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198.【俺が出ればよかった】



夕太「いぇーい!!!勝ち取ったぜー!!!SSCの発表お楽しみにー!!!」



右手の親指を立てた手を掲げて柊は俺たちの元へ戻ってくる。



楓「ナイス夕太くん、伝説継続だね」


夕太「ジャンケン負け無し伝説は続くってな!!」


雅臣「う、嘘だろ!?」



……じゃ、ジャンケンに負けたことがない!?


やけにジャンケンに対して自信満々だと思っていたが、そんな事有り得るのか!?



夕太「ま、俺ガチで強運だから。本物のラッキーボーイなの」


蘭世「胡散臭ぇな」



俺達の傍でその強運を見せびらかすように腰に手を当てフリフリする柊に梓蘭世が笑っている。


でも梓蘭世の言う通り流石に胡散臭すぎる。



蘭世「お前それほんとかよ、最初はグー、」



疑った梓蘭世が突然ジャンケンを吹っ掛けるも、勝ったのはやはり柊だった。


続いて一条先輩も試してみるが柊の勝ちであまりの勝率に信じないわけにはいかない。


……それなら俺がジャンケンした方が負ける率が高かったってことか!?


部長に任命されずゴネた柊をジャンケンさせることにしたが、これならやる気のある柊を部長にして俺が出れば良かったと本気で後悔する。



「今年は盛り上がんのか?」


「地味な部活ばっかりじゃね?」



バルコニーでギャラリーと化した運動部の声が野次のようにも聞こえるが、俺達みたいな出来たばかりのサークルが文化祭で何を披露するのか全く想像がつかないからだろう。



楓「負け犬の遠吠え」


雅臣「いやいや……運動部の言い分が正しいだろ」


夕太「うるせー!!!こっちにはなぁ!!梓蘭世がいるんだよー!!!」



せっかく勝って権利を得たんだぞと柊がバルコニーに向かって文句を言えばギャラリーの視線が梓蘭世に集中する。



雅臣「ば、馬鹿!!梓先輩の顔は見えないようにするんだろ!?指揮者なんだよ!!」


白鳥「あらー?そうなの?てっきりSSCは彼で集客するんだと思ってたわ?」



慌てて梓蘭世を餌に釣るなと叱るがその言葉に反応した生徒会長を皮切りに、



「蘭世指揮者なのかよー!?」


「意味ねーじゃん」



とバルコニーの運動部が身を乗り出して笑う。



蘭世「活休してんだよ!!指揮で我慢しろ」


「尻だけか拝めんのはー!!」


「顔出し禁止かよー!」


三木「拡散はやめてくれよ」



軽く梓蘭世が弄られ体育館にどっと笑いが起きるが、俺達の傍を通る合唱部は何となく面白くなさそうだった。


……嫌だな。


この間桂樹先輩に怒られたはずなのにまだ不満があるのだろうか。


そっちも無事体育館を勝ち取ったというのになんて顔してるんだと顔を顰めた。



夕太「祝福の歌と作詞作曲した俺らの曲歌うからー!みんなお楽しみにー!」


桂樹「___祝福の歌?」



柊が見に来てくれとギャラリーを煽っていると、桂樹先輩がその肩に手を置いた。



桂樹「お前らも歌うのか?うちも文化祭で祝福の歌歌うんだぞ」


夕太「うん、別にいいよ?別に合唱部以外が歌っちゃダメなルールなんてないでしょ?」



前のめりに聞く桂樹先輩に柊はケロっと答えた。



桂樹「そりゃないけど……ソロとか___」


中田「蘭世!!」



その瞬間桂樹先輩の後ろに控えていた中田さんが飛び出し梓蘭世の前に立つ。


梓蘭世は何だよと片眉を上げるが中田さんは両目をかっと見開き酷く焦っているように見えた。



中田「祝福の歌……ソロは蘭世が歌うのかよ」


蘭世「はぁ?話聞いてなかったのかよ。俺は指揮だって」


中田「と、途中でやっぱり歌うとか___」


蘭世「知らんて!てかどうしたんだよ急に」



切羽詰まった表情の中田さんの肩に梓蘭世が手を置くと、その手を軽く払いそのまま体育館から出て行ってしまった。


中田さんの後ろ姿がやけに印象的で、一体どうしたんだろうと俺も目で追う。



桂樹「……三木、そっちの合宿あとで顔出すわ」



中田さんが気にかかるのか桂樹先輩は三木先輩にそう告げて出ていこうとする。



雅臣「桂樹先輩、物置棟が部室になったんでもし場所が分からなかったら……」


桂樹「連絡する」



桂樹先輩は走って行ってしまい、あんなに騒がしかった体育館も次第に人が帰り始めた。



楓「どっちつかずな野郎だな」


夕太「ジュリオン先輩って何しにSSC来てるんだろね」


雅臣「……あのなぁ、そんな言い方するなよ」



辛辣な2人を窘めるが柊に何でという顔をされてしまった。



雅臣「桂樹先輩は三木先輩とも仲良いし……急に合唱部辞めて心配だったんだろ?それに優しいから__」


夕太「えー、あれで本当に仲良いのかな」



柊の小さな呟きに何を言ってるのかと思うが、蓮池は黙ったまま俺を見ている。


察しのいい蓮池はシラケたような目をしていて、まさか本当に2人は仲がよくないのかと初めて疑った。


だってこの前も自然に軽口を叩いていたし、お互いが言いたいことを言い合ってて……。



白鳥「さー!体育館に決まった部活以外は解散よ!散りなさーい」


椿「体育館に決まった部活は順番決めのくじ引きをするので舞台近くに集まって欲しい」



疑問に思う中、パンパンと手を叩く生徒会長の声でギャラリーは帰り始める。


俺は何とも言えない気持ちのまま指示に従って舞台へ歩き出す。



梅生「藤城、次のくじ引きはどこも部長がやるから前行きな?」


雅臣「え!?あ、はい」


三木「気負わなくてもいいから。何番目でもいいぞ」


夕太「何言ってんだよミルキー先輩、もちオーラス狙いだろ!だって客はどーせ疲れて皆休憩がてら体育館に集まるんだから。雅臣絶対引いてよね」



突然くじを任され動揺する俺の背中を三木先輩が優しく押してくれたというのに、どうして柊はこうも負けず嫌いなんだ。


1番最後の発表で締めくくりに笑われるなんて絶対に嫌だぞ俺は!!


出来るだけ人が少ない時間帯で発表したいが、その時間帯を問う間もなく多様性生徒会長に檀上に登るよう言われる。


慌ただしさと変な緊張に包まれた俺は、桂樹先輩と三木先輩の不仲説はすっかり頭から抜け落ちてしまった。






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