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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第二章 一年二学期

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第69話 LINE 青柳先生いたよ


 ある日曜日。

その日は学校説明会だった。

サトシは、体育館入り口で来訪した父兄や中学生にパンフレットを配っていた。

学校説明会は校長挨拶、教頭兼生活指導部主任からの説明、教務から進学進路についての説明と流れ、学校の様子のスライド写真、最後に白金祭ダンスパフォーマンス動画を流した。


型通りの説明会が終わると、古松川先生は疲れた様子だった。


「なんだかね。型通りの説明会やっても面白くないですね」


「古松川先生が、そんなことを言うなんて」


サトシは先輩が愚痴をこぼすところを初めて見た気がした。


「今日来てくれた、ご父兄の方々や中学生。一番興味を示したのはスライドと動画ですよ。

やはり、在校生の生の声と姿があったほうがいいんじゃないかな」


「最後のスライドと動画はわたしが無理やり提案したんですけど、マズかったですかね」


「いや、もっとやるべき。というか、今どきの中学生とそのご父兄の感覚と、うちの上層部の感覚がズレているんですよ。もっと、いいアイディアはないですかね。青柳先生がいてくれたら、いいアイディアを出しそうな気がしませんか?」


「そうですね」


「なんとか、彼を呼び戻せないでしょうかね」


そうは言っても、もう青柳先生は辞めてしまったし、本人があれだけ嫌な思いをしたのだから、呼び戻したくても難しいことは明らかだった。

白金女子学園にとって、青柳先生失ったことは大きな痛手かもしれないと、サトシは思った。




 説明会の片付けが終わって、サトシは職員室で自分の席に座り、やっと休憩をとった。

自分のスマホを見てみると、LINEの通知がたくさん来ていた。


(なんだこれは。ん? 桜井からか。日曜日にふざけたことをしやがって。しょうがないな)


サトシはLINEを開いた。


:青柳先生、いたよ

:青柳先生がユーリン書店にいるけど、学校辞めたんだっけ?

:サトシ先生、寝てるの? 返信ちょうだい


サトシは、冒頭に青柳先生という文字をみて驚いた。

先日内緒でLINE交換をしてから、初めてもらう桜井からのLINEがこれだ。

桜井は、サトシが日曜日でも学校説明会で出勤していることを知らなかったのだ。


(さっきまで噂していた青柳先生か。そりゃ、青柳先生だって本屋くらい行くだろう。わざわざLINEしてくるようなことじゃないっつーの)


サトシは、まだ何通もあるメールを読み続けた。


:青柳先生にデートに誘われた!


ブッ!!


サトシは飲んでいたコーヒーを吹いた。

古松川先生が、驚いてティッシュペーパーの箱を持ってきて、


「サトシ先生、大丈夫ですか!? アンケート用紙、アンケート用紙にコーヒーが……」


「あ、すみません。あわわわわわ……」


アンケート用紙にこぼしたコーヒーを拭いてから、古松川先生に見えないようにそっとLINEの続きを目で追った。


:映画でも観ようかって……断るよ、いいよね?

:なんで返信してくれないの?

:とりあえず、断ったけど、今度はお茶しようって誘うんだけど……

:結構、しつこい

:何も返信ないから、行っちゃうよ

:お茶するだけだから、大丈夫だよね

:(スタンプ)号泣


受信時刻を確認すると、二時間前に送られてきたLINEだった。


サトシは急いで返信した。


:今日は学校説明会で出勤日 LINEいま読んだ いまどこ?


しばらく待ったが、桜井からの返信はない。


(何やってるんだ。隙だらけなんだよ、あいつは!)


青柳先生は元ここの臨時講師だから、心配はないと思う反面、サトシはだんだん不安になってきた。


(高校生をデートに誘うとはどういうことだ。俺だってまだデートに誘ったことはないのに)


サトシの記憶の中で、工藤の家に桜井と一緒に行ったことは、デートの分類に入らない。


たまたま今日は日曜日で、授業が無いから、説明会が終わったら帰れる日だった。

サトシは、急いで机の上を片付け始めた。


「あれ? サトシ先生、もう帰ります?」


「古松川先生、すみません。アンケート集計は明日やりますから」


「そう。じゃ、途中まで一緒に帰りましょう」


「すみません。急ぎますので、お先に失礼します」


「おや、急ぎの用事ですか。じゃ、青柳先生の件、考えておいてもらえますか?」


青柳先生という名前を聞いただけで、サトシの眉間にしわが寄った。


「それは無いです!」


「急にどうしたんです」


「お疲れ様でしたー」


サトシは急いで学校を出て、歩きながら桜井に電話した。

何度コール音がしても、桜井は電話に出ない。


(何やってんだ、あいつ)


サトシの中で、悪い妄想がふくらんできた。


(お茶するだけだと言って、他の場所に移動してるんじゃないだろうか。もしかして、映画館に二人で入ったとか。あるいは、車でドライブしているとか。そんでもって、桜井の行きたいところならどこへでもつれて行くよとか言って、海岸線を走っているとか)


サトシは、青柳先生が桜井を遠くまで連れて行ってしまいそうで不安でたまらなかった。


(桜井に手をだしたら、黙ってないからな)


不安と妄想は、サトシの中でドロドロの黒いものになって、怒りに変わった。

桜井がLINEしていた、ユーリン書店まで来た。

その辺にまだいるかもしれないと、店内を探すが、二時間も経っていては当然のことながらそこにはいない。


ユーリン書店の近くで喫茶店を見つけると、片っ端から入って店内を確認した。


「いらっしゃいませー。おひとり様ですか?」


「いや、いいです。すみません」


サトシは、桜井に何かあったらどうしようと気が気ではなかった。

探し歩きながら、何度目かの電話をした。


トゥルル、トゥルル、トゥルル……


コール音がむなしく続くだけ。

すると、突然


「はい」


繋がった。


「桜井か?」


「サトシ先生」


「今、どこにいる」


「えーーーっと、言ってもいいのかなぁ」


桜井の言葉に、サトシはサー―っと血の気が引いた。


「なんだと? 言えないような場所にいるのか」


「えっとぉ、サトシ先生の実家」


「じっかぁぁぁーーーー?!」


サトシの声はひっくり返り、軽く目まいがした。


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