休日
一晩明け、蓮と出かける日になった。鬼録室からほど近い部屋を茜の私室として使っており、食事の時は閻魔殿の食堂を利用している。
蓮から借りた服の中でも茜が好きな黒い唐服を身にまとい、部屋を後にした。
通り慣れた石畳の階段も始めに比べると恐ろしさは微塵も感じなく、茜の中ではすっかり我が家として居心地の良い空間になっている。
裁判所の裏手には高い壁が存在し、亡者から見えず侵入できないよう作られた獄卒の街がある。門番に挨拶をし中に入ると、一般の鬼や獄卒達で賑わっていた。
空が赤黒いだけで、古い建物から新しい建物まで現世とあまり変わりがない。
「何着ても似合うな〜」
大通りの中にある一軒の服屋の店内で、蓮が正装用の長袍と和服を交互に持っては茜に当てて眺めるという作業が続いていた。
普段着ように買った唐服等は茜が持つ袋に入っており、それだけで十分だと茜は言ったが蓮が一着は正装を持っておけと言い、今に至る。
「目立ちたくないし蓮と似た様なのでいいよ」
「ばっかお前!そういう場での運命的な出会いがあるかもしれないだろ?」
長寿の鬼でもそういうことを考えるのかと半ば呆れながら、茜は蓮のしたいようにさせていた。蓮の気さくな性格やかっこいい顔立ちと体格を考えれば、そういう事にも困らなそうだと茜が言うと、蓮からため息が聞こえてきた。
「いつも仕事で時間が作れないから『閻魔大王と私どっちが大事なの』って言われて振られてるんだ…」
「…それはごめん。なら職場での出会いは?それなら忙しさも分かってくれるだろ?」
「刑場や裁判所勤めの女性陣がどれだけ頼もしいか。お前はまだ分かっていないだろうが、男前すぎるんだよな〜。俺は可愛げと癒しが欲しいんだよ!」
蓮はそんな事を言いながら、長袍と間違えてチャイナドレスを手に取り流れ作業のまま茜に当てる。言葉と行動を変に受け止めると、そういう風にも見られてしまう光景だ。
店内に居た1組の女性陣が、もしかして…と楽しそうにこちらを見ているが気にしない。チャイナドレスを指さしながら茜は言葉を続けた。
「頑張ってコレが似合う女性を探すんだな。」
蓮がチャイナドレスを持つ手とは逆の腕に掛けている長袍を茜は見て、これにしようと一言付け加えて会計へと向かった。




