腹黒な王様と一緒にスカッとしました。
私の大切なリリを貶されて、ついムカッときてやってしまった…
どうせならついでにあのデブッチョ神官をロロにガブッと殺ってもらえばよかった。
そうしたら、こんな事になっても少しは気が晴れただろうと思う。
「しまった。いまさらおそいかな?」
「ネリ?さっきから何を言ってるんだ?お父さんに話してごらん?怒らないから。」
王城の無駄に長くて広すぎて寒ざむしい廊下を歩きながら、抱いてくれている父が私の顔を覗きこむように尋ねた。
「うぅ。ごめんなさいとうさま。わたし、しっぱいした。あのデブッチョ神官さんをあのときやっておけばよかった!っておもって。」
「ガハハ!確かに、それは私も思った!4人なら私とラフィとでも片付いたんだがな。しかしまぁ、いずれはこうなるだろうと思う。大丈夫だ何とかする。」
なんか父もリリとロロと同じ事言ってるけど?大丈夫かな?
なんて思いながら母を見ると、母がふふっと笑いながら、父と同じように何とかする!って笑った。
う~ん。
本当に?大丈夫なのか…不安だ。
そうしてひたすらに歩いて、やっと謁見室とやらの扉の前に立つ。
大きな重そうな木材をキレイに彫刻したって感じの扉で、観音開きなのだろう。
両側にピシッとした騎士服を着たガッチリお兄さんが立っていて、室内からの声にゆっくりと扉を開けてくれた。
完全に扉が開ききってから父が歩き始め、母も続く。
謁見室にはすでにあのデブッチョ神官達がいて、さらに知らない人がずらっと並んでいた。
これも異世界ならではの光景だよなぁなんてちょっと現実逃避してみたりして……。
しかし、両親にはあまり違和感のない光景なのか?まったく気にすることなくどんどん進んでいく。
周りからは辺境伯がどったら、とか。
何しにきた?とか不快な声がする。
ちょっとムカッとくるが、さすがに自重した。
うん、偉いぞ私。
で、さらし者になりながらも両親がピタリと歩みを止めて、跪いたため、私も一緒に頭をさげておく。
まだ3才に成り立てなので、マナーは習ってない。
ついつい日本人的になってしまう。
「久しいな、リスナス辺境伯。祝いの日に、わざわざ登城させてしまって悪いな。顔をあげてくれ。」
予想よりも低い声がした。
若い王様だと聞いていたけど、父とあまり変わらない気がする。
「謁見の御許しだけでなく、過分な御言葉を頂き、感謝申し上げます。本日は神殿にての貴族名簿に、我が家の末娘を登録させていただきましたが、何か手違いがあったようで、娘はいまだに祝福を戴けておりません。で?何用で我々は陛下の御前に引き据えられておるのでしょうか?」
あ~ぁこれは、相当怒ってるよなぁ~とうさま。
こっそり父の腕越しに王様を見ると、ニャッと私に笑いかけてきた。
えっ?
なんかこの王様、腹黒そうだなぁ。
絶対お腹ん中真っ黒っぽい笑い方だわ~って、父まで同じ顔してない?
うわぁ怖い。
「ほぉ?神殿に祝福を受けにいったのに授かってないと?神官長どういう事だ?突然大変な事になったからと執務を放り出してまで謁見しているのだが?祝福できない程大変な事とは何だ?答えろ!!」
いきなりお怒りモード発令?
さぁどうするデブッチョ神官さん!?
『主、なんか楽しくなってるな?』
ぼそっとロロが呟いたが、気にしない。
「はっ、あぅ、いや、そのですなぁ。大変なんですぞ!陛下!この辺境伯のお嬢さんが100年振りに精霊と契約を交わしたんです!それも2人です!前代未聞です!重大案件ですぞ!!」
デブッチョでハゲッチョな神官さんが大興奮で喚く声がうるさくて、ちょっと気分が悪い。
と言うよりムカッとくる。
精霊と契約しちゃいかんのか?
2人いたら悪いのか?
本当にムカッとくるが、まだ我慢。
「ほぅ?それは瑞兆!何が悪い?」
おっ?腹黒だけどいい人なのかな?王様。
「えぇ瑞兆です!ですから是非ともこの娘を我らの神殿に管理させていただきたい!!」
はぁ?管理ってなに?
何言ってんの?このデブッチョのハゲッチョめ!!
ムカついて思わずリリとロロを呼び出そうとした私より先に、リリとロロが影から飛び出してくる。
「ほら!ご覧ください陛下!あれが精霊ですぞ!」
デブッチョのハゲッチョ神官が偉そうに私のリリとロロを指さしてあれとか言う。
「リスナス辺境伯。本当か?」
王様に問われた父は苦笑いで私を見る。
これは自分で説明しろってことかな?
いいんだよね?
「こんにちわ。はじめてお会いします。リスナスへんきょうはくのじじょ、ライネリアともうします。デブッチョ神官さんが私のリリとロロをけなしたので、ちょっとムカッときて、リリもロロもおこってますけど、ふたりはわたしの守護精霊です。契約したときは妖精でしたが、わたしと契約して精霊になったって、いってました。
それから神殿でかんりとか、ふざけるな!!です。おしまい。」
長々としゃべるのは、やっぱり3才児には難しい。
ちょっとゼーゼーしてしまう。
かあさまが背中を撫でてくれて、とうさまが懐から水筒みたいなのを出してくれて、水を飲ませてもらう。
「ハハハ!さすがハイネンの娘だな!良く言った!!それにしても妖精ふたりと契約し、さらに精霊に進化とは素晴らしい。やはり血は争えんな、おば上殿の血筋はちゃんと引き継がれたようだ。安心したぞ。」
「私もです。まさか末娘のライネリアが母上の力を継ぐとは思いませんでした。」
ん?おばあさま?血筋?力?なに?
分からない時は引出し!
私は咄嗟に頭のなかで引出しを開けてリスナス辺境伯家の家系図を引っ張り出す。
ふむふむ。
あっ!
おばあさまは国王陛下のお父さんの妹だったのかぁ。
ん?じゃぁ父は王様の従兄弟?
「神官長。100年前に精霊と契約したのが誰か覚えているか?」
「勿論です。前国王陛下の末の妹であられたフィーリア王女殿下であります。」
うん、おばあさまだね。
ちなみにご健在で辺境伯邸から少し離れた別邸でおじいさまのオルハルドさんと仲良く暮らしてます。
たまにしか会わないから守護精霊の話はまだしてなかったわ。
「では、ここにいるライネリアが誰の子なのかわかるか?」
「はあ?彼女はリスナス辺境伯の娘でしょう?」
デブッチョでハゲッチョな上に頭も悪いのか?この神官。
「ライネリア。教えてやってくれるか?」
王様がかなり楽しそうに言ってくるので、私もノリノリで種明かしをしてあげる。
「わたしのとうさまはリスナス辺境伯のハイネン。かあさまはラフィーネ。おとうさまのおとうさまはオルハルド、おとうさまのおかあさまがフィーリア。おかあさまのおとうさまはジャスティン、おかあさまのおかあさまがフィルネともうします。」
ちなみに。
オルハルドは元国家騎士団隊長で英雄と呼ばれた白狼の獣人。
フィーリアは元第4王女で今まではこの国唯一の精霊と契約したピューマの獣人
ジャスティンは元宰相で黒豹の獣人
フィルネは王女の護衛をしていた女騎士の犬獣人です。
「どうだ、理解できたか?神官長。ライネリアは我が国唯一の守護精霊もちのフィーリア王女の孫だ。精霊が守護することに何の問題があると?それに彼女は王族のひとりでもある。で、管理とやらがしたいそうだが?どう管理できると?お前達ごときに精霊が御せると本気で言っているのか?言っておくが、国王である私でも無理だな。」
その言葉を最後に謁見の時間は終了となりました。
ざまぁみろ!
デブッチョのハゲッチョの頭悪い神官め!
読んでいただけて
ありがとうございました。