練習がひつようらしい?
辺境伯領に戻って10日ほど、わたしはのんびりな日々をリリとロロとバロックと一緒に過ごしてきた。
その間にもとうさまやにいさま達は領地の民を守るために頻繁に出掛けていくし、かあさまもねえさまも何かと忙しそうで、そうなれば自然と役に立たない3歳時は放置されるわけである。
別にそれを不満に思う程、中身は子どもではないので、私的には気にしていなかったし、連れてきたばかりのバロックがこの屋敷や私との生活に馴染むのにはちょうど良い時間だったのでは?とも思う。
けれど、わたしの家族にとってはそうでは無かったようで……。
「ネリ!そろそろ獣化の練習をしないか?」
ある日の夕食の席で、とうさまがわたしにそう問いかけた。
「獣化?」
「うむ。ネリは賢いし可愛い、努力家で本当に可愛いんだが…。まだ獣化だけはできないだろう?ハインツもライオルもフィーナもネリの歳までには獣化を習得していた。もちろんネリの獣化が遅いことは悪いことではないんだ。」
「はい。でも、できた方がいいんですよね?」
「そうね。いざと言うときの為にも、獣化は習得してほしいわ。だからと言って出来なくても心配しなくて良いのよ?この国にもうちの領地にも獣化の出来ない獣人はそれなりに居るの。原因は分からないけれど神のお決めになられたことなら仕方がないとみんな納得しているし。」
「だからな、ネリが出来なくてもそれで良い。だがやってみないことには分からないからな?明日からちょっとだけでも練習してみないか?」
「ネリの練習には僕とフィーナが指導役に立候補してるんだけど、まだやりたくないかな?」
ライオルにいさまが心配そうに隣の席からわたしを見つめてくる。
ハインツにいさまもフィーナねえさまからも気遣うような視線を感じて、私はちょっと悩む。
正直、獣化の必要性を感じなくて今まではやりたいとも思ってなかったから。
中身がふつうの人間だからか、今一つ獣人と言うものがよく解ってないし、リリとロロが常にそばに居るから、もふもふに飢えてないんだよなぁ~自分がもふもふになるってのもちょっと想像できないし…。
とは言え自分にも真っ白なふわふわな耳や猫みたいなしっぽが有ることはわかっている。
「う~ん、できるかわかんない。でもネリもやってみる!」
私がそう答えると、家族がみんなほっとして、夕食はまた和やかな時間に戻った。
その後、部屋で寝る前の準備をかあさまに手伝ってもらったわたしは、かあさまに思い切って獣人についての疑問を聞いてみた。
「ねぇかあさま。獣人ってなに?」
「あらまぁ…難しい問題ね♪獣人は神さまが世界を造り出した時に産まれた動物たちを、進化させ知能を与えた特別な生き物だと神殿の書物にはあるらしいけれど、それほど特別なことはないと思うわ。だって動物にもちゃんと知能はあるんだし。獣人は人であり獣でもある。そう言うものってだけよ。獣化することを嫌だと感じる獣人もいるし、獣であることを気に入って過ごす獣人もいるわ。だからネリの好きにして良いの。」
「ほんとに?」
「えぇ。ただ、できたら便利ってだけよ。先日の王都での誘拐事件もネリが獣化できていたら、もっと早く逃げ出せたかも知れないでしょう?二本足で走るより四本足の獣姿の方が早く走れるのよ?それに獣姿で丘を走りおりるのって、とっても楽しいし♪母様はネリと一緒に走ってみたいの!だめかしら?」
「うん。わたしもやりたい!」
その夜の夢は、草原を走り回るロロを人間の私が追いかけると言うもので、起きたときに二本足は不利だ!と叫んだ私に、バロックは爆笑しながら、おめざのぬるめなミルクティーを差し出してくれたのだった。
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