第76話 女生徒SIDE:生徒指導室
二学期の期末テストが終わり、テストが返却された。
サトシは英語のテストを生徒それぞれの名前を呼んで、一言添えながら返却していた。
「桜井美柑」
「はい」
「今回は頑張りましたね。この調子で頑張ってください」
「ありがとうございます」
英語のテストは78点だった。
桜井にしてはかなり頑張った点数だ。
だが、桜井の表情はあまり嬉しそうではなかった。
サトシはそれが気になって、声をかけた。
「桜井、あとで職員室に来なさい」
「はーい」
桃瀬も桜井の浮かない表情に気が付いた。
「美柑、どうしちゃったの? あれから、先生のお母様に何か言われたの?」
「別に」
柚木は、桜井の暗い表情にむかついていた。
「また始まったわ。美柑のメランコリー。どうせまたサトシ先生とうまくいかないのとか、言うんでしょ。いつものことよ」
「柚木くん、言い過ぎよ。美柑だっていろいろ大変なんだから」
「わたしだって大変よ。みんなが愛だの恋だの言っている間も、ずっと走り込みよ。わたしだって青春したいわ」
「柚木くんは、駅伝に青春を賭けてるじゃないの」
「ハルちゃん、やめて。わたし駅伝なんかより恋をしたいのよ!」
すると、夏梅が桃瀬と柚木を注意した。
「はい、そこ。柚木さんと桃瀬さん! 先生の声が聞こえないわ。静かにして!」
「夏梅、あんたも青春してるんでしょ。知っているわよ、白金祭で若狭くんとLINE交換をしてるとこを見たんだからね」
「ハルちゃん、それ本当? あのダンスの後、わたしが写真撮影に応じている間に、こいつ……」
「ホホホホ、嫌だわ。しかたなくよ、しかたなく交換したのよ。モテる女はつらいわね」
「くっ! ほんとムカつく」
休み時間になった。
言われた通りに、桜井はサトシの後について教室を出た。
サトシの後ろついて廊下を歩くと、いろんな生徒がサトシに挨拶して通り過ぎていく。
「サトシ先生、こんにちは」
「あ、サトシ先生だ。かっこいいー!」
(ああ、サトシ先生って、こんなに人気あるんだなぁ。みんな、サトシ先生が好きなんだわ。あ、わたしもその中のひとりか)
サトシは生徒指導室と書かれた部屋のドアを開けた。
「あれ? 先生、ここ職員室じゃないよ。生徒指導室」
「そうだよ。他の先生に聞かれてはまずいこともあると思うから、ここにします」
サトシは、生徒指導室の灯りをつけると、椅子に座った。
「桜井、座りなさい」
「わたし、ここで叱られるんですか?」
「叱らない。話をするだけだ」
桜井が、サトシと対面する形で椅子に座ると、サトシは切り出した。
「桜井だけ、進路調査票が出ていないんだが」
「あ、すみません。ほら、やっぱり叱るんだ」
「違う。心配しているんだ。何か困りごとでもあるなら、聞くぞ」
「……」
「せっかく、成績が上がり始めたのに、ちっとも嬉しそうじゃない。最近、ちょっと変だぞ」
「……」
「もしかして、俺の実家に週一で来るのが負担になっているんじゃないのか?」
「……」
「やっぱり、そうか。あれはレイコ姉さんの思い付きなんだから、無理して来ることはないんだぞ」
「先生、わたしの作ったご飯って、ちゃんと食べてますか?」
「ああ、毎週おいしく食べているよ」
「そう、よかった」
「親父にも、週一回ぐらい家で食事しなさいって言われてね。桜井のおかげで、親父との仲も自然に戻りつつある」
「それは、本当によかったです」
「だから、もう無理に週一で通わなくても。レイコ姉さんには、先生から言っておくから」
「いいえ、お母さまに気に入ってもらうまでは続けようかと」
「え? 母さんに何か言われたのか?」
「佐藤家に来るなら学歴と美貌が必要だって。そのためには、わたし英語だって頑張るし、ダイエットしてきれいになりたいし……あれ、わたし何言ってるんだろう」
そこまで話すと、桜井はサトシの実家と、自分の家庭環境に雲泥の差があることに気がついた。
(いくら頑張っても、大学に進学する教育資金なんかきっと母に出してもらえない。先生のお母さまが言うような、高学歴の美女になれるわけがないんだわ)
「いいえ、やっぱり訂正します。いいんです。もうやめます。もう実家に伺うの、やめます!」
「桜井? どうした?」
「あの、進路調査票、申し訳ありません。もうちょっと待ってくれませんか」
「いいよ。もし遅れても、先生の家に直接持ってきてくれてもいいから」
「ありがとうございます」
「相談したいことがあったら、いつでも言いなさい」
「はい、ありがとうございます」
いつもより素直すぎる桜井の態度に、サトシは返って心配になった。
いかがでしたでしょうか。
「面白い! サトシ先生が気になる」
「この続きはどうなるの? この先の美柑を読みたい!」
「サトシ先生、更新したら通知が欲しいです!」
「先生、応援の仕方を教えてください」
「では、先生から応援する方法を教えましょう。
面白いなぁと思った生徒は、こんな方法があるからよく聞くように。
ブックマークや、『☆』を『★★★★★』に評価して下さると作者のモチベーションアップに繋がります。はい、ここ重要ですからね。テストに出まーす!わかりましたかー?」
「はーい」
「よろしく頼みますよ、みなさん」




