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11.【部活は絶対】


ガラッと大きく音を立て堂々と後ろの扉を開ける蓮池に続いて教室に入っていくと、着席しているクラスメイト全員が振り向いた。


誰かが掃除したのか、ポケットに詰めきれず散らばった髪の毛はもう床には落ちていなかった。



小夜「頭冷やしたか?じゃあ蓮池、柊、藤城の順にそこ座れ」



好奇の目に晒されながらも出席番号順には抗えず、大人しく縦に座るがよりにもよって最前列は1番デカい蓮池の席だった。


黒板が見えにくいなと思った矢先に柊が目の前の蓮池の椅子をゴンゴンと蹴り飛ばす。



夕太「でんちゃん見えない。でんちゃん座高も高いタイプのデブなんだから背中をこう、まるめてよ」


楓「無茶言わないでよ」



2人の会話に本日もう何度目か分からない重いため息をついた。


それで小声のつもりなんだろうか。


周りの奴らのお前らに対するヒソヒソ声を少しは見習えよ。


学習能力のない2人に呆れ果てた俺は担任の説明に神経を集中させる。



小夜「えーっと、どこまで話したっけな。あーそうだ。明後日から実力テスト、健康診断、新学期お決まりの展開だからね。それと!これが1番大事だわ」



担任は教壇を降りて冊子を配り始める。


前から回ってきた冊子には部活に関する様々なルールや説明、アピールポイントなどが載っていた。


意外と多いな…。


頬杖をつきながら何枚か捲っていると、とんでもない話が耳に入ってきた。


小夜「山王学園は文武両道!持ち上がり組は知っていると思うが、高3冬休み前まできっちり3年間、部活所属必須だからな」



____ひ、必須!?


第1志望ではないこの学校案内のパンフをくまなく見たわけではなかった。


東京ではずっと帰宅部で、一人暮らしとなった名古屋でも当然そのつもりだったが3年間も所属必須なんてどうしたらいいんだ。



小夜「書いてある通りだが、部活は10人からで10切ると必然的にサークル降格。あと部活ガチりたいやつはまあいいとして、バカは緩い所に入って勉強頑張るのも1つの手だな」



部活概要を掻い摘んで話す担任から、何となく蓮池の頭に目がいった。


そうだよな。


いくらエスカレーターとはいえ足切りは当然あるだろうし一理あるよなと納得してしまう。


担任のあの言い草は、馬鹿でも大学を目指したいなら部活が足枷になる可能性を示唆するものなのだろう。



小夜「ちなみにサークルは誰でも創設はできるが7人いないと受理されない。全く友達ができないコミュ障は大人しく楽な部活にしとけ」



これもまた酷い言い分だが俺はコミュ障とかではなく単に面倒くさいので、できるだけ楽な所がいい。


部活動の話となると教室が自然と少し賑やかになる。


どこが良いかと隣同士で話し合う奴を見て、俺も1番緩い部活はどこかと冊子を凝視する。



小夜「最後に!生徒会だけは唯一部活免除だが、基本は高3主体で成績、内申を含めて入る基準が非常に厳しい。ま、1年の内はとにかく部活所属必須ってわけだな」



ということは、あのインパクト大な生徒会長は優等生だったのか。


人は見かけによらないがよらなすぎる。


入学式での挨拶や進行、全て任されていたあれが生徒会なのだとしたら普通の部活より確実にきついのは見てわかるため生徒会も部活扱いで納得がいく。



小夜「以上、今から10分休憩!トイレ行きたいやつ早く行っとけよ~」



小夜お前何だそのズラは!と副担に小突かれながら、担任は教室を出ていった。


辺りを見れば固まって話しているのは内部進学組のようだ。


春休みの話やあいつはどこのクラスだなど様々な会話が行き交い、教室内はひとしきりざわついた。


大人しくしている外部進学組に親近感を覚えることもなく、週1の極力緩い部活はないかと冊子を捲る。



夕太「部活決めた?」



ぶん、と音がしそうなくらいの勢いで前の柊が振り向いた。



雅臣「いや」



最低限の返事だけしようと愛想なく答えても、後で一緒に部活見学行こうよと覗き込む。



楓「えー、俺楽な部活が…」


夕太「でんちゃんは誘ってないよ。お稽古あるんでしょ」


楓「部活見学理由にサボるんですー」



後ろから話に入ってきた蓮池に、お前が来るなら尚更絶対一緒に行かないと決める。


柊は向かいから勝手に俺の冊子を何枚か捲り1箇所を指した。



夕太「これ、合唱部!一緒に行って、良かったら雅臣も入らない?」



お前が合唱部にこだわる理由は例の人だとして、俺には興味も欠けらもない。


団体行動なんて柄でもないし断ろうとすると、ある項目が目に留まった。



雅臣「成績100番以下は退部って…」



一瞬だけ蓮池に視線を走らせれば目が合ってしまった。


眉根に皺を寄せ中指を立てられる。



楓「一々見てくんなようぜぇな」


夕太「本当だ…ありがとう雅臣!教えてくれたんだよね。そっかー…でんちゃんだけ入れないのかぁ…」


楓「まだ成績決まってないじゃん。ていうか、なんで俺と2人で行かないの?」



1人だけだけ入れない、という言葉に蓮池が過剰に反応し上手い具合に気が逸れたかと思ったのも一瞬だった。



夕太「だって雅臣どう見ても友達いないし、これから出来ることもなさそうだし…」



確かに、と薄笑いする蓮池も失礼すぎる柊も鉄の意志でスルーした。


この2人に一々腹を立てる事は本当に愚かであると、短時間で学んだのだ。


入学初日で友達なんて早々にできるわけないだろうがと色々思う気持ちを無理矢理押さえ込み、週1の条件をクリアする所を探すがどこにもない。


そんなサークルを自分で創設するのは簡単だが、7人も集めなくてはいけない事を思い出し面倒くささが勝ち即座に却下する。



夕太「雅臣、これから一緒に回ろうね」


雅臣「...考えとく」



押しの強い柊を適当な言葉で濁して、休憩時間はあっという間に終わってしまった。



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