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102.【生徒会でティータイム】




「やっぱり夕太か。外まで声聞こえてたよ」



拗ねた柊が生徒会室を出ようとした瞬間、入ってきた人も生徒会の一員だと直ぐに理解できた。


ポロシャツの襟に金バッジを確認し、ラインが緑なのを見て高3だと分かる。


生徒会にしては珍しく普通の黒髪で、少し重めマッシュのハスキーな声の持ち主に少しだけほっとした。


山王に染めてる人が多い…というか、俺の周りに染めてる人が集まりすぎていて黒髪というだけで安心感と親近感を感じる。


全体的に柔らかい雰囲気で1番普通そうに思えるが、この人が目の前の三つ編み多様性と眼帯カラーグラスと渡り合えるレベルなんだろうか。


いやそもそも生徒会って何人いるんだ?そんなどうでもいいことを考えていると、



「椿ちょうど良かったわ。チビちゃんに渡してあげて」


楓「おい、さっきからチビってなんだよ」



蓮池が会長の言葉に必要以上に反応するのを俺はすぐに手で制止した。



雅臣「…蓮池落ち着けって、あの人から見たら誰だろうと等しく小さいだろ」



確かに柊は小柄だが幼馴染を侮辱された気がしたのか腹を立て今にも飛びかかりそうな蓮池を落ち着かせる。


生徒会長は蓮池と並んでも優に大きくとにかくガタイがいい、この人から見たら俺らとて小さいだろう。


俺の言葉に納得したのか蓮池は舌打ちしてふいと顔を背けた。



椿「あれ?お茶飲んでいかないの?今日は夕太の好きなクッキーとフィナンシェ焼いたんだけど」



椿と呼ばれる男は鞄から焼き菓子の入った大きめのジップロックを取り出し、帰ろうとしていた柊に手渡す。



椿「紅茶飲むでしょ?入れるからいつもみたいに準備しておいて」



帰る素振りを見せていたのに柊は急に身を翻し、やけに慣れた手つきで奥に備えられたキャビネットに向かい皿を取り出す。


そして椿さんが微笑み袋を開けた瞬間、部屋に漂う甘いバターの香りでピンと来た。


いつだったか柊が物凄く甘い香りを纏って口にべったりチョコレートをつけてきたことがあったよな。


もしかしてここで餌付けされていた…とか。


それに俺に着いてきたのも____。



楓「はぁ!?夕太くんここで毎回お菓子食ってたのかよ!」


夕太「でんちゃんのデブ!目敏いんだよ!」



俺が予想すると同時に、大食らいの蓮池が察知して2人の言い争いが始まったがあまりに意地汚い。


それは俺が部長か否かのやり取りよりも遥かに酷く、しかもここは教室でも何でもなく一応格式高い生徒会室だというのによくこんなどうでもいい喧嘩ができると呆れてしまう。



雅臣「辞めろって!!外でやってこい!!」



2人まとめて扉の外に追い出そうとすると、



楓「てめぇどこポジだ!!」


夕太「そーだそーだ!!フィナンシェ独り占めしようったってそうはいかないからな!」



確実に2人の標的が俺に変わってうるさいくらいに野次られる。


付き添いの蓮池まで結局騒いでいて本当に俺らは何しに来たんだ。



雅臣「騒いですみませんでした」



取り急ぎ頭を下げると、椿さんは俺の前に歩み出て綺麗にラッピングしたお菓子を1つだけ差し出した。



椿「あげる、君もお茶飲んでく?」


雅臣「えっ……」



この騒動に全く動じない椿さんは笑顔のまま俺達3人をソファへと誘導した。





_________


_______________





な、何故こんなことに……?


最近はどんな展開になっても割と受け入れていたがさすがに今日ばかりはこう思わざるを得ない。


俺ら3人はソファへ、生徒会の目立つ2人はは各自の席に腰を下ろすが俺1人落ち着かなく、椿さんが優雅にティーポットで紅茶を入れる姿を見つめていた。


部屋中に心が癒されるような紅茶のいい香りが行き渡り、それぞれの席の前にカップが置かれていく。


……ん?


ふと手にした金彩の美しいカップがロイヤルクラウンダービーのロイヤルアントワネットではと気がついた。


学校の備品にしては羽振りが良すぎないか?


目を疑いカップを手に取ってしげしげと眺めると、



夕太「…うまい、サクサク先輩後でお代わり下さい」



____さ、サクサク先輩?


柊から変なあだ名を聞いて、こいつ全く関係ない先輩にも容赦なく命名したなと顔が引き攣るのがわかる。


柊はいただきますもなく早速口につけて次をねだっているが、イギリス製の高価なカップを割りそうで気が気でない。


改めて生徒会室を眺めると全てがイギリスのアンティークで統一してあって山王とは思えないくらいここだけが優雅で異空間だった。


部屋の真ん中にはマホガニーのローテーブル、俺達の座るソファは本革のチェスターフィールドと恐ろしく優美で悔しいくらいにセンスがいい。


重厚感あるキャビネットもそれぞれの机も全てマホガニーで赤茶が美しく、年代物ならではの重みを感じてつい見とれてしまう。


建築士の親父の趣味もあってその影響を存分に受けた俺は、実は家具や内装にこだわるのが好きなのだ。


親父は照明に家具、食器やカトラリーまでこだわって集積していて、1つ聞けば懇切丁寧な説明で教えてくれたので俺も自然と覚えてしまった。


あの1人がけのロッキングチェアなんか持って帰りたいくらいだと眺めていると、



夕太「……俺が部長がいいのに」


楓「え、まだそれ言う?しつこくない?」


夕太「だって……」



焼きたてのフィナンシェを頬いっぱいに詰めて今も尚愚痴を漏らす柊に蓮池が呆れてため息をついた。



「椿これ美味しいわぁ……」


椿「好きだよね、レモン味」


「お前また調理室のオーブン勝手に使ったのか」


椿「文句あるなら下げるけど?」



先程から生徒会の面々は俺らを気にすることなくそれは優雅なティータイムを過ごしているので、俺も気にせず柊の不満に集中することにする。


何をこんなにこだわってるんだと思うが、部長になりたいと俯く柊に俺はSSC設立の感謝をまだ伝えていなかったことに気がついた。


柊がいなければ今の俺の楽しい毎日もなく、蓮池や先輩達と打ち解けることもなかっただろう。


それなのに急にぽっと出の俺が部長になってしまったら柊が嫌な気持ちになるのも当然かもしれない。


もっと柊の気持ちを組んでやるべきだったと後悔する。



雅臣「……柊が創立者だもんな」



そう一言言うと、柊は目を輝かせて勢いよく振り向いた。



夕太「そ、そう!そういうことなんだよ雅臣!!それを言って欲しいの!!」


雅臣「俺は柊のおかげで無事サークルに所属出来てるわけで……柊がSSCを作ってなければ俺は今こんなに楽しくないよ、ありがとうな」


夕太「ま、雅臣ぃ!!」



素直に感謝の気持ちを伝えると、柊は感激したようにギューっと俺に抱きつき機嫌は治ったのかこれも美味いよと先輩の作ったクッキーを勧めてくる。



楓「現金だな夕太くんは、結局褒められたいだけじゃん」



その姿を見た蓮池は呆れ顔で紅茶を啜った。



「よく出来た男ねぇ…三木ちゃん指名の理由もわかったわ」


「部長に向いてるな、こんなうるさいチビより確実に」



カップを右手に鼻で笑う眼帯カラーグラスの言葉に、蓮池より早く柊は立ち上がるとつかつかとその机まで向かう。



夕太「先輩だってチビだろ!!」


「うるさい、邪魔だ」


夕太「何cmだよ!変わんないだろ!!」



睨みを利かせる眼帯カラーグラスに負けじと反論しに行く柊の心臓の強さには驚かされる。



「身長と心の広さは比例するから……ねぇ?」


夕太「待ってよそれだと俺の心が狭いみたいじゃん」


椿「大丈夫、それなら厚底履けば解決だよ」



生徒会長が痛烈な皮肉を言うのに対し柊が憤慨するが、椿さんからカウンターパンチを食らった。


心の広さに身長は全然関係ないだろ……。


色々呆れるがこの濃い面子相手に全く臆することなく立ち向かう柊のメンタルの強さに舌を巻くと椿さんと目が合った。



椿「藤城?だっけ、下の名前は?」


雅臣「雅臣です、藤城雅臣」



俺を伺うように尋ねる椿さんに慌てて名乗る。


夕太「こっちはでんちゃんだよ、蓮池楓って言うの」



柊の紹介に自分で言えると言う蓮池の姿が入学式の日と重なって、あの頃とは違い2人を見ても今はこんなに穏やな気持ちでいられるのかと不思議な感覚に囚われた。



椿「藤城雅臣と蓮池楓…」



静かに呟く椿さんを前に、そういえば生徒会でこの人以外の名前をまだ誰も知らないと思い至る。


心の中だけとはいえいつまでも多様性生徒会長や眼帯カラーグラスなんて呼び方をしているととっとの二の舞になりかねない。


早速教えて貰おうとした瞬間、



椿「おみ、はすかえ、もう1杯いる?」



…………お、おみ?


…………はすかえ?


生徒会で1番普通に見える椿さんもやはりどこか変なのかもしれないとこのセンスで察した。



雅臣「あ、えっと……お言葉に甘えて……」



柊同様にこの人も変なあだ名をつけるのが癖なのか?と動揺している間にロイヤルミルクティーが差し出される。



楓「変なあだ名はでんちゃんで充分だよ」


雅臣「あの…皆さんのお名前もそれぞれお教えいただけませんか?」



気を取り直してまずは目の前の椿さんに目を向けるが、椿さんは多様性生徒会長へ目を向けた。






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