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サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない  作者: 白神ブナ
第三章 一年三学期

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第101話 ガチめのチョコレート②

 インターホンが鳴ったので、サトシが玄関を開けると、大山先生と古松川先生が立っていた。


「大山先生、古松川先生まで。どうしたんですか?」


「サトシ先生、仕事が終わったのに申し訳ない」


大山先生が、困った顔していた。


「学校で何か問題でも起きましたか?」


「いや、問題はない。ただ、古松川先生がサトシ先生に謝りたいと言いだして。サトシ先生の家を知らないから連れて行って欲しいなんて頼まれましてね」


「謝る? なんだかわかりませんが、明日学校でお話を……じゃ、ダメなんですか?」


「それが……」


大山先生は、後ろに隠れるように立っていた古松川先生を前に押し出した。

古松川先生は冷や汗を流しながら、顔面蒼白だ。


「サトシ先生、大変申し訳ありません。わたしのせいで先生に大変な迷惑をかけてしまいました」


「古松川先生、気分がすぐれないようですけど、大丈夫ですか?」


古松川先生は、今朝机の上に置いてあった、ガチめのチョコレートを差し出した。


「サトシ先生が帰ってから、ラッピングを解いてみたんです。中のメッセージカードには、サトシ先生へと書かれていました」


「へぇ、そうだったんですか。誰からだったんだろう」


「その……、桜井美柑よりって書いてありました」


「ええええ! そうなんですか。よかったー、桜井はちゃんと準備してくれてたんですね」


「サトシ先生、怒らないでくださいよ」


「怒りませんよ。教えてくれて嬉しいです。よかったー。俺はてっきり嫌われたものと……」


「それが、一個食べちゃってからメッセージカードに気が付いたんです」


「え? 何て」


「そのぅ、一個だけ口の中に入れてメッセージカードを読んで間違いに気が付きましてね。それで、口の中のチョコをそっと箱に戻そうとしましたが……」


「それは、俺が止めました」


「大山先生。止めてくれてよかったです」


「サトシ先生、申し訳ございませんでしたっ!」


「いえいえ、正直に言ってくれてありがとうございます。別に気にしなくていいですから」


「いいえ、サトシ先生と桜井の間に亀裂が入ったら、わたしのせいです。桜井にも謝らないとわたしの気が済みません」


「桜井には、明日学校で……」


「それはダメです! そんなことは許されません。お願いです! サトシ先生。桜井を呼び出してくれませんか? いや、呼び出すなんて上から目線だ。謝罪するなら、こちらから出向くべきですよね。桜井の家を教えてください。そして、一緒に桜井の家に行ってもらえませんか?」


サトシは悩んだ。


(いいおじさんが三人、あのアパートに行ったら桜井も迷惑だろうし、アキラくんが恐がるだろう。かと言って、どこか外で待ち合わせしたら、桜井はおじさんたちに補導された女子高生に見えて、周囲から注目の的になるし……)


ここは、サトシの家に呼ぶのが一番いいと判断した。


(桜井は、俺の家には行くなと教頭に言われているらしいが、他に教師が二人もいるんだから問題ないだろ)


「古松川先生、落ち着いてください。ここに桜井を呼びます。でも、もし、怒ってここに来なかったら……」


「えええーーー! 桜井は怒っているんですかぁ。もう、だめだ。わたしの教師人生は終わった」


「違います。怒っているのは別件です。それに、こんなことで教師人生は終わりませんよ。とにかく、連絡してみましょう。それでダメだったら、次の手を考えましょう」


「サトシ先生……本当に、申し訳ない」




 サトシは桜井にLINEした。


:古松川先生が、君に謝りたいと言って家に来ているんだが、来れますか?


すぐに既読されたが、返信はない。

完全に既読スルーされた。


「だ、大丈夫です。直接、電話しましょう」


サトシは動揺を隠せず、震えながら桜井に電話をした。


(頼む。出てくれ)


10回目のコールで、桜井が出た。


―「はい、もしもし。誰か危篤ですか?」


「桜井、忙しいところ申し訳ない。古松川先生が、君に謝りたいと言って、大山先生と一緒にうちに来ているんだが」


―「大山先生までいらっしゃるんですか? わたし、学校で何か問題でも?」


「怒らないで聞いて欲しい」


―「はぁ? 怒ってませんよ。全然怒ってません」


(嘘だ。これ、絶対怒っているやつ)


―「ところで、先生。チョコレート、いくつ貰ったんですか? ハウメニー・チャーコレト・ディデュー・ゲッ?」


「グド・イングリッシュ。えっと、その件もこっちで話したいんだけど……アイ・トークユー・レーラ」


―「ハウメニー・ディデュー・ゲッ?! 答えになっていませんね」


「だから、それは……、俺の家に着いてからだな」


―「もうすぐ、付きますけど?」


「え」


―「今、向かってます。もうすぐ着くから、答えを用意して待っていてください」


「はい、首洗って待ってます」




 サトシは恐怖に震えながら電話を切ると、大山先生と古松川先生を家の中へ入るように促した。


「玄関前で、修羅場になったら近所迷惑ですから、中へ入ってください」


「え、サトシ先生。修羅場ってどういうことですか」


「詳しく説明している暇はありません。早く入って! 桜井はすぐそこまで来ています」


「ええええ! どうしよう大山先生」


「何を今さら慌ててるんですか。古松川先生が桜井に直接謝りたいって言ったんでしょうが?」


「すみません、汚い部屋ですが、とにかく座って、座って」


先生たちは、息を殺して桜井の到着を待った。




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