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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第二章 一年二学期

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第65話 白金祭③ 写真撮影会

挿絵(By みてみん)


「ふん、何よ! 桜井さんったら、サーちゃんにお姫様抱っこさせて。あの振り付けは、きっと桜井さんが考えたんでしょ。面白くない。友梨奈、もう帰る!」


 一年A組のダンスパフォーマンスを観た友梨奈は、憤慨していた。

レイコ姉さんは、サトシが受け持ちのクラスのダンスに協力するとは聞いていたが、まさかサトシ自身が出演するとは思っていなかった。

そして、ラストのポーズが桜井をお姫様抱っこ。

レイコ姉さんにしてみると、それは嬉しい誤算だった。


「友梨奈ちゃん、もうちょっとここにいましょうよ」


「レイコ姉さんだけ残ればいいわ」


プンプン怒りながら帰ろうとする友梨奈をレイコ姉さんは追いかけた。


「サトシが一生懸命やったダンスパフォーマンスよ。素晴らしかったと思わない?」


「わかってるわよ。サーちゃんが桜井さんを見る目……」


友梨奈はふと立ち止まり、納得がいかない現実を突きつけられた瞬間を思い出した。


「悔しいけど、桜井さんはサーちゃんにとって大切な人……なんでしょうね」


「友梨奈ちゃん」


「あ~あ、つまんない。パパとママと一緒にアメリカ行けばよかった! そうだわ、アメリカへ行こう。パパに電話してそうしてもらうわ」


友梨奈は、幼いころからの憧れから吹っ切れたようにまた歩き始めた。




 友梨奈が帰ろうとしていたその頃。

体育館の横では、一年A組が記念撮影をしていた。

全員の記念撮影が終わると、待っていましたとばかりに、一緒に写真を撮りたい生徒が柚木の周りに集まってきた。

柚木は丁寧に一人ずつリクエストにこたえる形で、写真撮影に応じていると、いつの間にかお姫様抱っこをしてもらいたい生徒で行列ができていた。


「もう、腕がプルプルして抱っこできないよー。限界……ですっ」


「ええーっ、そんなこと言わないで、あと一枚だけお願いします。うちの家宝にするので」


「こんなの家宝にして、罰当たりませんか?」




 撮影会の横では、若狭たちも順番を待っていた。

若狭も友達と一緒に一年A組のダンスを観ていた。

もちろん、桜井美柑に会うために白金祭に来たのだから、サトシの登場シーンは軽くショックだった。


「おい、若狭。おまえ、あの男装の生徒と写真撮るのか?」


「違うよ。あの中に友達がいるからさ、女生徒のほうだよ」


「あああ、わかるーーー。あの男装とペアを組んでた子だろ。可愛かったよな」


「違うけど。桃瀬さんじゃない方の……」


「なんだ若狭、お前、あの子の名前知ってんの? あの可愛い子と友達だったとは、お前も隅に置けないな」


「俺たちも一緒に、その桃瀬さんやらと写真を撮りたいよ。紹介しろよ」


若狭は困った。

確かに、桃瀬も友達だが、目的は桜井美柑だからだ。


そのうち若狭の友達の順番が回って来て、桃瀬に写真撮影をお願いした。


「すみません、一緒に写真撮ってもらえませんか?」


「え、嫌だ、わたしですかぁー?」


「ええ、こいつの友達だと聞いたもので、図々しいですが」


友達の陰から、若狭が顔を出した。


「よっ! こんちは」


「あら、若狭くん」


「おおおおおお、本当に友達だったんだ」


「若狭くん、美柑ならいないわよ」


「え? そうなの? せっかく会いにきたのに」


「写真撮影、わたしで我慢しなさいよ」


友達がざわついた。


「若狭、この可愛い子以外に本命がいるとでも」


「我慢だなんてそんな……、悪いけど桃瀬さん、こいつらと写真撮影に応じてくれ」


「若狭くんの頼みならしょうがないな。はーい、みなさん順番に撮りますよー」


挿絵(By みてみん)


 この撮影会場には、夏梅も来ていた。


「呆れた。何なのよ、このくだらない撮影会は。こんなの予定にないわよ。不謹慎だわ。そもそも一番重要な役目を任されたのはわたしなのに、ステージで見ないだけでわたしを完全無視とはどういうこと!?」


そんな夏梅は、女生徒たちと写真撮影している横で誰かを探している若狭に気が付いた。


「あら、あなた。K大付属の生徒ですわね」


「え、私服で来ているのに、なんで学校がばれてんの?」


「あなた、校門で桜井さんを待っていた生徒だわ。今日は校内に堂々と入って来れて、よかったですわね」


「ああ、あの時、美柑を呼んできてくれた人だ。その節は、どうもありがとうございました」


「いいえ、とんでもございません」


最初は若狭に利用されたと思って不機嫌な夏梅だったが、丁寧に礼を言われるとなんだか悪い気がしない。


「あの、そのぅ、校内を案内いたしましょうか?」


「そう言えば、あなたはダンスに加わらなかったんですか? ずっと脚立に乗って撮影していましたよね」


「あ、見ていてくださったんですか? そ、そうなんです。わたしが踊ると盆踊りになるから……って、違うわよ。学級委員長として、広報の仕事を任されたんです!」


夏梅は胸を張って堂々と答えた。


(裏方に徹していた姿を見てくれる人がいたなんて、もう最高潮に嬉しい)


「盆踊り? 今、盆踊りって言いました?」


「言ってないわよ、そんなこと」


「いや、確かに言いましたよ。盆踊りっていいですよね。僕は大好きですよ。盆踊りを踊れる人を尊敬します」


「え、まぁ、得意といえば得意かも……」


「素晴らしいじゃないですか! 同じ趣味の人と初めて会えた」


意外な共通点があった夏梅と若狭だった。


「あの、よろしかったらわたしが写真撮影に応じてもよろしくてよ」


「マジですか? 嬉しいです。よろしくお願いいたします!」


若狭は同じ趣味を持つ人と巡り合えて興奮し、その時は桜井美柑のことを忘れることが出来た。





 サトシは二年生の教室の展示物コーナーを撮影していた。


「あ、サトシ先生だ。美柑がいないんですけど、どこに行ったか知りませんか?」


声をかけてきたのは、一ノ瀬だった。

大好評だったダンスパフォーマンスについて、インタビューしたいと新聞部の先輩に声をかけられ、桜井を探しているのだと言う。


「桜井? さあ、先生は知らないですね。見つけたら、伝えておきますよ」


「よろしくお願いします。ったく、もう。美柑ったら自由人になってどっか行っちゃうんだから。ホントに何を考えているのかわからない子だわ」


一ノ瀬はブツブツ言いながら、桜井を探しに行った。


(確かに。あいつはときどき自由人になる。全く世話ばかりかけやがって)


サトシは桜井を探すため、教室を出て階段を上った。


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