101.【真の部長は】
「本当に三木ちゃんじゃないのね」
「申請不備ではないようだな」
だから言ったろと言わんばかりにジト目で会長を睨む眼帯カラーグラスの様子から、もしや俺が部長かどうかが疑われていたのかと見つめる。
「だってぇ…ねぇ?この横の〝本当の部長は〟とか?ねぇ柊、これは何?」
紛らわしい、と迷惑そうな多様性生徒会長を気にすることなく柊はソファに寝そべっていて非常に態度が悪い。
夕太「…本当は俺が部長なの。雅臣がやることないから仕方なかったんだよ、それにやりたそうだったし」
雅臣「はぁ!?俺はやりたいなんて言ってないだろ?」
夕太「やりたそうな顔してた!」
口を開いたかと思えば突然何を言い出すんだこいつは!
あらぬ誤解を招きたくなくてつい声を荒らげてしまったが、
夕太「やりたくないならそうやって三木先輩に言えば良かったのに!」
柊はぷーっと頬を膨らませるので、そんなに部長がやりたかったとは知らず驚いてしまう。
俺らのしょうもない言い合いを生徒会の2人も蓮池も見ているだけで仲裁に入る気は無さそうだが、ここはしっかり柊に言っておかないとと向き合った。
雅臣「それならお前があの時三木先輩を納得させれば良かっただろ?」
そこまでやりたいなら三木先輩だけでなく皆を納得させる理由を言うべきだったと窘めるが、柊はぷい、とそっぽ向いてしまい完全に拗ねている
夕太「雅臣が辞退すれば良かったじゃんよ。柊に譲りますって………本当はやりたかったんだろ?だからすんなり引き受けたんだろ?」
こんなにしつこく駄々をこねる柊を目の当たりにするのは初めてなので、思わず助けを求めるように蓮池を見てしまう。
蓮池は片眉を上げてしょうがないなとばかりにソファに顔を伏せる柊の隣に腰を下ろしていい加減にしなよと宥めてくれた。
「えーっと、この子は?」
雅臣「つ、付き添い?です」
宥められて尚不満そうな柊を見て、生徒会の2人ともやれやれと肩を竦めて呆れるだけだ。
雅臣「……柊、悪かったよ。そんなに部長になりたいとは知らなかったんだ」
謝ればちら、と柊は腕の隙間からこちらを覗き見る。
俺は本当に誰がなってもいいというか、むしろこんなにやる気なら柊がやるべきだとさえ思う。
雅臣「生徒会の前だしちょうどいい。部長を柊に替えよう」
そう思って提案すれば、柊は勢いよく立ち上がった。
夕太「も、もーっ!その余裕さ何なんだよー!そもそも三木先輩がわざわざ名指しなのもムカつくんだよ!」
ポカポカと音がしそうなくらい俺に殴りかかる柊を後ろから蓮池が羽交い締めにして剥がすが、俺は兄弟がいないからか柊が小さな子供のように見えて少し可笑しくなってしまう。
夕太 「何笑ってんの!?」
雅臣 「……いや、弟がいたらこんな感じなのかと」
つい余計なことを言ってしまい、柊は怒りで顔を赤らめ後ろの蓮池が肩を震わして笑ってる。
夕太「でんちゃんまで!」
俺達3人が騒がしくしていると片目を見開く眼帯カラーグラスにおい、と呼び止められる。
「三木の指名なのか?」
雅臣「えっ…はい、一応」
蓮池に取り押さえられ手が使えず今度は蹴りに変えてきた柊を何とかかわすが生徒会の2人はまた顔を見合わせた。
「……それなら貴方、そんなに馬鹿じゃないのね」
____ひ、酷い言い草だな。
確かに俺は部長っぽくもないけれどとつい眉をひそめてしまう。
雅臣「失礼ですよ」
「あぁ、ごめんなさい。そういう意味じゃないの」
会長は直ぐに謝るが立ち上がって俺の傍までくると顎に手を当て人を値踏みするように眺める。
そんな風に見られるのは蓮池以来でかなり失礼な行為に余計に顔を顰めてしまう。
勘違いで呼び出しておいて、一体何だと言うんだ。
「…資質を見抜いたのかしら?三木ちゃんセンスあるわね」
生徒会長はそう言って俺の肩に手を置いたが、近くで見るとあらためてそのデカさに圧倒された。
俺も小さい方ではないが優に10cmは身長差があって体格もいい、それなのにこの口調と長い三つ編みのピンク髪で頭がバグりそうになる。
夕太「そんなこと言ったら俺が嫌な奴じゃん!ミルキー先輩俺にはやれって言わなかったんだよ!?」
今度は会長に食ってかかろうとする柊のポロシャツの襟を眼帯カラーグラスが思い切り引っぱり大人しくしろと睨みつける。
柊より少し大きいだけなのに、物凄い力と圧に息を飲む。
三木先輩や桂樹先輩とはまた違う威圧感に何でこんな事にとため息をつくしかなかった。
楓「__夕太くんはどう考えても部長向いてないよ、末っ子気質だし」
柊の駄々っ子ぶりを見かねたのか蓮池はついに助け舟を出してくれたが、その言葉に暴れていた柊が異様に大人しくなる。
ぱちぱちと瞬きをするその姿を見て、まさか蓮池にそんな事を言われるとは思っていなかったのが伝わってくるが、
楓「文化祭も夕太くんは体育館がいいとしか言わなかったけどこいつは先輩に気遣ったじゃん?そういうとこじゃないの?」
蓮池が俺の肩を持つとは思わず、柊同様に目を瞬かせてしまった。
何だよ、と蓮池は睨んでくるがついに俺の気遣いがあの蓮池に伝わったかと思うと肩を震わすほど嬉しかった。
夕太「な、何だよ………俺、先に帰る!」
俺とは反対に、柊は腹が立ったのか眼帯カラーグラスの手を払い部屋を出ていこうとするが、同時にその扉が開いた。
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