6−2
* * *
「今回ばっかりは俺も行く!!」
「良いって!一人で大丈夫だよ!」
ウラ爺から一通り荷物を受け取ったあと、突然ジュードが同行すると言い始めた。というのも、サイサリスという薬師が危ないという主張をしているのだ。
「あのサイサリスって奴、ヤバい薬とか禁術の研究してるって専らの噂なんだぞ!!お前一人で行って薬の材料にされたらどうする!!」
「でも、それってウワサでしょ?本当は違うかもしれないよ!」
そう話すアレルの頭の中には、ミランダの寂しそうな表情が浮かんでいた。彼女も見た目で判断され、迫害を受けていた。まだ会ったこともないサイサリスという人物も、何か誤解を受けているだけなのかもしれない。そう考えているのだ。
「だぁから実際マロの診療所で会ったことあるんだって!!かなり怪しい見た目と喋り方だったんだって!!
ウラ爺も何回か配達行ったんだろ!?止めてくれよ!!」
「ゴロ…」
助太刀を求められるウラ爺は困ったように鳴く。恐らくおおむね同意だが、実害を受けていない以上は何とも言えないと言ったところだろう。
「そんなこと言ったらジュードだって顔怖いじゃん!」
散々な言い様にアレルがムッとしながら言い返すと、ジュードがぐ、と声を詰まらせた。
「お、俺は…!」
「だけど、ジュードはすっごく優しいし、孤児院の子たちにも人気だし、見た目とは全然違うでしょ!」
「………」
続けられる言葉にややホッとした表情を見せ、すぐに顔を引き締める。だが、徐々にその顔から自信が失われていくのが見えた。
「……し、しかしだな…」
「そんなに心配なら、なるべく遠くからなら良いよ。俺は大丈夫!きっとサイサリスさんも良い人だよ。マロ先生の知り合いなんでしょ?」
「……」
完全に一転攻勢。アレルが意外と頑固なことを悟り、ジュードは言い返すことをやめた。
「…分かった。ただ、マジで心配だから付いてくのは絶対だ。何かあったら即助けるからな」
「ありがとう。でも、怪しいだけなら何もしないでね。話し合いでどうにか出来るかもしれないし」
ニッと笑って、アレルは鞄に荷物を詰め始める。ジュードは頭をボリボリと掻きながら、猟銃を取りに近くの部屋に入っていった。
「心配性なんだから…ね、ウラ爺」
彼の背中を笑いながら話しかける。ウラ爺はゴロロ、と小さく唸った。
「はい、お代。今日も忙しそうね」
フロワがアレルの手を取って代金を渡す。いつものようにふわりと笑うと、アレルが頷く。
「今日は特に件数が多くて。また暇な日に、子どもたちと遊んでもいい?」
「勿論よ!みんなアレル君が遊びに来てくれるのを待ってるの。きっと喜ぶわ」
「へへ…じゃ、また」
軽く挨拶して去ろうとすると、フロワがシャツの裾を引いて引き止めた。
「待って!……フレッド君にも、また来てって伝えてくれないかしら?」
「え…」
「この間、あんまり元気がなさそうに見えたから心配で…。お父様がご病気とも聞いたし、うちで何か手伝えないか気になってたの。遠慮しないでって伝えてあげてくれる?」
「……」
いつもなら即頷いただろうが、アレルの脳裏に昨日フレッドの辛そうな顔が過る。
「…うん、会えたら伝えるね。それじゃ!」
ぎこちなく笑い、逃げるようにしてその場を後にする。フロワのお願いね、という声が、今のアレルには少し辛い。
アレルの気持ちに呼応したように、脚がズキン、と痛む。
「はぁ、はぁ……痛み止め、飲んだのにな…」
思わず弱音が溢れたが、その気持ちを振り切るように息を切らして走った。




