第104話 女生徒SIDE:星占い性格診断
桜井は美容院で女性週刊誌の星占いのページを読んでいた。
“桜井美柑、うお座今日の運勢=これまでの努力や誠実さが周囲に認められ、思いがけない評価を得られる”
美容院のおしゃれな男性美容師は、できあがったヘアースタイルを鏡で見ながらにこやかに声をかけた。
「はい、とってもいい仕上がりよ」
桜井は鏡に映った自分を見て、めまいがした。
(げっ! 違う。思っていたのと違う。何、この前髪ぱっつんは……)
「お似合いよー。あなた一重瞼だから、目元を見せる前髪のほうがいいわよ。一重をコンプレックスに思っているとどうしても前髪で隠したくなっちゃうけど、基本的にはすっきりと、眉ラインで切りそろえるスタイルがおすすめよん」
(こ、これじゃ、食品用ラップのCMに出て来る女の子じゃないのーっ)
「きれいな前髪を保つために、当店おすすめのシャンプーを使ってね。オーガニック素材の当店オリジナル・ヘアケア・セットよ」
“桜井美柑、うお座今日の金運=自分の健康や心を癒やすためにお金を使うと、金運が高まりそう”
「わあ、嬉しい。お兄さんにカットしてもらってよかったー」
“桜井美柑、うお座=自分の意見があっても、瞬時に空気を読み、その場の雰囲気を最も良くする言動を選択する”
「ありがとうございましたー。またのご来店をお待ちしておりまーす」
(フン、二度目はねえよ!)
桜井は、ショートボブとは言ったが、ここまでショートにされるとは思っていなかった。
「うぅ……、週刊誌なんか読んでいないで、しっかり途中経過をチェックしとけばよかった」
半べそになりながら、家に帰ってくるとショックで倒れそうになった。
“桜井美柑、うお座=とても繊細なぶん、一度落ち込むと、とことん落ち込む。
「美柑、腹減ったー。飯は―?」
「アキラ、ごめん。お姉ちゃん、ちょっと寝るわ」
「げっ! またかよー。最近よく落ち込むなぁ。大丈夫かよ、美柑。しょうがねーなぁ」
(アキラはかに座だっけ。確か、家族を大切にするって書いてあったわ。ああ、なんていい子なの)
その夜、サトシからLINEがきた。
サトシからLINEがくることは少ないのは、愛が足りないからではなく、単純に不器用だからだ。
“サトシ先生、蠍座=不器用で、メールもやや苦手。仕事人間な一面もあるため、仕事で忙しい時はLINEの頻度がグッと減る可能性が高い”
:遅れてごめん。誕生日おめでとう! 祝・16歳!
:は? 全然、めでたくない。
:なんか……、怒ってる?
:今日、美容院でカット失敗した。もう最悪!
:髪を切ったんだ。どれくらい切ったの?
:必要以上にたくさん切られた。グスン
:そうなのか。どれくらい切られたのか見に行こうか?
:ダメ、もう誰にも会いたくない。学校にも行かない!
:それは、困ったなぁ。せっかくプレゼントを用意したのになぁ。じゃあ、プレゼントは学校の下駄箱に入れておく。だから、明日はちゃんと学校に来なさいよ。
:グスン
“桜井美柑、うお座今日の恋愛運=意見の食い違いがあったなら、一旦距離を置いて冷静になって。相手の意図を理解しようと努めよう”
一時間後に桜井はサトシにLINEスタンプを送った。
:スタンプ(ごめんちゃい)
翌朝、学校に登校してきた桜井の肩を、後ろからバンと叩いて桃瀬が挨拶してきた。
「おっはよー、美柑。あれ? 髪、切ったぁ? 一体どうしたのよ。何があったの?」
“桃瀬春奈、ふたご座=好奇心旺盛でフットワークが軽く、面白そうと思ったらすぐに飛び込んでいく”
「おはよう、ハルちゃん。髪、切り過ぎちゃったよーーー」
「おっはよう、美柑。あれ? なんだか可愛いくなった?」
“柚木カオル、おとめ座=細かい観察や分析が大の得意”
「うっそー、柚木くんったら、そんなことないわ。大失敗よ」
「ええ? なんでー? 美柑ってさ、スタイルいいからあの人に似てるよね」
桃瀬も柚木に同調した。
「柚木くんの言いたいこと、わかる。あの人でしょ、あの人」
「え、ええー? 何よハルちゃんまで。からかうのやめてくれる?」
「何て言ったっけ、あの人……」
桃瀬と柚木が似ている芸能人を思い出そうと悩んでいる間に、桜井は下駄箱の中をチェックした。
すると、そこにはサトシが言った通り、プレゼントの箱があった。
桃瀬たちに見つからないように、桜井は素早くプレゼントをかばんに入れた。
「あああっ!」
桃瀬の声で、桜井はびくっとし、見つかったかとビビった。
「思い出した! 木村○○○!」
「そう、そう、彼女よ! 似てるよねー」
「あら、そぅお? ホホホホ」
「何よ、突然機嫌がよくなったわね、美柑。気持わるっ」
「そんなことございませーん。早く教室に行きましょー」
“桜井美柑、うお座=軽い落ち込みはほかの星座より多いが、場合によって立ち直りが早いことも。うお座は「お天気ひとつで気分が変わる」ともいわれる”
「なんだか、今日の美柑、おかしくない?」
「わたしも、そう思う。柚木くん鋭い考察だわ」
「ほらほら、あんた達。おしゃべりしてないで、教室に入って!」
「うるさっ、夏梅」
“夏梅京子、しし座=仲間内でも率先して行動を起こすリーダー的な存在”
夏梅は、桜井の横に足早に近づいて、小声で忠告した。
「桜井さん、今日、抜き打ちの荷物検査あるわよ。あとで、そのかばんに入れた物は下駄箱に戻しておいた方が安全よ」
「え? 夏梅。見てたの? どうして、抜き打ち検査のことを教えてくれるの?」
「昨日のオレンジタルトのお礼よ」
“夏梅京子、しし座=見た目よりも、感情が傷つきやすいナイーブな一面も。獅子座女子は優しさを通り越して、真っ直ぐすぎるくらい親切で忠実”
「夏梅、ありがとうー。夏梅っていい人だねー」
「いいから。早く戻しなさいよ。わかったらさっさと行って。面倒ごとは起こさないでね」
桜井は夏梅の言葉に感謝した。
“桜井美柑、うお座今日の運勢=ずっと願ってきたこと夢見てきたこと、その縁が結ばれるといった出来事が起こるかもしれません”
(サトシ先生との縁が結ばれる……なんちゃってー)
桜井は赤面しながら、再び下駄箱へと急いだ。




