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111.【そこまで言うほど】




柊は俯いたままで何も言わずにいるが、こうなったら先輩達の体重も参考程度に聞いてみるか。


その方が柊も納得しやすいだろうと、俺より少し背の高い三木先輩に声を掛ける。



雅臣「三木先輩って何kgですか?」


三木「俺か?今朝は65.4kg、体脂肪率は8%だったな」



いらない情報までくれたがさすがスレンダー巨乳を求めるだけある。


よく見ればポロシャツから覗く二の腕の筋肉が凄く、三木先輩は俺より全体的にガッシリしている。



蘭世「三木さん筋トレしてるしなー」


三木「少し落とすくらいなら有酸素運動がいいぞ」


楓「嫌ですよ運動嫌いですし」



自然と運動の話になり三木先輩が鍛え方をレクチャーしているが、いつも元気な柊はずっと黙っていてつまらなさそうに俯いたままだった。



雅臣「な?別に蓮池は太ってないだろ?だからもうそんなこと言うなよ」


夕太「でも………」



部室の空気がわがままを言わせない雰囲気になっているが、




夕太「でんちゃんは………」




柊は唇を震わせながら小声でそう言うと、上目遣いで蓮池をチラと見る。


それに気がついた蓮池は先程まで調子よく話していたのに急に口を閉じて気まずそうに目を逸らしてしまった。



………何だ?



幼馴染を甘やかしたいのか知らないが、俺に言い返す時の饒舌さは一体どこへいったんだ。


蓮池は何も言わないので、つい俺がまた口出ししてしまう。



雅臣「それなら柊、お前楽しいといつも俺にぶつかってくるだろ?あれ結構痛いしなんならお前の方がぽっちゃりじゃ___」


夕太「はぁ!?」



自分が言われるなんて思っていなかったのか、納得いかない顔の柊は俺の方に向かってズカズカ歩くと、



夕太「俺のどこがデブなのさ!!」



目の前で頬を膨らませ腕を組みふんぞり返るが、皆呆れ顔でその様子を見ている。


いくら柊が小柄とはいえ子供と違ってちゃんと男子高生の骨格なわけで、ぶつかってくる度に骨が当たる事実をそのまま告げただけなのに柊は心外だと怒り狂っている。



雅臣「…だろ?自分が言われて嫌なことはやめた方がいい」



そう優しく咎めると柊はぽかんと口を開いて俺を見た。


そのまま再び俯いてしまうが、自分は怒るくせに蓮池には言いたい放題だなんて随分都合が良すぎると分かってくれたのだろうか。



蘭世「おー……!?とっと強くなったな、やるじゃん」


梅生「いやていうか誰も太ってないと思うよ」



一部始終を見ていた2年生が突っ込みを入れ、一条先輩は自分の腹を見つめると薄笑いを浮かべた。



梅生「俺なんて身長の割に体重あるしすぐ体につくし…」



まぁ、貴方はあれだけ甘いものを食べていますからねと言いたくなるのを何とか堪える。


顕著に体につくのか腹に手をやりながら静かにため息をつく一条先輩に、そんなことないですよと無理やりフォローを入れるが全く響いていない。



梅生「気遣わなくていいよ藤城。蓮池の体型で太ってるになるなら俺も……プールまでに絞ろうかなぁ」


蘭世「梅ちゃんなんか太ってるうちに入らんって」



真剣に右腕で力こぶを作る一条先輩に全然標準だと笑う梓蘭世はギロと睨まれている。


分かりますよ、一条先輩。


52kgの梓蘭世に標準を語られても何も心に響かないですよねとつい俺まで虚無な目になってしまった。



梅生「何それ嫌味?もっと罪悪感持って食べた方がいいってこと?」


蘭世「い、いや……」



珍しくムカついたのか恐ろしく冷たい声を出す一条先輩にようやく気がついた梓蘭世が焦り出す。



楓「あ、食べはするんですね」


梅生「食べるさ、唐揚げ辞めてもプリンは食べるよ」



蓮池の突っ込みにも負けず目を光らせ揺るぎない意志の一条先輩に思わず笑ってしまった。


この人は死ぬまで甘いものを食べてそうだと思うくらい、本気の甘党だと改めて思い知る。



蘭世「…昼に俺がプリンやめろって言ったのまだ根に持ってるな」


雅臣「え、先輩そんなこと言ったんですか!?」


楓「モラじゃん、友達にモラなら将来は……」



蓮池は目を瞑って手を合わせるが、こればかりは賛同だ。


親友がデザート代わりにプリンを食べるのを反対したなんて目を丸くしてしまう。



蘭世「モラじゃねぇよ!!俺は梅ちゃんの為を思って__」


梅生「…そっか、これがモラなんだな。この年でモラハラを受けるとは思わなかったよ」


蘭世「いやまじで!俺は心配して…って!!笑ってんなよお前ら!」



2年のやり取りを見て吹き出す俺らと違って、柊は未だ俯いたままだ。


しばらくしてようやく顔を上げだと思えば、



夕太「お、俺は……別に本気で言ってないし、だって…だって、でんちゃんが全然怒んないから……」



意味の分からないことを呟きそのまま教室を飛び出して行ってしまう。


驚いた蓮池が慌てて柊を追いかけようと立ち上がるが、梓蘭世がその腕を掴んで止め無理やりもう1度座らせた。



蘭世「ほっとけよ。あいつほんと…気ぃ引きたいガキかっての」



あんたが言うなとは思うが、蓮池はまだ追いかけるかどうか迷った様子で開いたドアを見つめたまま動けないでいる。


正直柊のことだから軽く拗ねるくらいだと思っていたのに、あんなこと言わなければ良かったのかと俺まで困惑してしまう。


柊は蓮池が怒らないからって言っていたが、じゃあ今まで揶揄っていたのではなくワザと体型のことを言っていたのか?


どれだけ思い返してみても話の意味や繋がりが全く見えず、梓蘭世の言うように気を引きたがっているだけにはとても思えなかった。


柊は存在がうるさいというか……とにかく明るくていつでも皆の注目の的で、気を引くだなんてそんな事する必要がない。


俺はいくら考えても全く理解出来なかった。



雅臣「本気で言ってないなら…何であんなこと……」



蓮池に目を向けると先程までの笑顔も消え失せ黙ったままだ。



梅生「口癖みたいなものなんじゃない?三木先輩の巨乳と同じでさ」


三木「一条、ただの巨乳じゃない。スレンダーな巨乳だ」



一条先輩が何とかこの場を取り繕おうとしているのに、いつもの三木先輩の持論に重い空気が呆れに変わった。



___考えても真相は柊にしか分からないか。



暗い顔のまま蓮池は再びペンを握って机に向かうので、俺も手伝えることをしようと教科書を開いた。


結局この日は柊を追いかけることなく、残りのメンバーで蓮池の補講を防ぐために尽力して終わってしまった。



読んでいただきありがとうございます。

ブクマや評価していだだけて本当に嬉しいです!

いただけると書き続ける励みになるので、ぜひよろしくお願いいたします♪♪


GWは2話更新♬

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