活気に満ちている。


既に肝試しは始まっていて列に並ぶ人達は順番に校舎へ入っていく。


俺達も列に並んで順番を待っていると、ふと背後から

明るい声が飛んできた。



「桂樹ー、これスタンプラリーの台紙な」


桂樹「お、サンキュ!すげぇ凝ってんな」


「もちろんやるからにはガチじゃねぇとな!サッカー部の奴ら脅かしまくるって張り切ってたぜ?」


桂樹「マジかよ!!」



……相変わらずの人望だな。


桂樹先輩はどの部活の人とも親しげで、ただそこにいるだけで友人が磁石に引き寄せられるように集まってくる。


俺はそんな先輩を少し離れた場所から眺めつい羨望の

眼差しを向けてしまう。


ああいう風に、俺も誰とでも気軽に話せたら本当に

脱ボッチと言えるよな。



桂樹「ほい、これ台紙」


雅臣「ありがとうございます」



桂樹先輩から手渡された台紙にはお化けや一つ目の傘の妖怪が不気味に描いてあって、細部までこだわりを感じる手の込んだものだ。


中等部から高等部の3階をぐるっと一周するだけのコースならスタンプの場所も分かりやすく設置されているはずだよな。



夕太「これ俺が持ってていい?…って蘭世先輩?何?

ビビってんの?」


蘭世「ビビっとらんわ!!」



柊が台紙を手にしながらニヤニヤと梓蘭世をからかうとムキになって返す。



楓「こんな小規模な肝試しで何をそんな___」



「「「「ギャァァァァァァァ!!!!!」」」」



蓮池が呆れたように投げかける言葉を遮るよう、校舎の奥から耳をつんざくような叫び声が響き渡ってこの場にいた全員が顔を見合わせた。


一瞬にして広場の喧騒が凍りつき、シンと静まり返ると変に恐怖心を煽られる。


一応高校生の男子がこんなにも本気の悲鳴をあげるなんてことあるか?


実はこの肝試し……想像以上にヤバいとか……?



三木「行くか」


桂樹「だな。じゃ、俺ら先行くわ」



少し不安に駆られる俺とは違い、3年の2人は臆することなくそのまま校舎の中へと入って行った。



梅生「どのくらい怖いのかな」


蘭世「何っっでそんなウキウキしてんだよ!!」


楓「男子校って変なとこ本気ですもんね」



3年の背中を見送る一条先輩が異様に目を輝かせているが俺達も順に校舎の中へ出発した。




_________


_______________





夕太「意外と暗いな」


梅生「転ばないようにね……って、蘭世離してよ」


蘭世「無理!!薄情なこと言うなって!!」



普段の威勢はどこへやら……。


一条先輩にしがみつきながら歩く梓蘭世は病院を嫌がる猫みたいに完全に腰が引けている。


しかし、梓蘭世の気持ちも分からなくはない。


夜の帳が下りると校舎内は一変して昼間の喧騒が消え、静寂が重くのしかかり少し不気味に感じた。


空気はひんやりと湿っていて、薄暗い廊下は蛍光灯の

わずかな光が頼りなく揺れ、ただ進むだけで怖い気がする。



楓「スタンプどこにあるんだろう」


雅臣「……余裕そうだな」


楓「ビビり散らかしやがって情け__いってぇ……

アンタのこと言ってんじゃないんですよ」



蓮池がが抗議すると梓蘭世先輩が振り返りその頭をバシと音がするほど思い切り叩く。



蘭世「目が合ったから俺の事言ってんのかと思うだろうが」


楓「どこのヤンキーですか……」



この暗さにも慣れてきたのか梓蘭世は後ろ向きで歩きながら文句をまくし立て、そのいつも通りの騒がしさに少しだけ俺も緊張が解けた気がした。



蘭世「大体俺は霊感あるタイプなんだよ!!」


夕太「えぇ?ほんとか、よ___」


雅臣「……ど、どうした?」



急に静かになった柊は、人差し指を唇に当てるとシッと息を吐いた。


廊下は夜の静寂に支配され、俺達の足音だけが反響する。



夕太「今何か変な音しなかった?」


雅臣「え、気のせいじゃないか?風か何かだろ」


蘭世「どわ!!!!!!!」



その瞬間、ガタガタッ!!と廊下の奥から鈍く不気味な音が響いた。


まるで誰かが古いロッカーを揺さぶっているような鈍くて不気味な音に、俺らは凍りついたように立ち止まり、互いの顔を見合わせる。


俺は何とか平静を装いいつも通りの表情を保とうと

するが、心臓はすでにドクドクと早鐘を打っていた。




梅生「……わっ!!!!!!」


夕太「うお!!!!!!!」



突然、一条先輩が大声を出して柊の肩に飛びつくと流石の柊も驚いたように声を上げた。


一条先輩はくすくすと笑い、暗闇でも彼のいたずらっぽい目がキラリと光るのが分かる。



夕太「ちょ、梅ちゃん先輩!!」


梅生「ごめんごめん!皆めちゃくちゃ怖がってるし、

ちょっと空気変えたかっただけ」


蘭世「梅ちゃん脅かすの無駄に上手いから……」



しかし少しだけ緩んだ空気をかき消すように、背後から再びガタガタという音が響く。


今度はハッキリ真横の教室の掃除用具入れが揺れているのが見えてしまって、俺の身体は一瞬で凍りついた。



雅臣「掃除用具入れ……」


楓「はぁ?お前目良すぎだろ猫目かよ」


夕太「サッカー部の先輩かな?開けちゃう?」



肝試しの雰囲気をぶち壊すかのように、柊は率先して

教室に踏み込み掃除用具入れに近づく。


俺達は息を殺してその瞬間を見守ったが……



夕太「……何もないけど」



柊が拍子抜けした声を出す。


俺達も柊が掃除用具入れを開ける瞬間を覗き見ていたのだが脅かし役の人も誰もいない。



雅臣「え!?だってガタガタ動いて……痛っ!?」


蘭世「ざけんなよ!!」



俺が叫ぶより早く、梓蘭世に背中を思い切り蹴飛ばされる。


ぜ、絶対に見たはずなのに……。


サッカー部の先輩か誰かが潜んでるとばかり思っていたのに、それならさっき動いたのは何だったんだと焦りが胸に広がる。



梅生「なぁんだ。お化けでもなんでもないじゃん……

そうだ、俺が隠れてくるから脅かしてあげようか?」


夕太「待って!俺も行く」


楓「俺も」



一条先輩がニヤリと笑い廊下へ走り出すと柊も蓮池も

その後を走って追いかけていく。


あまりのスピード感に俺は呆然としていると、突然腕をガシッと掴まれた。




蘭世「置いてったら殺す」




梓蘭世の声は本気で震えていた。



この人を置いてあいつらを追いかける訳にもいかないとため息をつくと、校舎の奥から再び不気味な音が響く。


梓蘭世は爪跡がつくくらい俺の腕を掴むので、俺達の

心臓は高鳴ったままだった。


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