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183.【他責思考】




楓「他責すぎん?」


夕太「てかさぁ?普通に考えて嫌われてんじゃね?だからミルキー先輩も蘭世先輩も辞めたんでしょ?」



合唱部の2年の先輩の言葉はいちいち恨みがましく、蓮池と柊にあっけらかんと指摘されるがそう言われても仕方のないものだった。


他責とはよく言ったもので俺の時もそうだったが蓮池の人を見る目には脱帽せざるを得ない。


それを聞いた合唱部は腹立たしいのかまたこちらを睨みつけているし、このまま蓮池がキツい事を言えば喧嘩になるのは間違いないが、



蘭世「どうでもいいよ」



自分のことを言われているのに首を鳴らしてダルそうな梓蘭世の一言で2人は顔を見合せて大人しく肩を竦めた。


合唱部の奴らがその姿を見て更に苛立つのが分かったが、俺の方がだんだんと腹立たしくなる。


大体練習に参加するのも部活を辞めるのも本人が決めることなのに、大会が終わってから止めればいいだなんていくら何でも身勝手すぎる。



雅臣「大会で負けた事を2人のせいにしないでください!!!」



大きなお世話かもしれないが言わずにはいられなかった。


合唱大会を優勝した学校も準優勝の学校もどちらも素晴らしく、大会なんて指揮者とソロの実力だけで勝てるものではないのに何故それが分からないのか。


いかにこの合唱部が三木先輩と梓蘭世の力に頼っていたかがよく分かって、これが梓蘭世の感じていた〝いらない事まで背負わされる〟という事かと痛感した。



雅臣「三木先輩や梓蘭世がいるだけで大会に勝てるわけがないだろ!!負けたのはお前らの努力不足じゃないか!!」



突き飛ばした相手を見ながら俺も本音を言うが、ついにキレたのかその拳が振りかざされ殴られるのを覚悟する。


桂樹先輩が率いる合唱部だというのにどうしてこんな考えになったのかがまるで分からない。


プールで梓蘭世が〝いらない欲をかいた〟と言ったのは正にその通りで、現実を冷静に見ることの出来ない合唱部をそっくりそのまま表す言葉だった。


主力の先輩が卒業した後、ずっとこの甘い考え方でいたのなら大会を勝ち抜くことなんて出来るはずも無い。


現に負けたのもそのせいじゃないかと睨みつけると、蓮池と柊は殴られないよう庇ってくれる気なのか俺の前に飛び出してきた。



楓「惨敗しといて恥ずかしい奴らだなぁ!!全部人のせいできるなんて才能だよ、他責のプロ!」


夕太「ねぇ雅臣こういうの何て言うんだっけ?人の褌被って踊り狂うみたいに言うよね」


楓「夕太くん突然何言ってんのさ、三木先輩も梓先輩もボクサーだろ」


雅臣「ばっ……馬鹿!!それを言うなら〝人の褌で相撲を取る〟だ!!お前ら加勢するならちゃんと加勢してくれよ!!」



火に油を注ぐだけというかこの2人のせいでまたも論点がズレていく。


結局いつも何の話をしていたのかがさっぱり分からなくなるのは確実に2人のせいだと再確認した。


蓮池が馬鹿すぎて呆れたのか拳を上げていた2年はそらそろと手を下ろし、他の合唱部員も争う気が逸れたのか眉根を寄せているだけだ。



蘭世「バッカ……パンツの話じゃねぇわ!でんてめぇ中間で俺が教えた諺全部忘れてんのかよ!!」


楓「え、教えて貰ってませんよ」


蘭世「後で殴る、ぜってぇ殴る」



梓蘭世はツボにハマったのか怒ってるんだか笑ってるんだかよく分からない顔をしている。


その隣の一条先輩もこの状況を韓ドラとでも思っているのかハラハラしながらどう収集つけるのかを見守っている。


そして三木先輩はただ笑って優しい眼差しで俺達を見つめてるだけだった。



……それにしても蓮池は何でこんなに頭が悪いんだ。



来学期のテストはその空っぽの頭に殴ってでも叩き込んでやると変な闘志が湧いてくるが、



雅臣「要するに!!合唱部は梓蘭世と三木先輩の力を借りて簡単に勝とうしていたってことだよ!!」



息も荒く簡潔に纏めてやったが、またも体育館に変な静寂が訪れてしまう。


………。


…………まぁ、いい。


物凄く嫌味な言い方になった自覚はあるが、でも要するにそういうことなのだ。


このくらい嫌味たらしく言えばもう合唱部とて変な言いがかりはつけてこれないだろうとチラと見れば全員が気まずそうに顔を逸らした。



楓「はぁ?その2人がいるだけで勝てるわけないじゃん」


夕太「そうだね、合唱って皆でやるもんだしね。逆に蘭世先輩がしゃしゃってソロ歌ったら全体の下手さがが際立つし採点引かれるよ」


楓「要は調和だろ?次の生け花のタイトル調和にしよかな」



追い討ちのように蓮池と柊が声を上げるが、俺はそこまで言ってない。


ペラペラと捲したてる2人を止める為に口元を押さえようとすると、蓮池に脛を思い切り蹴られてしまって痛すぎて座り込んでしまう。



雅臣「と、……とにかく、三木先輩と梓先輩は合唱部とはもう関係のない人ですから!うちの部員に余計なこと言わないでください」



痛みを堪えながらも言いたいことは全て言いつくした。


後はもう合唱部の人達が考えを改めることだとヨロヨロと立ち上がって、蓮池と柊の2人に大人しく三木先輩の元へ行くよう促す。



梅生「……あ」



突然ずっと黙っていた一条先輩の小さな呟きが聞こえ、その視線の先を見ると、



桂樹「いつまで片付けしてんだよ」


ガク「席取ってんだから……って……」



桂樹先輩とその友達の短髪の先輩、そして合唱部の3年がゾロゾロと後ろの扉から体育館を覗きに来た。



雅臣「桂樹先輩!!」



いつまでも体育館から戻ってこない後輩達に焦れて迎えに来たのだろう。


このまま引き取って貰おうと俺は合唱部より早く桂樹先輩に声を掛けて駆け寄った。



読んでいただきありがとうございます。

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