172.【サークルらしい活動】
蓮池の華展に合唱大会、そこからどうも勉強の予定が狂いに狂ってしまっている。
ゲームにパン作り、韓ドラからショッピングまで遊び呆けている自覚があってさすがにこのままでは不味いと気がついた。
ここ数日は真面目に宿題をやっつけ苦手な箇所をさらっていたが、8月に入ってからもう5日も経っていて、楽しすぎると1日があっという間に流れていくのを痛感した。
雅臣「それにしても名古屋は何でこんなに暑いんだ……」
この炎天下の中、久しぶりに制服を身にまとい外に出たはいいが三ツ池公園の前を通り過ぎる頃には汗が凄い。
大須に皆で買い物に行った日の夜SSCのグループチャットが久しぶりに動いて、合宿前に集まる日程が今日に決まったのだ。
全員が集まれる日は5日の今日しかなくて、しかも桂樹先輩だけは見ていないのか既読は5のままだった。
雅臣「……あ」
何か変だと思ったら二階堂さんのところで貰ったネックレスをつけっぱなしで学校に来てしまった。
見つからないように慌ててポロシャツの前ボタンをきっちり閉める。
鏡に映る自分を見る度に楽しい思い出が蘇るのが嬉しくて、あれから俺は風呂と寝る時以外ほとんどこのネックレスを付けている。
つけているだけで自然と笑顔になれるのを利用して、これ以上柊にとび森のクロヒョウに似てると言われないといいなという願いも入っているのは秘密だ。
そのまま少し坂を下って学校に到着したものの普段なら開いている門が夏休みのせいかきちんと閉じられている。
守衛さんに確認して自分で開けてから部室へ向かうが、締め切ったままの部室を換気して少し掃除しないと……と考えていると、
夕太「ぎゃー!!!蘭世先輩ギブ!!!ギブ!!!」
蘭世「クソガキがよ!!!」
部室の扉を開けた瞬間、どういうことか梓蘭世が柊を抱えあげてぶん回していたのが見えた。
相変わらずのうるささに、やはりここの部室は少し離れた場所にあって正解だとしみじみ思う。
三木「藤城来たか。これで揃ったな」
雅臣「すみません、遅かったですよね」
梅生「まだ10分前だし大丈夫。ほら蘭世離してあげな?」
一条先輩の言葉に梓蘭世は仕方ねぇなと舌打ちしてその手を離すが柊は目が回ったのかヨタヨタと歩いている。
可哀想に柊は壁やらゲーミングチェアにぶつかりなが倒れる直前で、俺は慌ててぶつかって来た柊を支えてやった。
雅臣「な、何したんだよ……」
夕太「ちょっと……俺が……強いからってさ……」
楓「夕太くんが接待もせず勝っちゃうからだよ」
呆れ顔の蓮池に、聞けばどうやら梓蘭世との対戦ゲームで柊が勝ってばかりいるらしい。
何て理不尽な……と思うが、梓蘭世にそういう大人げないところがあるのは今更なのでどうしようもない。
落ち着かせるよう椅子に座らせ、バニララテでも飲ませてやるかと振り向けば既にマシンと格闘する一条先輩がいた。
とりあえず俺が全員分の飲み物を準備することから久しぶりのサークルを始めることにした。
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カフェの如く俺が1人ずつ注文を聞いて作ったものを各々がゲーミングチェアや椅子に腰かけて飲んでいる。
その姿を見るともうSSCではなくただのカフェサークルに改名した方がいいのではないかと思うが、俺の持ってきたコーヒーマシンは大活躍していた。
梓蘭世がミニ冷蔵庫まで部室に運び入れていたので飲み物やちょっとしたデザートくらいなら冷やしておけるのでいたせり尽くせりだ。
皆が美味しいと褒めてくれるのが嬉しくて、キャラメルラテ以外にもバニラフレーバーや抹茶ラテまで作れるようマシンに入れるカプセルを新調して持ってきて良かったと微笑んだ。
そんな中で三木先輩はアイスコーヒーを飲みながら立ち上がってホワイトボードにペンを走らせると、
・衣装
・作詞作曲、練習
・合宿内容
と3点分かりやすく今日の議題を書き出した。
三木「___さて、何から話す?」
蘭世「合宿じゃね?そもそもいつよ、2泊3日?」
合宿について話し合いをするはずが結局期末テスト前に流れてしまい、まだ日程すら決めていなかった。
もう8月だというのに今から申請して間に合うのだろうか?
夕太「合宿は8月20日の出校日から2泊3日を予定してます!ほとんどの部活がそこで集まるって生徒会長から聞いたから一応同じ日に申請しといたよ」
合宿希望の部活は全員が集まる出校日から始めることが多いらしく、鈍い俺の代わりに柊が予め期末テスト終わりに申請をしてくれたとのことだった。
雅臣「柊、いつもありがとうな」
夕太「もっと言って」
雅臣「柊がいないとSSCは成り立たないよ。それに申請も任せきりで……俺は部長なのに……」
夕太「俺が副部長だから大丈夫!縁の下の力持ち!」
落ち込みかける俺にふん、と腕を曲げて全く浮かばない力こぶを見せてくるがいつから柊が副部長になったのか。
柊はアイスバニララテをストローで一気飲みして満足気に笑っているので、まぁいいかとそのままにしておいた。
三木「申請の取り下げが3年の進路相談会がある8月12日までだろ?」
夕太「そうです!だからもし皆が大丈夫だったらそのまま取り下げせず通るんだけど、日程どうですか?」
各々が早速予定表やスマホを確認しているが、正直俺には本当に何も予定など無いため全く問題はない。
1番確認しないといけないのは仕事がある人達で……。
蘭世「おー…ナイス、その日何もない」
楓「俺もですね。むしろその日程だと助かる」
梅生「俺はいつでも暇だから大丈夫」
苦笑気味の一条先輩に分かりますよと頷くと蓮池に机の下から足で蹴られた。
多分お前と一緒にすんなという意味合いなのだろうけど、本当に同じなんだから頷くくらい別にいいじゃないかとジト目で睨む。
三木「それなら合宿は8月20日から2泊3日…っと。このまま合宿でやらないといけない事決めるぞ」
梅生「作詞作曲して、練習もしないとですよね?皆どのくらい出来てるの?」
この前のイタリアンランチに一条先輩はいなかった為俺達1年生は柊が全部作詞作曲してくれたことを教える。
……実は柊からはもうその曲が送られてきている。
しかし、それはノリのいい……ひたすらにノリのいい曲としか感想は出なかった。
俺には少し理解出来ないというのが本音だが、自分が作詞作曲出来るはずもないので学生が盛り上がるのはこういう歌なんだろうと無理やり自分を納得させた。
蘭世「1年はもう出来てて…俺らはあと歌詞つけるだけだから最低合宿で1回は合同練習できるよな」
梅生「3年はどこまで出来たの?」
蘭世「聞く?この人桂樹さんに丸投げ」
呆れ顔の梓蘭世から3年の実情を聞いた一条先輩は苦笑した。
三木「じゃあ出校日自体は昼までだから……そうだな、昼飯食ってジャンケン大会、15時から1度体育館を借りて練習してみようか」
楓「ですね。40分を目処に祝福の歌から俺ら1年の歌、2年は曲だけピアノで弾いてみて…3年はどうするのか知りませんけど」
雅臣「ま、待て待て、何で体育館前提なんだよ」
蘭世「てかジャンケン大会って例年通り出校日なんだ」
……な、なぜ皆こうも体育館でやりたがるのか!?
まだジャンケン大会もしていないのにいきなり体育館なんて広い場所で練習する意味なんで無いはずだ。
慌てて蓮池を止めたのに誰もそこを気にしないのかそのまま話が進んでいってしまい、一旦我慢してこのまま皆の意見を聞くしかないと言葉を飲み込んだ。
三木「例年通り出校日だが、もし本当にジャンケン大会に勝って体育館の使用権を得てもその場ですぐ練習日の申請が通るわけではない」
蘭世「ならどっちにせよ体育館を練習で使うって先に申請出しておいた方がいいな」
梅生「負けてもその場で別の部に練習日を譲ればいいもんな」
___な、なるほど。
もし本当にジャンケン大会で勝ち残った場合、体育館での練習は合宿中にやった方がいいもんな。
別の場所……例えば空き教室とかなら9月になっても練習は出来るけれど、体育館だと回数が限られてくるから合宿の日が1番いい気がする。
……いや、もちろん恥ずかしいので勝ってもらっては困るのだが。
夕太「じゃあ合宿初日はジャンケン大会と体育館での練習、で夜はもうちょい練習して出来てなかった作詞作曲を進めれば完璧じゃない!?」
こうして合宿1日目の予定がトントン拍子で決まり、SSC設立4ヶ月目にしてようやくきちんとサークルらしい活動が出来た。
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