22.【活動内容より…】
蘭世「梓蘭世」
ただ名前を素っ気なく言っただけなのに、自然と皆の視線が梓蘭世に集中する。
その横で一条さんが誇らしげに、
梅生「蘭世は有名人なんだよ」
そう補足するのを見て、いくら友達でもそんな言い方して大丈夫なんだろうかと疑問に思う。
しかし梓蘭世は、俺なんか大した事ないってと一条さんに優しく微笑んでいるだけだった。
俺は見てるだけで睨まれるというのに、納得がいかない。
今の成長した梓蘭世を見て、俺もすぐに本人だと気づかなかったがその名前を日本で知らない人がいない位には超がつく有名人だ。
しかも父親はファッションデザイナーで、母親が玉塚歌劇団伝説のトップ男役スターの梓志保。
これくらいの情報は世間に当たり前に浸透している。大した事ないわけがない。
子役は大成しないという定説は一体どこへ行ったんだろうか。
幼さが抜けた横顔は際立って常人離れしていて怖いくらいだ。
こんなの見ない方がおかしいだろとついまじまじと見つめていたら、その視線に気がついたのか梓蘭世が振り返った。
蘭世「お前何回見てくんだよしつけぇな」
ムッと眉をひそめ睨まれた。
____げ、芸能人は見られるのが仕事だろ!!
少しくらい見たっていいじゃないか!!
別に減るもんじゃあるまいしという俺の心の声が聞こえたのか、梓蘭世が俺に何か言おうとするより早く、
梅生「だから、蘭世がかっこよすぎて見ちゃうんだよ。俺は一条梅生。よろしくお願いします」
一条さんが立ち上がり、ぺこりと頭を下げ割りいってきた。
そのおっとりとした物言いに毒気を抜かれたのか梓蘭世が仕方なさそうに前を向く。
いや確かに梓蘭世がかっこいいに違いはないんだが、そうではないというか……
いつも発言が外れてるんだよなこの人。
首を傾げると教室にパチパチと盛大な拍手の音が響いた。
教卓の前で柊が一条さんに向かって高速で拍手を送っている。
三木「俺は三木春樹。まあ大体知っているとは思うが、ついこの間まで合唱部で部長をやっていた。短い時間だがよろしくな」
続いて三木先輩が最後を締めると、柊はポケットからクシャクシャになった紙を取り出した。
夕太「それじゃあ、次はSSCの活動についてたくさん考えてきたんで説明しますね!まず今週はピザパーティーをします!」
……ピザ?
夕太「2週目はタコパはどうかなと、6月とかにはケーキバイキング!そして課外活動では長島スーパーランド遊園地へ行きます!」
柊が英語の授業中熱心に書いていたのはこれだったのかと気づくと同時に、サークル名がまるで意味を成してない事を怪訝に思う。
梅生「ケーキバイキング!!」
急に目が輝いた一条さんを見てたくさん食べましょうねーと柊はニコニコしているが、今のところSSCのSS要素が全くない。
蘭世「食ってばっかじゃねぇか」
すかさずド正論をかます梓蘭世に、柊はチッチッと舌を鳴らしながら人差し指を振る。
夕太「親交を深めるためですよ!パーティーは必須!」
楓「てかそもそもさ、真剣に活動する必要あるの?バレなきゃいいじゃん」
器用に片眉を上げた蓮池が肩をすくめるのを見て、確かにその通りだと思った。
サークル設立さえしてしまえばどんな活動をしていても問題はないよな。
毎回顧問がついて活動するという訳でもなさそうだし、このまま緩いサークルになるなら願ったり叶ったりではないか?
しかし、そんな都合の良い考えはあっさりと三木先輩に打ち消される。
三木「一応サークルを含め、全ての部活が文化祭で何かしら発表しないといけないぞ」
梅生「そうですね…合唱部も体育館で合唱を披露していたし、運動部だったら体験型ミニゲームをやるところもあったり…」
例年クラス行事よりも盛り上がるよと笑う一条さんに、小さくため息を吐いた。
2人の口ぶりから学園全体が部活動に熱心なんだと知り、今更ながらに第1志望の進学校に合格できなかった自分を恨む。
三木「まぁ申請内容にもよるがな。柊、生徒会から承認されたこの活動内容証明書を皆に配ってくれ」
夕太「小夜先生人数分コピーしといてくれたんだ!助かるー」
俺が担任から受け取った封筒を三木先輩はそのまま柊に渡す。
中から取り出した紙を柊が教壇から降りて1人ずつ配って歩く。
手にしてすぐに目を疑う項目を発見した。
蘭世・楓「「週5!?」」
俺より先に過剰に反応した2人の大声を聞いて見間違いではないことを確信し、再度配られた紙に目を落とす。
【SSC(作詞・作曲・歌っちゃおうサークル)】
活動内容:自分達で作詞作曲をし、歌を歌う
活動日数:週5日
顧問:小夜幸成
なんだこの運動部のような活動日数は!?
蘭世「ふざけんな!何で週1にしとかなかったんだよ!」
無謀な内容に舌打ち混じりにキレる梓蘭世に俺も頷く。
夕太「出られる人だけ出たらいいかなって…あれ、週5で申請したら絶対週5参加なんですか?」
柊が三木先輩に判断を仰ぐが、頼むから絶対参加とかやめてくれよ。
違うと言ってくれと強く願っていると、
楓「それならガチで困る、俺仕事あるし」
蓮池が挙手してそう答えた。
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