表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第一章 一年一学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/273

第24話 ひまわりの花束

「はい、そうです。すみませんが、今日はお休みさせていただきます」


 サトシは、学校に欠席の連絡を入れ、電話を切った。

ふーっとため息を漏らすと、今度はフラフラしながら台所へ向かった。

台所に立って、しばらく考え込んでいた。

お湯ぐらい沸かした方がいいかと思ったが、立っているのもつらい

昨夜、心配して駆けつけてくれた姉が作ってくれたお粥が入った鍋の蓋を開けて見る。


(一晩たったら、糊になっている。とても食べる気がしない)


サトシは、食事をとることを諦めて再び寝室に戻った。


 いつのまにか、二度寝してしまったようだ。

部屋に差し込む太陽の光の具合を見るが、そんなに時間が経っていないように思えた。


「サトシ、おはよう」


玄関で姉の声がした。

姉はまっすぐ寝室に入って来て、ドアを開けて顔を見せた。

姉の手には、ひまわりの花束が握られている。


「レイコ姉さん、どうしたの花束なんか持って」


「フフフ、これねぇ、わたしからのお見舞い……と思った?」


「なんだよ、気持ち悪いなぁ」


「嘘よ。これね、郵便受けにさしてあったの。誰かがお見舞いのつもりで入れたんじゃないかしら」


「俺の家を知っているのは、レイコ姉さんと大山先生と……ああ、一年A組の三人組か」


「あら、四人組でしょ。桜井さん、桃瀬さん、柚木くん。そして、途中から夏梅さんという子も来たのよ」


「あ、そうか。夏梅のことはすっかり忘れていた。」


「その子たちからのお見舞いじゃないかしら。あるいは、その子たちのうちの一人でしょうね。」


「……」


(桜井か、まさかな……俺は何を考えているんだ。ちょっと弟さんと仲良くなったくらいで)


「サトシは、学校の先生にも生徒さんにも好かれているのね。安心したわ。父さんは激怒していたけど。

『小学生じゃあるまいし、学校ではしゃいで怪我して熱を出すとは!』

ですってよ」


「父さんの話は聞きたくない」


「ごめんなさい。サトシにとって父さんは地雷だったわね」


白金女子学園を三流校と言った父の事など、考えるのも嫌だった。

姉は、話題を変えようとして、最近の身内の話題を話し始めた。


「そうそう、シゲルおじさんがね、しばらくアメリカへ行くんですって」


シゲルおじさんとは、サトシの父の弟で有名企業の社長をしている。


「シゲルおじさんも忙しい人だなぁ」


「話は、それだけじゃないの。シゲルおじさんとこの友梨奈ちゃん、覚えている?

彼女、日本に残りたいといってきかないのよ。しょうがないから、うちで預かることになったわけ」


「友梨奈か。何歳になったんだ?」


「15歳よ。早いわね。聖ルチア女学館の一年生になったわ。あら、サトシの受け持ちの子たちと同い年ね」


「もうそんなに大きくなったのか。小さい頃の記憶しかないなぁ」


「話はまだ続くのよ。サトシの話を教えたら、『じゃあ、サーちゃんに勉強を教えてもらうわ』ってね。日本に残るついでにサトシに会いたいみたいよ」


「聖ルチア女学館なら、レイコ姉さんの母校じゃん。俺よりレイコ姉さんが適役じゃないか。俺なんかに勉強を教わらなくたっても大丈夫だろ?」


「勉強はこじつけよ、きっと。わたしが思うに、サトシに会いたいんじゃないかしら」


「レイコ姉さんから断ってくれ。学校の業務だけで手いっぱいなんだ。俺に他で教える余力はない」


「あらそう、残念ね」


「レイコ姉さんが教えればいいじゃないか。レイコ姉さんは聖ルチア女学館の卒業生だろ、

母校の後輩に勉強を教えるなんて、いい話じゃないか」


「おほほほほ、わたしはお勉強ができませんでしたのよ。いかに、授業をうまくエスケープするか、私物検査で引っかからないようにどこに物を隠すか、そういうことなら教えられるけど」


「まるで、俺の受け持ちの生徒みたいだ。それでよく聖ルチアを卒業できたな」


姉の学生時代の話を聞いて、白金女子学園一年A組の生徒たちと似ていると思った。


(なるほど、桜井たちと気が合うわけだ)


挿絵(By みてみん)


サトシは、姉が持ってきたひまわりの花を見て、桜井美柑の笑った顔を思い出していた。


(あれ? なんでまた桜井の顔が浮かぶんだ。バカな)


ひまわりの花を見て、そして作ってくれた夕飯を思い出した。


(ああ、桜井の作ったご飯がたべたいな。食欲はないけど、あれなら食べられそうなのに……

あれ、また桜井のことを思い出している。ダメだ、ダメだ、ひとりの生徒だけを特別扱いしてはいけない。俺は一年A組の担任なんだぞ)


サトシは、ベッドで横になりながら、あの日桜井の家で食べた『西京味噌でトマトサラダ』を思い出していた。


「もう一度食いたい……」


「何か食べたいの? サトシ」


「いや、別に」


「食べたい物があったら買ってくるわよ。遠慮しないで言って」


姉の声など聞こえていない。

サトシは、桜井の家でトマトサラダを自慢げに話していたアキラを思い出していた。


「ふっ、最強の味噌でトマトサラダか」


「え? 何」


「あ、何でもない」


桜井の家で過ごした温かい記憶が、サトシを優しく癒していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ