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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第一章 一年一学期

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第30話 女生徒SIDE:夏休み補習授業

 夏休みに入った初日、桜井美柑は桃瀬春奈と一緒に登校した。

英数国の三科目で赤点をとった生徒は、夏休みに補習を受けることになっていたからだ。


一時限目 英語

二時限目 国語

三時限目 数学


桜井美柑と桃瀬春奈は、補習が行われる三階の教室で補習の開始を待っていた。


「しかし、くそ暑いわ。なんでこのクソ暑い中、学校に来なきゃいけないのよ」


「ハルちゃん、それって、赤点さえ取っていなければ問題なくね?」


「ってかさぁ、美柑も英語が赤点だったの? 英語はサトシ先生の教科だから頑張って勉強するって言ってたのに」


「わかんなーい。何も考えてなーい。ハルちゃんと柚木くんが補習を受けると聞いたら、わたしも受けるんだろうなーと思ってさ。それに、家にいるよりもハルちゃんといた方が楽しいし」


「何それ、ウケるんだけど。補習だよ補習。本当のところはどうなのよ。サトシ先生に会いたかったんじゃないの?」


「え? そんなことないよ」


「みんなでサトシ先生の家に行った日の後日談。わたしまだ美柑から聞いてないんだけど」


「は? 後日談も何もないよ。家のアパートまで送ってもらって、はい、さようならだし」


「ふーん、その辺で別れたんじゃなくて、家にまで送ってもらったんだ」


「あれ? 誘導尋問にひっかかった」


「ちゃう、ちゃう。美柑が自分で言ったんじゃん」


「だってさ、サトシ先生が商店街には酔っ払いがいて危険だからって言うから、家まで……」


「ふぅーん、サトシ先生、美柑にずいぶんと優しいんだね」


「そお? 普通だと思うけど……」


実はサトシが家でご飯を食べて、しかも弟と遊んだことは、桃瀬にも言えなかった。

サトシの教師という立場を考えて、いくら友達でも内緒にしておいたほうがいいと思い、その件は伏せておいた。


(サトシ先生に迷惑をかけられないもんね)




「それからさぁ、美柑ってさ、お弁当を二つ持ってきた日あったよね」


「そんなことあったっけ」


「誰のために作ったのかな、あのお弁当は。……怪しい。さっさと白状なさい、美柑!」


「ハルちゃんには負けたわ。負けました。あのお弁当は、サトシ先生が熱を出してお休みしていたから、先生の家まで持って行って渡しましたぁ!」


「へえ、やるじゃん、美柑」


「ところがなのよ! ちょっと聞いてよ、ハルちゃん! 先生の家から聖ルチア女学館の生徒が出て来たのよ。信じられる? ありえないっしょー」


「まあ、それは……サトシ先生は、実はタラシだったってこと? 同じ女生徒がいるってどういう意味?」


「まあまあ可愛い子だったんだけどね、すっごい性格悪そうな子だったわ。なんであんな生徒がいるんだろね。で、結局、サトシ先生には会えなくてさ。『このお弁当を渡してください』ってその生徒にお願いしたの」


「何それー! 誰よその女!」


「『サーちゃんは、友梨奈の従兄なの』だってさ。自分のことを友梨奈って言って、サトシ先生のことはサーちゃんって呼ぶバカ女だったわ。なんか白金女子学園を見下したように、クスッなんて笑っちゃって」


「なんか、ムカつくーー。それにしても、どうしてお嬢様学校の生徒が先生の家にいたのかしら。美柑、気を付けなよ。従兄関係でも結婚は出来るんだからね」


「結婚? そういえばあのバカ女、『本当のこと言うと、サーちゃんは聖ルチア女学館の先生になるはずだった』って。それって、もしかするともしかする?」


「そんなこと言ってたの?! それは、もしかするともしかするわ」


「さ・い・あ・く……。ああ、つらい。なんだかお腹も痛くなってきた。最悪だよ。今日は生理二日目なんだ」


「バカね、美柑。あんたは人よりも生理が重いんだから、補習なんか無視すればよかったのに」


「そうは行かないわよ。だって、サトシ先生の補習なのよ。休むわけないじゃん」


桜井は生理二日目でかなり辛かったが、サトシに会いたくて学校に来ていた。


「ハルちゃん。ところで、柚木くんは?」


「あれ? 部活じゃないの?」


「へえ、柚木君、赤点じゃなかったんだ」


「意外と勉強していたんだね。柚木くんったら」




「ねえ、ねえ、ハルちゃん。ハルちゃんってさ、補習受ける教科は英語だけ?」


「それが、英語と数学なの。二時限目が空いちゃうんだよね。数学まで何してよっかなぁ」


「何していようかって、自習しているんじゃないの?」


「やっぱ、そうか。途中で学校抜けだしたら怒られる?」


「さすがに、それはダメでしょ。学校抜けだしてどこ行くつもりよ」


「コンビニ。アイスでも買おうっかなと思ってさ」


「あ、いいねそれ。ってか、わたしアレ忘れたから、コンビニに一緒に行っていい? 購買部休みでしょ。ったく、二日目で重いから、思考能力も落ちて忘れるんだよね」


「美柑、生理の二日目なのにナプキン忘れたの? わたし持ってるよ。あげようか」


「ありがとう、ハルちゃん! 救世主」


「ってか、具合悪いんならマジで帰れば?」


「えー! だって、サトシ先生に会いたいし……そのために必死こいて、登校したようなもんよ。」


「美柑の気持ちはわかるけどさ。だいたい、そんな青白い顔で会ってもしょうがないじゃん」


「げっ、そんなにひどい顔してるの? わたし」


「うん。まるで百年の恋も冷めちゃう顔だよ」


「えええーーん、どうしよう。ハルちゃん、色付きリップ持ってない?」


「しょうがないわね。はい、ナプキンとリップ。早くトイレ行ってきなさいよ。一時限目が始まっちゃうよ」


「サンキュ! ハルちゃん。恩に着るわ」


桜井は、桃瀬から生理用ナプキンとリップクリームを受け取ると、トイレへと急いだ。

サトシが教室に来るまでに、なんとか元気な自分になりたくて桜井は必死だった。


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