鬼録室の管理人
「『特別』な君にはこの鬼録室の管理人になって欲しいんだ!」
「特別?」
閻魔大王は男を手招きしさらに着いてくるように促した。
最初は蛍がよく飛び交う場所だと思っていた男だが、閻魔大王に連れられ蛍とすれ違うことが多くなり、蛍ではなく小さい神々が行き来していることに気がついた。これが凛の言っていた俱生神だろう。
俱生神たちが行き交う方向へ閻魔大王と共に歩みを進めていくと、大きな書物庫へと辿り着いた。
「ここが鬼録室だ!」
書物庫内は俱生神達が居るだけで、獄卒は見当たらない。閻魔大王は近くに置いてある椅子に腰掛けると、男にも座るように命じた。言われるがままに椅子に座ると、さて…と閻魔大王が話し始める。
「特別というのは亡者から獄卒に転生した事を言ったのだよ。何千年生きていても今まで例が無くてね」
「凛は珍しいと言ってましたが」
「可能性はあるが実例が無かったからだ」
閻魔大王や十王、側近たちは、亡者が獄卒に転生することはあるだろうけども、裁判を迎えて全てを終えたあとに現れるものだと思っていたそうだ。実例が無いと言った通り、それでも現れたことは今まで無いらしい。
「それに加えて君は記憶を無くしているだろう?鬼録が残って付喪神に憑かれるならば、その前に君自身で見つけ出して処分してしまえばいい」
だからそのためにもここの管理人になって欲しいんだと、閻魔大王は言葉を続けた。他の獄卒達の代わりに鬼録を十王の元へ運び、報告。他の時間は自分の鬼録探し。付喪神が憑く前に見つけ出せれば鬼録室も救われ、記憶が戻らなければ鬼録を読む事で男の為にもなる。
「一石二鳥だろ?」
「確かに…」
少女の容姿に騙されそうになるが、さすがに何千年生きている閻魔大王。これくらいは簡単な問題だと足を組んでどうする?とじっと男を見つめる。
男は顎に軽く手を当て考えた。早く鬼録を見つけ出さないと他にも影響が出てしまうかもしれないという凛の言葉を思い出し、そして今の自分に出来ることは閻魔大王に言われた通りのことだと納得をする。
「管理人の話…お受けします。」
「うむ!では鬼録室は頼んだぞ!」
閻魔大王は嬉しそうにそう言い椅子の背もたれに背中を預けた。




