第95話 シーフードカレーおかわり
「カレー、まだあるかな?」
桜井の家の玄関扉を開けてサトシが顔を出すと、桜井はいそいそとエプロン姿でサトシを招き入れた。
サトシは、桜井が作ったシーフードカレーを一口食べて、感動した。
「あああ、いつものカレーも美味しいけど、このシーフードカレーもいけるなぁ」
「よかった、お口にあって。今日はむきえびが安かったから、これにしちゃったの」
「美味しいものを食べると嫌なことは忘れるって本当だな。あんなに腹が立っていたのに、今は教頭のことなんかどうでもよくなってきた」
「わたしもそう」
「もしかしたらこれからも、教頭先生はチクチク言ってくるかもしれないが、言わせておけばいいさ」
「ですね」
「よかった。桜井が元気で安心したよ」
「教頭先生に叱られたときは、さすがにへこんだけど」
「俺がLINEしなかったら、教頭先生の件は言わないつもりだったのか」
「うん、まあ。先生に迷惑はかけられないと思ったし」
「なんだよ、迷惑って。先生は、ってか、俺は桜井を守りたいんだぞ。なんでも言ってくれないと守れないじゃないか」
「ごめんなさい。先生、怒った?」
「怒ってない。美味しいカレーを食べながら怒るなんて不可能だ。おかわりください」
「え?」
サトシのカレー催促に、桜井は思わず笑って抱き着いてきた。
「キャー、先生、可愛いー!」
「よしなさい。30のおじさんに可愛いはないだろ。あ、違った。31になったんだった」
「え? いつの間に? 先生の誕生日はいつだったんですか?」
「10月31日」
「ハロウィンですね」
「ハロウィンは、あまり好きじゃない。だからハロウィンと一緒にされるのは嫌なんだ」
「あらま。じゃ、もう言わないね。すると、蠍座かなー」
「正解。桜井の誕生日は?」
「2月26日です」
「二・二六事件か」
「わたしも二・二六事件と一緒にされるの、嫌なんです」
「そうか、悪かった。星座は何だ?」
「うお座ですよ」
「早生まれか。じゃあまだ15歳かぁ。これは手を出しだら犯罪だな。キモいおっさん確定だ」
「全然キモくないのに、どうしてそんなこと言うんですか?」
「キモくない? でも世間はそう見ないよ」
「ふうーん、世間の目って教頭先生と同じなんですね。ということは、……なるほど。それじゃあ、これから卒業するまで教頭先生を社会の基準だと思えばいいんですね」
「ん? ちょっと飛躍しすぎ」
「ふっ、世間の常識とうまくつきあえばいいってことか」
「桜井……なんだか、ちょっと怖い」
「教頭先生からの圧に負けない。社会の基準に沿っていればいいんでしょ。わたし絶対に負けませんから。はい、カレーのおかわり、お待たせしましたっ」
「そうか、よくわからないけど、前向きでよろしい」
サトシは、どんな困難にも前向きに頑張る桜井に、また惹かれていく。
思わず椅子から立ち上がって、桜井を後ろからギュッと抱きしめた。
「桜井のそうところがいい。俺が守ってやる」
時間が止まった。
ドキドキしている。
サトシは桜井の顔に横からそっと唇を近づけ……
ちょうどそこへアキラが、お風呂場から出てきた。
「お風呂あいたよー。げっ! 美柑、すげーっ。サトシ先生といやらしいことしてるぅ!」
サトシと桜井は慌てて離れた。
「あ、アキラくーん。お邪魔してるよー」
「アキラ! 何見てんのよー。ほら、ちゃんと髪を乾かさないとダメじゃない。風邪ひくわよ!」
「うわー、うわー、エッチ―!」
アキラに見られたサトシは、慌てて否定した。
「いや、これはエッチじゃないんだよ。エッチはしてないからね」
「ええ? 違うのかよ。じゃ、エッチってどういうの?」
桜井はドライヤーを持ってきて、アキラの頭に吹き付けながらタオルでゴシゴシ乾かした。
「うるさい! ガキはだまってな! ほら! 動かないで」
ブオー、ブオー、ブオー、
ドライヤーの温風をハイパーにして、桜井はアキラの頭に吹き付けた。
「いててて、美柑、乱暴するなよ。熱い、熱いよー、バカヤロー」
アキラが桜井に、無理やり髪を乾かされている様子を、サトシは笑いながら見ていた。
そして、この家にアキラがいる限り、サトシは桜井に手を出すことは出来ないのだと悟った。
「面白い! サトシ先生が気になる」
「この続きはどうなるの? この先の美柑を読みたい!」
「先生、応援の仕方を教えてください」
「では、先生から応援する方法を教えまーす。
面白いなぁと思った生徒は、こんな方法があるからよく聞くように。
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「「「はーい」」」




