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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第二章 一年二学期

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第59話 白金祭企画書

 白金女子学園の文化祭は、白金祭と呼ばれている。

ある日、一年A組で白金祭の催し物について話し合いがHRの時間にあった。


「このクラスでの催し物について、クラスでやりたいものを考えましょう。 皆さんで話し合って、その中からアイディアを絞って企画書を提出します。最終的に校長先生から認可されて決定します」


「はい、先生」


「何か質問ですか? 夏梅」


「自由に考えてもよろしいんでしょうか」


「基本的にはそうですが、他のクラスと被らないようにしないといけません。でも、それを意識しすぎると自由に発想ができないから、先生はそこは意識しなくてもいいかなと個人的に思っています」


「では、1Aはとりあえず自由に考えるという線で?」


サトシは夏梅の熱意を感じた。

担任に口出しさせないで、夏梅が主導で司会進行したいという熱意だ。


「夏梅、進行を頼みたいが、いいですか」


「もちろんです! では、まずみんな、自由にアイディアを出し合ってみましょう」


サトシは、生徒たちの自主性に任せることにして、教室の隅の方へ椅子を持っていき傍観することにした。


「やるんだったら、舞台劇はどうかしら」

「それは演劇部がやるんじゃないの?」

「演劇部とうちらじゃレべチ」

「じゃ、合唱とか」

「だめ、それも合唱部が」


桃瀬が夢見るような顔で提案した。


「コスプレ喫茶がいい。かわいいメイド服着てみたーい」


「うん、ハルちゃんなら、きっと似合うわ」


「柚木くん、ありがとう!」


「でも、わたしはきっとメイド服なんて似合わない」


「あら柚木くんなら、執事よ。かっこいいと思うよ。ねえ、美柑」


「どうでもいいわ」


「またー、美柑ったら、何が気に入らないのよ。いつまであの日の事を引きずってんの」


「はぁ? わたしが何を引きずっているっての?」


「少しはクラスのみんなと協調しなさいよ!」


「ハルちゃん、待った。そこまでにしとき!」


柚木は桜井と桃瀬の間に入って、喧嘩を止めた。

進行役を任されていた夏梅は、その様子を見てイライラしてきて爆発した。


「あなたたちっ! どうしてもっと白金女子学園らしいものを思いつかないの?! いい? 年に一度の白金祭なのよ!」


「コスプレ喫茶のどこがダメなのよ。じゃ、舞台劇でもする? 女子高生と教師との禁断の愛……」


「ハルちゃん! よしなって! ど直球すぎるわ。美柑がかわいそうよ」


桃瀬と柚木の言葉が、桜井を傷つけた。


「ハハハハハ、柚木くん、憐れんでくれてどうもありがと。でも余計なお世話よ」


サトシは内心ドキドキしながら、桜井たちの喧嘩を止めに入った。


「よしなさい。今は喧嘩する時間じゃありません。みんなで楽しく何かできれば、それでいいんじゃないですか」


桜井はぷいっとサトシから顔をそむけた。

サトシの胸はチクッと痛んだ。


クラスで話し合いしているうちに、誰かが言い出した。


「ねぇ、わたし達って体育祭で優勝したじゃない? あのときのチームワークで何かできないかしら」

「応援団の桜井さんって、かっこよかったねー」

「リレーの桜井さんも学校中の話題をかっさらっていったわ」

「桜井さんがリードして、みんなでダンスを踊るのもいいんじゃない」


夏梅はそろそろみんなのアイディアを黒板にまとめて書き始めた。


「お化け屋敷、コスプレ喫茶、舞台劇、内容がどれもハッキリしないわね」


夏梅が思い描く白金女子学園らしさが、感じられないと言う意味らしい。

桃瀬は自分のアイディアを推した。


「はい、コスプレ喫茶は、内容が具体的よ。楽しくなければ白金祭じゃないわ」


桃瀬の意見は筋が通っているが、クラスの声はそうではなかった。


「わたしは、ダンスがいいと思います。全員参加型で1Aらしいと思います」

「ノリのいいダンスがいいです。チックタックで流行っているような曲」

「あ、それならみんな、スマホで見て自宅でも練習できそうだね」

「何より楽しそう!」


クラスの波はダンスに流れそうだ。


「では、コスプレ喫茶とダンスを企画書に書いて提出してもいいんですか? サトシ先生はどう思いますか?」


「みんなが楽しいと思える企画書を二枚出してみて、校長先生の判断に任せてはどうでしょう。企画の趣旨が他のクラスと被らない内容なら、どちらかが採用になると思いますよ」


「では、この二つですね。企画書は発案者の桃瀬さんと一ノ瀬さんにお願いします」


挿絵(By みてみん)


「ハルちゃん、企画書がんばって書こうね!」


柚木はコスプレ喫茶で執事の服を着てみたいから、桃瀬の案を応援した。


「ありがと、柚木くん。でも、ダンス企画って美柑が協力するような気がする」


桜井は桃瀬の意見が聞こえないふりをした。


「アホくさっ! わたしは、弟の世話があるからどこにも協力しない」


桜井がいつもと違ってずっと不機嫌で、桃瀬たちとの関係が悪くなっていることに、サトシは薄々感づいていた。

そして、それは自分のせいかもしれないと思うと、気軽に声をかけることもできないでいた。

なんとかしなければと思いながら、何も出来ないまま、ただ日々が過ぎて行った。




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