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181.【臨戦状態】




俺達が部室で寝ている間に三木先輩から先に体育館で待ってるとグループチャットへ連絡が入っていた。


勿論合わせ練習の為の体育館の申請もしておいてくれたようで、正直に俺達が寝ていた事をチャットで伝えると、三木先輩は慌てずに来いとだけ言ってくれて怒られることも無かった。



夕太「まじで爆睡、ガチ寝」


楓「あんなマットレスだったのにな」


蘭世「てか三木さんマジで寝てないんかな」


梅生「三木先輩体力おばけだもんな」


雅臣「いいから急いでくださいよ!」



寛大な三木先輩をできるだけ待たせないよう俺は先頭で急かして誘導するが、皆はのんびり着いてくるだけだ。


三木先輩が待ってるのに何でこんなに呑気なんだ……。


着いたらすぐに謝らないとと焦りながら開きっぱなしの体育館後ろの扉から入ろうとすると、




「負けた俺らの冷やかしにでも来たんですか?」




突然、中から知らない誰かの声が聞こえてきて俺は慌てて足を止めた。


そっと覗くとポロシャツの襟に群青ラインが入った2年生と朱色の1年生が10数人見えるが、どこかの部活がさっきまで体育館を使用していたのだろうか。


そして何故か三木先輩はその人達と対面していて、何となく揉めているように見える。



夕太「ちょ、雅臣早く入れよ」


楓「おいデブつかえとんなよ」


夕太「デブはでんちゃんだよ」


雅臣「ま、待ってくれ、中で揉めてるみたいで……」



後ろから2人が背中をぐいぐい押してくるが、今中に入れるタイミングではない気がして手で制止する。


三木先輩は俺達に背を向けているからか、後ろから来ていることに気づいてないようだ。



三木「……何の話だ?俺は13時からここでサークルの練習に来ただけだが」


「あー、あのお遊びサークルの?いいですね、部長の責任放棄した人は楽に生きれて」



………。



…………は?



酷い言い草に俺達の三木先輩に何を言うんだと俺がカチンときてしまった。


同時に部長という言葉から難癖をつけている相手は合唱部の部員なのかと疑う。



蘭世「おい、はよ行けよ」


楓「あんたは細いんだから隙間をすり抜ければいいじゃないですか……あ、何ですか?俺がデブだからその隙間もないって言いたいんですか?」


蘭世「うるせぇな!んな事言ってねぇだろ!」


梅生「全員邪魔って事だよ。ほら早く入れって」



後ろからゆっくり来た2年の2人は足止めする俺を気にすることなく押し退けて体育館の中に入ってしまう。


この騒がしいやり取りに合唱部全員と三木先輩が気づいたようで、その視線がこちらへ集中した。



蘭世「……あ?何しとんのお前ら」


梅生「あれ?合唱部?」



2年生の反応を見ながらこの人達はやっぱり合唱部のメンバーだと確信するが、それなら何故三木先輩に言いがかりをつけているのか。


眉根を寄せて眺めていると先程から異様に強気な合唱部の2年生は肩を竦めた。



「良かったですね三木先輩、お仲間が来ましたよ?……そうやって一生楽して責任放棄してろよ」



そいつの言葉に合唱部員全員が三木先輩を見て含み笑いを浮かべている。



……な、何なんだこいつらは!!



あまりの態度の悪さに頭に来た俺はその2年の肩を強く掴んで引き止めると、



雅臣「さっきから何だよ!?大会で負けたからって三木先輩に八つ当たりするなよ!!」



怒りに任せて激しく怒鳴ってしまった。


こんな風に腹から大声を出して怒ったことなんて今までに1度も無く、2年は驚いた顔をしているが怒りが抑えきれない。



雅臣「それに三木先輩は責任放棄なんてしてないぞ!!正式に退部したじゃないか!!」



どう見てもこの人達は三木先輩に難癖をつけているだけにしか思えなくて腹に力を込めて再び叫んだ。


理不尽に当たり散らかされたらたまったもんじゃないと目の前の2年を睨みつける。



「な、何だよお前___!!」


雅臣「謝れよ!!!」



俺の勢いに呑まれた2年は一瞬だけ引くが直ぐに怒りを顕に俺の手を跳ね除けた。


余程気に食わなかったのか今にも殴りかからんばかりにポロシャツの襟をぐいと引き上げられるが、絶対引かないぞと胸を張って応戦する。



夕太「雅臣ってば短気だなー……」



しかしこの緊縛した状況をものともしない柊が横から上目遣いでひょこっと顔を覗かせ俺と2年生との間に割り込んできた。



夕太「なーんかでんちゃんに似てきたんじゃない?」



そして不自然なほど明るい声を上げたかと思うと、突然柊は俺の襟を掴む2年生の腕を音が鳴るほど思い切り叩く。



楓「やめてよ夕太くん。俺ならあんな生ぬるい言い方はしないよ」



唖然とする2年生と俺の間に何故か蓮池まで無理やり割り込んできて、俺を庇うように立つ2人の背中に何だか守られてる気分になった。



「何だよお前ら!?」


「1年のくせにイキってんなよ!」



しかしそんな悠長なことを考えている暇は無い。


一触即発の雰囲気を感じて加勢しようと集まってきた合唱部の奴らを蓮池は上から下まで品定めするように眺めるが嫌な予感しかしなかった。



雅臣「は、蓮池、少し落ち着け」


楓「あ?落ち着くのはお前だろうが、興奮しとんなよ」



は、蓮池の左口角が上がってる……!?


俺に文句を言いながらも蓮池の左口角が最大限に上がっているのを見て、今までの経験から1人青ざめた。


どうもこれは俺を守るためだとか助けるためだとかそんな雰囲気ではない気がする。


蓮池の目はギラギラと好戦的で、このままいくと多分最初の標的は目の前にいる合唱部の2年生だ。


的確に人を傷付ける言葉を熟知している蓮池が何を言い出すか分からず、部長としてこれ以上大事にならないよう何とか止めねばと思う。


しかもこの2年生よりも蓮池の方が背がかなり高く、その背中が異様に頼もしく……じゃない、恐ろしく見えて冷や汗が止まらない。


俺は三木先輩が変な言いがかりをつけられているのが耐えられなかっただけで、大事にしたいわけではないんだ。



雅臣「や、止めるんだ蓮池……」


楓「陰キャが随分調子こいとんな」


雅臣「え?あ、あぁ、すまない」



しかしどうやら標的はすぐに俺に変わり、良かったも胸を撫で下ろす。


いくら向こうから言いがかりをつけてきたとはいえ、合唱部と揉めるだなんて桂樹先輩を板挟みにすることになる。


そうなるくらいならいつも通りお前の気が済むまで俺を思う存分にディスってくれと次の言葉を待ち構えた。







読んでいただきありがとうございます。

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