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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第二章 一年二学期

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第73話 女生徒SIDE:サトシ先生の母

 「一学期の終わりころにも言いましたが、二学年になったらコース別にクラス分けします。この紙に二学年時のコース希望を書いて提出してください」


一年A組の帰りのHRで、進路希望調査書が配られた。


「では、お家の方とよく相談して、今週中に提出すること。はい、今日はここまでです」


サトシは終礼が終わると、教室を後にした。



 桃瀬は一緒に帰ろうと桜井の席までやって来た。


「美柑、帰ろ、帰ろ」


「うん。あれ? 柚木君は?」


「もう陸上部の部室に向かったわ。全国高校駅伝あるから大変らしいよー」


「へぇ、柚木くん長距離走るんだ。てっきりスプリンターだと思ってたわ」


「柚木くんは、スポーツマンだから何でも出来るけどね」


昇降口を出ると、夏梅が何気なく桜井と桃瀬の会話に入って来た。


「柚木くんなら、スポーツ推薦で体育大学か実業団に入るんじゃないかしら」


「夏梅! あんた、いつの間に後ろから入って来るのよ」


「桜井さんも桃瀬さんも、将来の夢を叶えるために文理コースどっちにするか考えた方がいいわよ」


「うざっ! そういう夏梅はどうするのよ」


「わたし? わたしはまだ決まっていないわ。でも理系コースに行けば、途中で文学系に進路変更できるし、つぶしがきくから理系コースかしら」


桜井も桃瀬も進路は決まっていなかった。

選んでくださいと言われても、夏梅のようにどちらのコースも選べるほど、勉強は得意ではない。


「わたしも将来の夢なんて、まだ決まってなーい。それに、夏梅みたいに頭良くないから、理系コースなんて無理だわ。美柑は?」


「わたし?」


桜井は悩んだ。

桜井もまだ夢は決まっていない。

一生のスキルになる英語を身に着けて、弟の学費を稼ぎたいと漠然と考えてはいたが、そうなるためにはどんな職業につたらいいかまでは考えていなかった。


大きな交差点まで来て、夏梅は右に曲がった。


「じゃあ、わたしはここで」


信号が青になり、桜井と桃瀬は横断歩道を渡りながら、夏梅に手を振った。


「じゃーね。また明日。また、何か有益な情報あったら教えてねー」


「あんたたち、寄り道するんじゃないわよー」


桜井と桃瀬を見送りながら、学級委員長として注意をした。


「ふん、あの子たち、やっぱりわたしのような人間がいなければ、進路も決められないのね」


そう言いながらも、夏梅は桜井たちに頼られたのがちょっぴり嬉しかった。



 一方で桃瀬は、歩きながら桜井に話しかけた。


「夏梅ってさぁ、いつも真面目過ぎるから友達いないんだよね」


「いいんじゃない? あれでもうちらと友達だと思ってるんだから」


「痛い奴。……あれ、美柑、どこかへ寄り道するの? 駅に向かってるけど」


「週一回、サトシ先生の実家に行くのよ」


「え、前に聞いたけど、また先生の実家に行くの? 英会話の特訓?」


二週間前、サトシの実家で強制的に英会話に参加させられてから、週一回はレイコ姉さんから英語を教えてもらうことになっていた。


「美柑、英会話の特訓って大変だね。よくやるわ」


「特訓? ああ、そういえば最初はそうだったわね」


「え、違うの?」


「それが、お姉さまに英語を教わっている途中でさ、『お腹が空いたね』って話になって、『じゃ、わたしが何か作ります』、なんてやっているうちに、いつの間にか週一回ご飯を作りに行くことになったんだよね」


「ええええ! 美柑、それって、ただのお手伝いさんじゃないの!」


「そういえばそうね。ハルちゃんに言われるまで気が付かなかったわ」


「美柑、お人よしね。それで? サトシ先生は実家に食べに来るの?」


「さぁ、知らない。わたし弟がいるから、先生が来る前に帰っちゃうし」


「すれ違いなの? あああ、完全にただのお手伝いさんになってるわ」


「でもね、わたしにとって問題はそこじゃないのよ」


「何、他に何か問題があるの?」


「お母様よ。すんごく美人なお母様でさ、『サトシの教え子なんだから、もっと可愛いお嬢さんかと思ったわ』なんて言われちゃって」


「何それ! まあ確かに、サトシ先生のお姉さまって綺麗な方だし、従妹の友梨奈ちゃんも美少女だしね。先生の家系は美形なのかも」


「でしょ? わたし、英語もできなければ美形でもないし。誇れることといったら炊事洗濯くらいよ」


「ううう……でも、随分じゃない? もう、やめちゃいなよサトシ先生なんか。無理して一緒になっても、そんなババァと暮らすなんて地獄じゃん」


「一緒に暮らさないわよ、ハルちゃん。話が飛躍しすぎ」


「で、サトシ先生のお母さまって、綺麗な方なの?」


「すごいよー」


「見てみたーい」


「じゃ、来る?」


「うん!」





 桜井は、桃瀬と一緒にサトシの実家を訪れた。


「懐かしい。柚木くんと一緒にサトシ先生を追いかけたことを思い出すわ」


ピンポーン


インターホンを押すと、玄関扉が開いてレイコ姉さんが顔を出した。


「いらっしゃい、桜井さん。あら、桃瀬さんも一緒?」


「こんにちは。あの、ハルちゃんがどうしてもって言うもんだから、連れて来ちゃいました」


「ご無沙汰しております。今日は美柑のお手伝いにやってきました」




 サトシの実家のリビングに通された桜井は、さっそくエプロンを締め始めた。


「美柑、もう始めるの? 早くない? もうちょっとゆっくりお話でも」


レイコ姉さんは、キッチンからジュースを運んで来た。


「ごめんねー、桜井さん。わたし、今ちょっと仕事中だから部屋にこもるけど、ゆっくりしてらして」


桃瀬も桜井も、自宅で仕事だというレイコ姉さんが謎だった。


「お姉さま、お仕事って? ご自宅で何をしてらっしゃるんですか?」


「海外の会社から翻訳や通訳の仕事を受けて、パソコンでやり取りしているのよ。まあ、フリーランスなんだけどね」


「かっこいい! そんな働き方があるんだ。すごいよね、美柑。美柑もそうなりなよ!」


挿絵(By みてみん)



 すると、リビングにサトシの母が姿を現した。


「レイコみたいになるには、大学くらい出ていないとね。それに、画面を通して仕事するから、それなりに容姿端麗でなくては」


サトシの母は、緩くパーマのかかった長い髪をトップでまとめ上げ、バラ模様のふんわりとしたワンピースに太めの黒ベルトをおしゃれに決めていた。


桃瀬はその美貌に驚いた。


「はじめまして。わたし、桜井さんと同じ、サトシ先生のクラスの桃瀬春奈といいます」


「はじめまして。あなたもサトシの教え子なの? 白金女子学園ってこの程度の子が揃っている学校なのね」


サトシの母はクスッと笑った。


笑われた桃瀬は、カチンときて言い返した。


「あらー、友梨奈ちゃんと似てらっしゃいますわ。外見にも言葉にも、棘があるところなんてそっくり!」


「ハルちゃん、やめて」


レイコ姉さんも母をたしなめた。


「お母様、もうちょっと普段着にしたら? 桜井さんが来るからってわざわざ着替えなくてもいいのに」


「あら、レイコ。これ、普段着よ」


「まーったく! いい加減に若作り止めてよね。もういい歳なんだから」


「レイコ!」


「じゃ、わたし、部屋で仕事してくるわねー」


レイコ姉さんは、母にくぎを刺すと、後はさっさと自分の部屋へと逃げた。



 桜井も逃げるようにキッチンに向かった。

桃瀬もこの母親から逃げるために桜井の後を追って、キッチンにやってきた。


「すごいねー。先生のお母さまって」


「でしょ。リビングにいたら神経削られるから、キッチンに避難するのが一番よ」


「なんで? 美柑。そこまでしてここに通うのよ」


「だって、悔しいじゃない。わたしだってレイコ姉さんみたいになりたいよ。美人で英語ができて、海外の会社と仕事して……」


「それって、美柑の夢じゃん」


「そっか、そうだったわ」


「じゃ、文系コースにする?」


「ううううん、お母さまの言う通り大学を出たいけど、その前にうちは資金的に無理かもしれないし」


「じゃ、なんでここに来てるのよ」


「だって、好きな人のお母さんを好きになれないなんて悲しくない? あのお母様とうまくやってみせる。もっときれいになって、英語もできるようになって見返したいのよ」


「おおおおおー、美柑」


「ハルちゃん、突っ立ってないで、ジャガイモの皮向きお願いね!」


「は、はい!」


桜井美柑は、進路で悩む高校生だ。

しかし、進路の前に、まず目の前のラスボスを倒すことに必死だった。


「面白い! サトシ先生が気になる」

「この続きはどうなるの? この先の美柑を読みたい!」

「サトシ先生、更新したら通知が欲しいです!」

「先生、応援の仕方を教えてください」


「では、先生から応援する方法を教えましょう。

面白いなぁと思った生徒は、こんな方法があるからよく聞くように。

ブックマークや、『☆』を『★★★★★』に評価して下さると作者のモチベーションアップに繋がります。はい、ここ重要ですからね。テストに出まーす!わかりましたかー?」


「はーい」


「よろしく頼みますよ、みなさん」




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