お淑やかはなかなか難しい
あぁ、う~ん。
なんだろうこの状況?
わたしは今、かあさまの友人だと言うアンナマリア・パリス伯爵夫人のお屋敷のサロンで、小さな紳士たちに取り囲まれて、お茶をいただいていたりする。
彼らはパリス伯爵の子息とそのご学友だそうで、本来はねえさまと引き合せる予定であったらしいの。
なるほど、そう言う意味で代わりが必要だったのね。
私の後方では侍従のバロックが貼り付けたような笑顔で腕を組んで立ってるんだけど、なんか目が怖いって言うか、あきらかにご機嫌が悪い。
で、どうしたらいいの?わたし……。
「ライネリア嬢はもうすぐ6歳になられるとか?婚約者は決まっていらっしゃるのかな?良かったら僕なんかおすすめしちゃいますよ?」
私よりちょっと年上っぽい男の子が得意げに焦げ茶の髪をかきあげながら胸を張る。
同じ色の三角耳の先にはふわっとした白の飾り毛が揺れている。
「おそらくはボブキャット。
辺境伯領の北端の男爵家の次男だったかと?」
ボソッとバロックから説明がきた。
うわぁ~北端からここまで来るだけでも1日がかりだよね?なんか必死だな……。
思ったことがつい顔に出てしまったのか、彼らがちょっと苦笑いしている。
「ここは辺境の地ですから、馬車移動もわりと命がけ。なので僕らはこちらの伯爵邸で以前からお世話になっております。」
「え?そうなのですか、知らなかったです。それはまたなぜ?」
今ここに集まっているだけでも10人近い子息達がいるのだが?
「説明はわたくしから。」
そう言ってすっと現れたのは、最初に紹介された伯爵家のご令嬢アナスタシア嬢。
メンフクロウ獣人のアナスタシア嬢の背中には綺麗な白い翼が折りたたまれていた。
思わず翼に目がいっていまう私をバロックが突ついてくるので、あわてて視線をアナスタシア嬢の首元まで戻す。
「ふふふ。ハルフィーナの言う通り、本当に可愛いわぁ♪あの子が熱を出したのは残念だけどライネリア嬢にまた会えたのは嬉しいわね。お披露目にもご招待いただけてありがとうごさいました。」
フィーナねえさまのお友達でもあるアナスタシア嬢はとても明るくて朗らかな女の子みたい。
彼女の説明によると、辺境伯家に近いこの伯爵邸は昔から辺境伯領の貴族子息たちの合宿施設のような役割があり、見習騎士になる為の養成所的な感じで集まっている子息たちが勉強や鍛錬を受けているのだという。
もちろん辺境伯であるとうさまから依頼と支援を受けており、にいさまたちも頻繁に様子を見に来ているみたい。
「そうだったんですね、わたし本当に知りませんでした。もっと学ばなくてはいけませんね。見習さんたちとは一緒に鍛錬したこともあるのに……。」
「「え~!」」
「あらまぁ、それは本当ですか?ハルフィーナからも聞いてなかったわ?」
「はい。1度だけですけどちょっと変装して仲間に入れてもらいました。さすがについていくのは大変でしたけど、手合わせは楽しかったです。」
「まぁ!鍛錬はまだ始めたばかりだとハルフィーナから聞いていたのだけれど、小さくても辺境伯令嬢ですもの流石ですわね♪良く頑張っているのね。偉いわ~」
アナスタシア嬢はそう言ってわたしの頭を優しく撫でてくれる。
なんだかフィーナねえさまみたいで嬉しくなる。
フィーナねえさまも一緒だったら良かったなぁ~。
「ふふふ。ハルフィーナが羨ましいわ。こんな可愛い妹なら自慢したくなるのも仕方ないわね。わたくしも弟より妹が欲しかったわ。」
「え!それはひどいです!!僕と言う可愛い弟がいるじゃないですか!」
そう言ってアナスタシア嬢によく似た容姿の小さな男の子が拗ねたように口を尖らせて走り寄ってきた。
アナスタシア嬢の背中にぴとりとひっつくと、私をにらむように見上げてくる。
あらあらと苦笑したアナスタシア嬢に来てはダメと言ったでしょう?とちょっと怒られて涙目なところがすごく可愛い。
「こちらの方は?」
「ふふふ、まだ5歳にならないからお披露目前なんだけれど、わたくしの一番下の弟なのよ。ごめんなさいね、またお披露目の折にはきちんと紹介させていただくわね。」
そう言ってアナスタシア嬢は弟さんを連れてサロンを出て行ってしまった。
そして私はまた冒頭のように子息たちに取り囲まれてしまったのだが、話題が見習い騎士さんたちの鍛錬の話になり、それなりに楽しく過ごしてしまったのだけれど、大人たちの思惑とは別の形で仲良くなれたみたいで良かったと思うしかないのかな?
バロック的にはホッとしたらしいです。
ここで婚約者が!?なんて事になってたら相手を殺ってたかも?なんて帰宅してからボソッと言うから本当にびっくりしちゃいました。
婚約者?結婚?私にはまだまだ未知の世界だわ(苦笑)
なんにせよ、私に淑女はまだ難しい。
もっと勉強しなければ!
そう実感したお茶会でした。
かあさまは何事も経験。
これからも行くわよ!!って、妙にやる気なんだよなぁ~ご婦人方に私が可愛いって言ってもらえてすごく嬉しかったんだって。
お披露目を無事に終えたから、これからはこんな日も増えるのかなぁ?
次はフィーナねえさまと一緒がいいな。
フィーナねえさまが元気になったらいっぱい話を聞いてもらわなくちゃね♪
読んでいただけて
ありがとうございます。




