98.【ついに部長決定!?】
先輩達は顔を見合わせるが、最初に口を開いたのは一条先輩だった。
梅生「…… 辞めた時期が重なっただけで俺は仲違いして辞めたわけじゃないんだ。だからそこまで気にはならないよ」
詳しい事情は未だに分からないが、見た限りでは一条先輩は梓蘭世を追って辞めたようなものだった。
問題があって辞めたわけじゃないのなら、一条先輩は合唱部に気遣う必要はないのか。
梅生「合唱部と顔を合わせるのも体育館でやるのも嫌じゃないかな」
……となると、と俺ら1年の視線は梓蘭世に移った。
蘭世「な、何だよ」
柊の大きな目でじっと見つめられて梓蘭世は言葉を詰まらせる。
夕太「蘭世先輩は?本当は?どうなの?」
蘭世「俺ぇ?……別に何て言うかお前らが気を遣うことじゃないっていうか…」
上手く言えないけど、と梓蘭世は頭を掻きながら困ったような顔をした。
蘭世「お前らが体育館でやりたいならそれはまぁいいし、合唱部と顔を合わせるのもどーでもいいよ」
三木「__そうだな。今後このようなことが増えてくるだろうから先に言っておく」
梓蘭世に続いて突然三木先輩が畏まった顔をして話すので自然と1年生3人とも背筋が伸びた。
三木「藤城が俺らと合唱部のことをいつも気を遣ってくれるのはすごく有難いし、それはお前の良いところだ」
____急に俺の話になって心臓が跳ね上がる。
もしかして、俺の心配はずっと余計なお世話だったのか……?
三木「……でも俺は俺の正義を持って合唱部を辞めた。だから藤城と1年がそこまで気にしなくても大丈夫だ」
そう言い切って珍しく微笑む三木先輩に少し驚いた。
三木「リオのことも、だ。俺らを気遣ってお前らが合唱部に遠慮するのもおかしな話だろ?」
なぁと三木先輩は2年を見つめると2人とも静かに頷いた。
桂樹先輩のことまで言われて、やっぱり合唱部内で意見の食い違いか何かがあったんだと思う。
それでも三木先輩が自分の正義を貫いたのならもう俺達が口を挟む必要もなく、ハッキリ気を遣うなと言って貰えてようやくほっとした。
三木「ありがとうな。今俺は結構楽しいぞ?お前ら皆良い奴だしな」
俺の肩に三ポンと手を置き、切れ長の目を細くして笑う三木先輩の言葉に嬉しくなる。
勝手に心配して反対に気を遣わせてしまった事に少し落ち込んでいたがこの笑顔で気持ちも晴れた。
そうだな、と呟く梓蘭世も頷く一条先輩も、このサークルが楽しいと思っていたのは俺だけではないと分かったのが本当に嬉しかった。
夕太「なるほどね…じゃあじゃあ!第1希望は体育館で出そう!」
合唱部と顔を合わせることに何の問題もないと分かった途端、柊は申請書の場所の欄に体育館と記入した。
柊の話の切り替えの早さに救われる時もあるよな。
何となく重たい雰囲気だったのに部室全体一気に明るくなって気持ちが華やぐ。
夕太「あれ、申請書に部長欄あるよ」
柊がトントンと用紙を指すが、うちのサークルは部長が未だに誰とも決まっていなかった。
今まで何となく三木先輩が仕切ってくれてはいたが、正式に部長となると誰で申し込めばいいのか。
やはり三木先輩か2年だよなと思った瞬間、
夕太「俺!俺が部長がいい、部長やる!!」
柊が椅子から立ち上がり手を挙げて名乗り出た。
三木先輩か2年のどちらかと思ったが柊が立候補したのならやる気に満ちた奴でいいよなと思うが、
三木「藤城、お前が部長やれ」
…………。
……………………。
雅臣「は!?」
な、何で俺!?
柊に任せる気満々だったのに、突然の三木先輩からの指名に声が裏返る。
夕太「えぇー!俺がいい!俺がサークル発案者だよ!?」
何故自分なんかをと頭がいっぱいいっぱいになって焦る俺とは違い、納得のいかない柊は膨れっ面で抗議の声を上げる。
俺より他人との付き合いも上手くコミュニケーション能力抜群、そして自分の意見を伝えられる柊の方がよっぽど部長に向いているのに………。
楓「発案者って言っても思いつきで作っただけじゃん。別にお菓子食べちゃおうサークルとかでも良かったんだから、ねぇ、一条先輩?」
梅生「え!!そ、それいいね……」
略してOTSと笑う蓮池に一条先輩がかってない目の輝きを見せて食いついた。
蘭世「梅ちゃん!!ここ辞めて他作ろうなんて許さないからな!!」
モラハラ気味の梓蘭世は一旦置いとくが、思いつきでできたようなサークルでもやっぱり発案者は柊なわけで……。
しかし俺が改めて柊を薦めようにも本人があまりにもうるさくてタイミングが掴めない。
夕太「お菓子パーティーはここですればいいだろ!!じゃなくて!絶対部長は俺がいい!!」
ふん、と海外アニメの黄色いカナリアのように胸を突き出し腰に手を当て主張する。
三木「お前はジャンケンもピアノも、その他にも頼みたいことがあるからダメだ。それに蓮池も仕事があるし、藤城が適任だ」
意外にも三木先輩は全く譲らなかった。
じゃあ2年でもいいのではと思うがチラと見ればやりたくないのか2人とも目を逸らすので困ってしまう。
多分1年の中で俺だけが暇なのと、あまりにもやることがないので三木先輩はせめてもの役割を与えてくれたんだろう。
蓮池も柊も忙しいなら俺が暇になるのは確実だしな。
三木「それならジャンケンを藤城にするか?」
夕太「えっ?そ、それだけはダメだよ!!絶対負けるよ!!」
三木「それなら部長かジャンケンかどっちか選べ」
強く命令されて柊は頭を抱えてウガーと悶えだす。
余程俺にジャンケンをさせたくないのかウンウン唸っているが、それにしても即答で俺が負けるとは失礼な奴だ。
ジャンケンなんて運みたいなものなのにやってみなければ分からないだろ。
夕太「ジャ、ジャンケン……やる……」
三木「よし、それなら部長は藤城でいいな」
半泣きの柊からサッと紙を奪うと三木先輩は部長の欄に俺の名前を書いてしまった。
雅臣「は、はい……」
思いがけず任命された部長だが三木先輩が決めたことなら頑張らねばと了承した。
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