3−6
* * *
教会に帰ると、屋根に留まっていたウラ爺が羽を広げてふんわりと降りてきた。
「ウラ爺!ただいま!」
「ゴロッホゥ」
よく帰ったな、とでも言いたげに、ウラ爺はアレルの脚にポンポンと触れる。アレルはそのままウラ爺を抱き上げ、ポケットから今日の成果を取り出した。
「ほら!ちゃんとフロワさんのところに届けてきたよ」
「ホゥ」
「まあ、俺が居なかったらあと2日は掛かっただろうがな」
ジュードの冗談めかした言葉に、照れ笑いが出る。確かに寄り道ばかりで配達どころではなかった自覚はあった。
「まあ友達も出来たみたいだし、コミュニケーションは問題なさそうだな。仕事の流れも分かっただろ?次から一人で行けるか?」
「もちろん!頑張るよ!」
「本当かぁ…?」
自分から切り出しておいて、心配の視線は緩まない。信用してよ、と胸を張ってみせるもジュードは低く唸るだけだった。
「ゴロッホゥ」
見かねたようにウラ爺が口を挟む。大丈夫だ、自分がいると言いたいようで、アレルの頭を抱えるように羽で包んだ。
「ウラ爺…俺にアレルの見張り押し付けたくせによ…」
「ゴロッホゥ」
「ちゃんとこっそり見てたって?じゃあ先輩としてしっかり指導してやってくれよ?」
渋々納得するように、ジュードは腕組みしてウラ爺を睨む。その様子がおかしくてアレルが吹き出すと、「笑い事じゃないんだぞ!」と小突かれた。
ジュードと夕食を済ませ、自室に戻る。もらったコインを机の上に出し、ライトに当てて眺めた。
「俺が、もらったんだなあ……」
思えば、群れにいた頃にもらえた対価といえばその日の食事くらいのものだった。遺物は宝物ではあったが、落ちていたものや水に浮いていたものを勝手に集めただけで人からもらったものではない。
今日フロワにもらったこのコインが、アレルにとって初めての、形に残る労働の対価だ。
じんわりと実感が湧いて、思わず頬が緩む。
「………♪……♫…♩」
コインを眺めながら、あの子が歌っていた歌を自然と口ずさむ。もしかしたら、このコインは一度あの子が手にしたこともあるのかもしれない。
あの子と自分の世界が少しずつ繋がっていく感覚に、小さな感動を覚えた。
いや、あの子とだけではない。フレッドやフロワ、孤児院のみんな。今日一日でたくさんの人との繋がりができて、地上の世界とどんどん繋がっている。こうして人との繋がりを作り、いずれは自分だけでなく他者と他者の世界も繋ぐのが、郵便屋の仕事なのだ。
そう考えると、これからのことに胸が躍る。たまらなくなって、コインを握ったままベッドに飛び込んだ。
「…あ、そういえば………」
今日のことを反芻していると、ふとフレッドの顔が思い浮かぶ。
出会った時の彼の笑顔と、別れ際の何か言いたげな表情がぼんやりと思い出された。
「フレッド、何か様子が変だったけど……大丈夫かな?」
続く




