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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第二章 一年二学期

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第68話 ゆとり世代の青柳先生②


 一年A組のダンス動画は、校長室で鑑賞されることになった。


教頭は動画投稿に関して、猛反対してきた。


「まあ! このように堂々と制服を校則違反している動画なんて不謹慎です。こんな生徒が白金女子学園にいると言っているようなものじゃないですかっ!」


教頭に反対されることは、想定内だ。

サトシは動画をアップする有意義さを訴えた。


「教頭先生。古式ゆかしい伝統も大切ですが、今の時代、受験生を集めるにはSNSは有効な手段です。若者に刺さる動画をあげ、注目してもらうこと。これは営業上の作戦です」


「サトシ先生! 自分の受け持ちの生徒たちだからって、ダンスを贔屓しすぎじゃないですか? 他の生徒たちの活躍はどうなんです」


「それは、学校のホームページ上に、このように写真を掲載します」


「他の展示物やフードコーナーの動画はどうなんです?」


「撮影しましたが、一般客が映ってしまうと顔にモザイクをかけなければ、投稿できませんから」


教頭が変化球を投げても、みごとに打ち返してくるサトシに、教頭はいらだった。


「では……、教務の五十嵐先生は、どう思いますか?」


「教頭先生の意見はもっともだと思います。けれども、サトシ先生の言うのも納得できます。どういうやり方が、一番白金女子学園らしいのでしょうかね」


「それは、うちの校訓である、“女性の自立と知性・理性・品格”の理念を表現したものです。でなければ、認めるわけにいきません!」


すると、五十嵐先生は最終判断を校長に委ねた。


「校長先生はどのように思いますか?」


校長は、じっと考えながらサトシ先生の企画書を眺めていたが、机の引き出しからハンコを取り出してポンと判を押した。


―採用


「非常にいいですね。許可します」


校長の出した答えに教頭は慌てた。


「いいんですか? 校長先生。この学校の理念は……」


「教頭先生、この画面の生徒たちの表情を見たかね? 実に楽しそうじゃないですか。歓声をあげて応援している生徒も、拍手を送り続ける生徒もじつに青春だ。わたしは、白金女子学園の生徒たちが輝いている姿をアピールすること、それが一番だと思います。そうじゃないかな?」


校長は優しく微笑んで、サトシに企画書を返した。


「ありがとうございます。校長先生。この動画編集は青柳先生がやってくれました」


「ほう、彼にそんな才能があったのか。……長年働いてくれている先生も、若手の先生も、この学校のことを思って行動してくれていることに変わりはありません。これからは、若手の意見をどんどん聞いて取り入れていくことも、必要ですね」


「ありがとうございます!」


サトシは、校長の声を早く青柳先生に伝えたかった。




 次の朝、出勤してくると、職員室は大騒ぎになっていた。


「どうかしたんですか? みなさん」


「あ、サトシ先生、大変ですよ」


古松川先生と大山先生が、サトシの側に駆け寄って来た。


「青柳先生が、出勤してきたと思ったら、突然休職届を出して帰ってしまったんです」


「なんだって?!」


「サトシ先生は青柳先生とうまくやっていたから、何か悩みでも聞いていたのでは」


「ああ、少しだけ……」


「とにかく、青柳先生を引き留めてください、サトシ先生」


サトシは先生方に頼まれて、青柳先生に電話をすることになった。

連絡先を探している間も、教頭の咆哮が聞こえてくる。


「二学年の大事な時期にどういうことですか! 五十嵐先生は青柳先生をしっかり指導してなかったんですか!」


工藤のクラスを代打で受け持っていた五十嵐先生は、副担任だった青柳先生の責任を問われた。



 電話がつながった。


「青柳先生、大丈夫ですか? サトシです。何か病気にでもなったんですか?」


―「いえ、別に」


「初めて副担任になって、疲れたんですよね。少し休んだらまた……」


―「あんな環境、やってられません! 面倒な事はみんな若手に押し付けて、副担任でも大変なのに、とても担任なんかできませんよ。サトシ先生みたいになんでも器用になんか、僕には無理です。もう辞めます」


ブツッ


電話は一方的に切られた。


もう少し悩みを聞き出せていたら、もう一日早く動画を校長に見せていたら……。

青柳先生をここまで追い込んでしまった責任が自分にもある気がして、サトシは後悔した。

悔しかった。



 その日は一日、何をしても身が入らなかった。

桜井は、サトシがいつもと違う様子であることに気がついた。

生徒の間でも、青柳先生は辞めたのではないかという噂は広まっていた。


桜井は購買部で自分が食べる用にパンを買って、作ってきたお弁当はサトシに渡そうと職員室を訪ねた。


「サトシ先生、これでも食べて元気出してください」


「桜井、どうしたんですか? 急に」


「わたしには言えない事情があると思うんですけどぉ、先生が沈んでるとわたしもつまんない。そんなことより、お弁当のおかずにね、あれ! あの卵焼き入っているからっ」


「桜井……」


「動画を公開したら、また青柳先生に連絡してみたらいいんじゃないですか? よくわかんないけど」


「ああ、ありがとう」


桜井の気遣いには感謝した。

だが、過去につぶれた経験があるサトシは、自分なら青柳先生の一番の理解者になれたかもしれないのにと、後悔の念がぬぐえない。


そんなサトシを勇気づけようと、桜井は何の裏付けもなく、「大丈夫だよ」と言う。


「絶対、あの動画をバズらせてやりましょうよ。きっと青柳先生は喜ぶと思うけどなぁ」


そう言いながら、桜井はお弁当の包みを解いて、お弁当箱の蓋をあけてみせた。

すると、サトシの大好きな卵焼きが五切れも入っていた。


「うわっ、まるで卵焼き弁当じゃないか」


職員室の他の教員も、思わず桜井が持ってきたお弁当に注目した。

注目されると、桜井は小さく「すみません」と言ってサトシから離れた。

それから、満面の笑みでピースサインをすると、職員室から出て行った。


(なんだ、あいつ。なんで、俺がして欲しいことが、いつもわかるんだよ)


いかがでしたでしょうか。


「面白い! サトシ先生が気になる」

「この続きはどうなるの? この先の美柑を読みたい!」

「サトシ先生、更新したら通知が欲しいです!」

「先生、応援の仕方を教えてください」


「では、先生から応援する方法を教えましょう。

面白いなぁと思った生徒は、こんな方法があるからよく聞くように。

ブックマークや、『☆』を『★★★★★』に評価して下さると作者のモチベーションアップに繋がります。はい、ここ重要ですからね。テストに出まーす!わかりましたかー?」


「はーい」


「よろしく頼みますよ、みなさん」




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