始まりの混乱
まだ始めたばかりのお話ですが、良かったら読んでください♪
「えっ?何?どうなってるの?」
ふと気付いたら、私は虹色にぼんやりと光る球体に閉じ込められていた。
だからと言って息苦しい訳でもなくて、どちらかと言うと温かくて優しいものに包まれているような心地がする。
何でだろう?と考えようとしたその時、私のすぐ近くから声がした。
「やだ!何これ出れない!!」
「どこだよここ!何なんだ?出してくれ!」
それは私と同じかそれ以上に混乱した人々の声。
どうやら私と同じ状況の人が大勢いるみたいなのだが、自分がいる球体からは周りが何も見えない。
他の人たちも周りの様子がわからなくて混乱し、ざわついているのだろうと思えた。
『静粛に!黙りなさい!わたくしから説明します!』
突然、頭に響くように聞こえてきた凜とした中性的な声に、私もだけど周りの人々も一瞬でシーンと静かになる。
ざわめきが収まり音が消えた球体の中で、私は次の言葉を待つ。
『此処は選別の場です。あなた方はあなた方の世界で死を迎えた。今回は事故の為少々数が多いですが、これから神々による魂の選別を始めます。選別によりあなた方は次の生を生きるか、消滅するか、魂のまま眠るかを決められる事になります。魂であるあなた方は嘘も偽りも無く神々の選別により判断されるのを待つのです。』
声が一方的に断言すると、スーッとまた無音の状態になったのだけど、すぐにまた周りの人々は、騒がしく混乱した叫びのような嘆きのような言葉を上げ始める。
「カオスだ…こう言うのをカオスって言うのよね?」
私は小さく呟いたが、比較的落ち着いていていて、事故と言われた言葉に驚いて自分の記憶を辿ることにした。
先ずは名前。
私は笹山來祢
26歳の独身。
ペットショップの掃除や餌やりなんかの裏方作業をするアルバイトとお弁当屋さんの調理補助のパートをかけ持ちしながら暮らしている。
両親と2歳年上の姉の4人家族だったけど、私が中学2年の時に大きな地震があって、私の家族はみんな倒壊した自宅の下敷きになって亡くなった。
その後は親戚もなく孤立し、孤児たちで溢れた児童施設でお世話になったが、高校卒業と同時に施設を出る規則に従い小さなアパートでの一人暮らしを始めた。
アパートだけは施設長が保証人になって借りられたけど、生活費や家賃は自分で稼がなくてはいけなかったから、私は必死だった。
両親が残してくれたお金や土地は、私が成人するまでは施設が手配した後見人が管理していて、自由にはならなかった。
20歳になるまでは本当に最低限のお金を後見人から受け取りながら、必死でバイトしまくった。
生きるにはお金が必要なのだと思い知った私は、成人して残された全てを相続した後も働いた。
大切な家の跡地はすぐに売却し、残されたお金は一部をお世話になった施設に寄付した後貯蓄した。
生きる為に必要最低限のお金がどれくらいかを既に知っていたので、贅沢したいとは思わなかった。
そうして小さなアパートで慎ましく暮らしてきたのに。
どうやら私は死んだらしい。
読んでいただけてありがとうございます。
不定期投稿のためお待たせすることになるとは思いますが、頑張ります。