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116.【2人でいる理由】




蓮池にお姉さんがいたなんて。


だが、〝いた〟ということは今は……。



夕太「雅臣が考えてる通りだよ、今はいない」



余程顔に出ていたのか柊に苦笑される。


どうしてかと聞きたいが深刻な事情かもしれないと口を噤むと、



夕太「あ、ちなみに死んでないよ」



相変わらず容赦ない答え方をする柊にずっこけそうになるが、変に構えていたので今回こそ早めに教えてくれて助かった。



夕太「世間では駆け落ちって言われてるんだけどさー、うちの姉ちゃん達に言わせれば自分の実力を試したくて外に出ただけだよ」



柊と蓮池のように、きっと姉同士も幼馴染で仲が良かったのだろう。


友達としてお互いの悩みだったり色々な思いを知っていたのかもしれないな。



雅臣「柊と蓮池はいつから一緒なんだっけ」


夕太「生まれた時からだよ」


雅臣「それは凄いな……本当に仲が良いんだな」



生まれた時から一緒とはいえ本当に合わなかったらどこかで離れるだろうと、2人の関係の長さに改めて驚かされる。



夕太「家も隣同士でさぁ」


雅臣「あれ?蓮池の家って覚王山じゃないのか?」



俺の疑問に柊が詳しく説明してくれる。


聞くと蓮池の自宅は元々瀬戸で幼少期は稽古場も兼ねてそちらで暮らしていたが、途中家族で便利な伏見のマンションを住処とするべく引越したらしい。


現在瀬戸の家は覚王山と同じく稽古場として使い、学校から近いという理由だけで蓮池1人覚王山で生活しているということだった。


名古屋の一等地にある広い屋敷をただの稽古場として利用できるなんて、蓮池流は随分景気がいいと圧倒される。



雅臣「え、それならあの弁当や食事は?」


夕太「でんちゃんのおばさんが毎朝届けて夕ご飯まで作って置いてくんだよ」



何故その方法を取っているのかは分からないが、2人で顔を見合せ1番のボンボンはあいつだと大笑いした。


段々こいつらと過ごす時間が増えてるとはいえ今日みたいにゆっくり話すのは初めてで、この機会に柊の色んな話を聞いてみたいと思った。



雅臣「柊は蓮池と映画行ったりしないのか?」


夕太「うん、行ったことないよ」


雅臣「じゃあ2人ならどこに行くのが定番なんだ?」


夕太「んー、そもそもあんま遊び行かないかも。でんちゃんあー見えて真剣に華やってるし…俺は横でゲームしたり?」



それもそうか……。


確かに蓮池は毎日忙しそうで初めはサボりに思えた遅刻も実際本当に仕事の時もあり、学校終わりは確実に稽古でサークルに参加出来ない時だってある。


小さな頃から稽古の邪魔をしないよう柊なりに気を使って傍にいたのかもしれないと思うと、幼馴染とはいえどこかへ頻繁に遊びに行くことも出来なかったのだろう。



夕太「あ!ゲームで思い出したけど雅臣家具とか好きなの?」



柊はぽんと手を打ち今度は自分の番だと俺に質問をしてきた。



雅臣「あぁ、親父の影響だけどインテリア好きなんだ」


夕太「じゃあじゃあ!〝とびちれどうぶつの森〟絶対好きだよ!」



普段全くゲームをしない俺はタイトルを聞いただけでは想像がつかず、直ぐにスマホで検索をかけてみる。



雅臣「これか?とび森ってやつ」


夕太「そうそう!雅臣に似たキャラがいてゲーセンでぬいぐるみ取ったから後で渡すね!」



画面を見せるとこれが雅臣に似たキャラだよと柊は教えてくれた。


それが似てるかどうかは分からないが、柊が俺を思ってわざわざ取ってくれた事が嬉しい。


内容としては村や島を開拓してそこで入手した素材で家具を作ったりアイテムを増やし、自分なりにレイアウトを楽しめるというものだ。


ゲームと言えばRPGや格闘くらいしか思いつかなかった俺だがこれならシンプルだし楽しめそうだ。



雅臣「へぇー…やってみようかな」


夕太「俺とでんちゃんはこれ本当に向いてなくて誰がやるんだって思ってたけど、雅臣みたいな奴がやるんだな。ハマりそう」



ようやく理解出来たと笑う柊に、確かに2人には何となく格闘ゲームの方が合ってる気がした。



雅臣「テレビに接続してできるのか?ゲーム機さえあればいいんだよな?」


夕太「そう!俺も1台あるから、雅臣のをこのテレビで繋いだら俺と通信もできるよ!」


雅臣「それは楽しそうだな、買おう」



すぐにカートにゲーム機を入れて購入してしまえば、柊はあまりの即決具合に驚いたのか目を何度も瞬いている。



雅臣「柊、また俺の家来てくれよ。接続したら一緒にやらないか?それから蓮池も呼ぼう」



そう提案すると柊は急に吹き出した。



夕太「……やっぱり雅臣って良い奴だね」


雅臣「は?」


夕太「また来てだなんてさ、……大抵の奴は俺らから離れるよ」



笑った笑った、と立ち上がってソファに座る俺の前に立つ柊の言葉の意味が全く分からず見つめ返した。



夕太「家庭環境おかしいもん」



俺をじっと見つめる柊の目に深く隠された感情が垣間見える。


自分の家がおかしい自覚は柊にだってあるんだ。



夕太「でんちゃんあんなにお稽古頑張ってても色んな噂が後を絶たないし、俺も変な家庭環境で……どっちも変なんだよ」



きっと2人は他人からの謂れのない言葉にずっと傷ついてきたんだろう。


確かに傍から見れば変かもしれないが、俺の家も十分すぎるくらい変なので何かを言える立場ではない。



夕太「それなのに雅臣はいつも俺達を受け入れてくれる」




_____そうか。


柊も蓮池も中身をきちんと理解されるまで一緒にいた奴が今までにいないんだ。


多分2人がどんな奴なのかを知る前に、色んな噂から上辺だけで判断して離れていく。


ある種孤立した環境でずっと身を寄せ合うように2人だけでいたんだろう。


柊のわがままで子供っぽい反面どこか達観しているのはワールドワイドすぎる環境で育ったからで、嫌な奴なんかじゃない。


蓮池だって口も態度も悪いけどそれは家業からくるストレスなだけで本当は……そこまで悪い奴じゃない。


俺は2人をもっと知りたいと思ったからそれぞれの良さも分かるけど、現実は皆が皆そんな奴ばかりじゃない。


共に傷ついてきたからこそ他人の冷たさをよく知っているのだろう。



雅臣「………良い奴なのは柊だろ?」



俺が今から言うことを信じて欲しいと、初めての友達を慰めたくなった。




読んでいただきありがとうございます。

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活動報告にキャラクターイラスト・プロフィールも掲載していますのでぜひご覧下さいね♪♪

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