神殿でひと悶着。だってムカついたんだもん
どっから見ても西洋の教会風なのに神殿。
やっぱり違和感。
これが異世界。
外観もだけど内装も本当に教会風で笑えてしまう。
地球の記憶のせいなんだけど、まぁ、子どもってことで許して。
さて、神殿に入って数分。
戸籍っぽいのに登録するのと神官の祝福を受けるとかをするために待たされてます。
父はちょっとイライラ。
母はそんな父を宥めつつ、私に簡単な説明をしてくれました。
登録にはほんのちょっとだけ血液が必要で、父が指先にチョンと針を刺すから我慢すること。
契約した妖精を見せなくちゃいけないけど、二人とも見せるのは止めた方が良いから、リリかロロのどちらかにしなさいって話だった。
今二人は私の影に潜っていて呼ばないと出てこないから、どちらかだけを呼ぶように言われたんだけと、うぅ~どっちがいい?
二人にこっそり聞いてみたら、リリにしてと言われたからそうすることにした。
しばらく待たされて父のイライラが更に酷くなりそうなタイミングで、やっと呼ばれる。
私は両親と一緒に祭壇らしき物が設置された部屋へ通された。
祭壇の中央には丸い水晶のような物が飾られ、両側には綺麗な花が白い花瓶にいけてある。
特別に変わった部屋ではなかった。
祭壇前にはこれまた白い神官服を着た太めのおっさんが3人立っていて、私たちを案内してきた若い神官が最後に入って扉を閉め、魔法を発動させた。
咄嗟に身構えたが、魔法は簡単な結界と防音のようだ。
ほっとしてしがみついていた父の腕から手を離した。
「ようこそいらっしゃいました。リスナス辺境伯様、この度はお嬢様が3才なられたとの事。お祝い申し上げます。ではまずは貴族名簿にお名前と登録の為の血液を一滴お願いいたします。そののちに契約妖精を見せていただき祝福をお授けいたします。」
「わかった。ライネリア、すぐに済むから少し我慢しなさい。」
父はそう言って私を一端母に渡すと、羊皮紙のようなものにガラスペンみたいなので私の名前を書いていく。
私の正式名称は『ライネリア・フィルネ・リスナス』だった。
フィルネは母の生家の祖母の名前からもらったみたい。
そして父が私の小さな手を優しく掴んで、親指の先に神官から手渡された目打ちみたいな物をぷすっと刺した。
痛い!
血はちょっとしか要らないはずなのに、その目打ち太過ぎない?
泣きそうになりながらも頑張って我慢した私偉い!
父はぷっくりと出た血の玉を羊皮紙の私の名前に吸い込ませたのだが、次の瞬間羊皮紙がパーッと白く光って驚かされた。
「これで貴族名簿には無事にライネリア様が登録されました。」
神官の言葉を聞くとすぐに父が治癒魔法をかけてくれて、指先のさし傷はすぐに癒えて消えてしまう。
「よしよし、泣かずによく頑張ったな。」
父が大きな手で頭を撫でてくれたが、おかげで三つ編みがぐちゃぐちゃである。
「ではライネリア様。妖精を呼び出してください。」
神官の言葉に私はちらりと両親を見る。母が床におろしてくれたので、一歩前に出て小さくリリを呼ぶ。
バタバタっと影から青い鳥が現れて私の肩にとまる。
オウムとは言え3才児と比べると大きく見える。
もちろん全く重さは感じないのだが。
「なるほど、なるほど。青いオウムですか?珍しい色ですなぁ。」
でっぷりと太めな神官さんがリリを評するような発言をした。
私的にはリリは世界一綺麗なオウムだし、可愛くて強い自慢の精霊である。
妖精ではなく精霊なんだけど、神官さんにはわからないのかな?
まぁ、いいんだけど。
リリ怒らないでね?
『大丈夫。珍しい色ってのを誉め言葉だと思っておくよ。』
リリは私にだけそう言って、羽根を広げてみせた。
リリの羽根はオウムの身体のわりに大きくて立派だし、私を足で掴んで飛ぶこともできたりするくらいに強い。
本当に良くできた守護精霊なのである。
「ほぅ。素晴らしい!なかなか美しい鳥ですなぁ~辺境でしか見られない妖精なのでしょうなぁ。王都近辺では四つ足の妖精が多いので、珍しいものを見せていただきました。」
なんか、コイツ。
辺境をバカにしてないか?
と言うか私のリリをバカにしてるよね?
ちょっとムカッときた。
『主。落ち着け、気にするな。』
わかってる。
でもなんかやだ。
「ロロきて。」
私に呼ばれて足元から真っ黒なドーベルマンぽいロロが現れる。
ロロは私を庇うように前に出て神官達を睨んだ。
『主。コイツらどうする?』
ロロの言葉は聞こえてないはずだが、両親がちょっと焦ったように私を呼ぶので、振り向いて笑っておく。
「リリとロロです。私の守護精霊です。」
「なっ、何ですと?妖精がふたり?」
「いえ、神官長さま!そこもですが、彼女は精霊と言いましたよ!!この国で精霊と契約したのは100年前の王女殿下以来です!これは神の奇跡!!すぐに国王に報告を!」
「あ……ごめん。やらかしたかも。」
私は深く反省したがどうにもならず。
両親と一緒に王城に連行されたのだった。
本当にやらかした。
しまった。
母が危惧したのはこう言う事だったんだよなぁ。
『心配するな。いざとなれば我らが何とかする。』
『そうだよ~大丈夫♪ぼくら強いから。』
いやぁ~余計心配なんだけど?
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