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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第一章 一年一学期

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第29話 夏休み直前に

 「採点済みの期末テストを返します」


「えー、最悪。どうしよう絶対赤点だー」

「きゃー、何点か見るのが恐ーい」


一年A組の生徒たちが期末テストの英語の返却にざわついていた。


「はーい、静かに。名前を呼ばれたらとりにきてくださーい。ほら、静かにしないと名前が聞こえないですよ」


サトシは採点結果を記録し、自分のクラスの平均点は把握していた。

一年生英語の学年平均は65点、1A平均64,5点。

作ったテスト内容としてはまあまあかと思ったが、自分のクラスが平均点をやや下回ったのは残念だ。

何がいけなかったのか、教え方に問題があったのかと悩んでいた。


「桜井美柑」


「はい」


「まだまだ本気出していないでしょう。桜井ならやれば出来るはずです」


桜井美柑58点。赤点ではないが、決して褒められる点数ではない。

もう少し勉強してくれれば、伸びるのにとサトシは思っていた。


「ありがとうございます」


桜井美柑はそう言って、テストを受け取った。

サトシが説教めいたことを言ったにもかかわらず、桜井は受け取る時にありがとうと返事した。

おそらく、無意識に出た言葉かもしれない。

たとえ無意識だとしても、ありがとうと言われて悪い気はしない。

ほとんどの生徒が無言でテストを受け取る中、桜井が言った「ありがとうございます」が、サトシの頭の中で、リフレインしていた。


(なんだよ。めっちゃいい子じゃん)


夏梅京子95点、桃瀬春奈34点、柚木カオル32点。

夏梅はともかく、追っかけ隊の奴らは全滅だった。


(俺を追っかけている暇があるなら、勉強しろと注意すべきだったな)


「では、テストの解説をします。ここでしっかりと、自分のミスを見直すことが大事ですからね」


サトシは夏休み前の授業はほとんどテスト解説に使った。

生徒たちは、真剣に解説を聞いている。

ひととおり解説が終わってから、採点ミスがなかったか生徒に聞いてみた。


「はい、では採点ミスが見つかったら来てくださーい」


いつもなら、ここでサトシの採点ミスを見つけた生徒が数人教壇の前に並ぶのだが、今回は誰ひとり並ばなかった。


(さすが工藤、採点ミスがない。完璧じゃん)


「採点ミスないですかー? なければ、何か質問ある人はいませんか?」


数人が手を挙げて質問してきた。

その質問について解説したあと、少し授業時間が余ったので、サトシは生徒たちの席の間を歩いてみる。 

手を挙げて質問できなくても、近くを歩くと質問してくる生徒が必ずいるからだ。

一人一人の疑問に答えて教えて回っていた。


(桜井も、こういうときに俺を呼び止めて質問して来ればいいのに……)


サトシは心の中でそう思いながら、桜井の席を通過した。


「では、今回赤点だった生徒は、夏休みの第一日目に補習があります。補習のあとに追試をします。補習の機会に、苦手だなという気持ちが少しでもなくなるように頑張りましょう。では、今日はここまでです」





 職員室に戻ると、工藤がいた。

子どもが生まれたばかりの工藤は、当初の予定通り、育休に入るために引き継ぎ事項などをまとめていた。


「工藤。お疲れ様。第一子誕生おめでとう」


「おう、サトシ。悪いな、育休入るから、二年生の夏休み講習をちょっと引き継いで欲しいのだけど」


「ああ、いいよ。工藤の期末テストの採点は完璧だったからな。誰も採点ミスと言ってこなかったぞ。ありがとうな」


「そうか、よかった」


「でも、育休と夏休みが重なってよかったな。授業が無い時期だから、ちょうどよかったじゃないか」


「あ、ああ……、この時期を狙って仕込みしたからな」


「……! お前、俺の前でよくそういうことを言えるよな」


「アホだなー、冗談に決まってるじゃん。育休は一年とるつもりだ」


「いくら冗談でも、よくない冗談だ。でも、よく一年も育休とれたな」


「ここの校長先生が理解してくれたからさ。今後、先生たちが育休をとりやすくするための先駆者になってくださいってさ。将来、サトシが育休取る時がきたら取りやすいだろ。」


「ああ残念だけど、その時は永久に来ないかも」


「え、そんなぁ。誰かいい人いないのか? 女子高生に人気のお前だから、卒業生の一人や二人くらい、連絡が来たりして会ったりしないのか」


「無いね。全く」


「それは意外」


「卒業したら、皆、自分の周りにはイケメンがいっぱいいると言うことに気が付くんだよ。ここは井の中。井の中の蛙大海を知らず。大海に出たら、アメンボのことなんか忘れてしまうんだよ」


「サトシはアメンボか。確かに、生徒に対して当たり障りのない存在でいるもんなぁ。教師の鏡だよ」


「んーー、褒められている気がしない」





 サトシと工藤がそんなことを話していると、教務の五十嵐先生から夏休み予定を申請する紙を渡された。


「サトシ先生、夏休み期間中、この時期は絶対休みますという日に×印をつけておいてください。出勤可能な日は〇印でお願いしまーす」


「はい、工藤先生の二年英語の補習授業は、わたしが担当します。それでよろしいでしょうか」


「そうですね、お願いします。工藤先生の代わりの先生が決まるまで、サトシ先生ということで。まあ、夏休みなので補習をやっているうちに、代わりの先生が来るでしょうが」


前もって育休を知らせていたことによって、学校側では臨時講師を見つけていた。

それにしても、工藤とは二学期から一年間は学校で会えないかと思うと、サトシは寂しくなってきた。


(まあ、いいか。二学期の事は二学期になってから考えよう。今考えてもしょうがない)






いかがでしたでしょうか。


「面白い! サトシ先生が気になる」

「この続きはどうなるの? この先の美柑を読みたい!」

「サトシ先生、更新したら通知が欲しいです!」

「先生、応援の仕方を教えてください」


「では、先生から応援する方法を教えましょう。

面白いなぁと思った生徒は、こんな方法があるからよく聞くように。

ブックマークや、『☆』を『★★★★★』に評価して下さると作者のモチベーションアップに繋がります。はい、ここ重要ですからね。テストに出まーす! わかりましたかー?」


「はーい」


「よろしく頼みますよ、みなさん」




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